糸井 |
前に文章で書いたことあるんだけど、
「そっち行っちゃダメよ」って言われても、
じゃ、どこ行けばいいのかわかんないでしょう。
スイカ割りの論理なんですよ。
目隠しして棒持ってスイカを叩くときに、
「そっちじゃない」ってどれだけ数言われても、
スイカに当たらないけれど、
「近い」とか「いいよ」とか言われてると、
スイカは割れるんです。
だから、そこは大事なんだよ。
みんなが「違う」ばっかり言うから‥‥ |
日笠 |
そうそうそう。 |
糸井 |
もう違うなりに走っていっちゃえ!
とかね(笑)、
海に向かって飛んでっちゃうやつとかね、
もう人がいても殴っちゃえとかね。
だから、「そっちそっち!」と言うべきなの。
「いい線!」とかね。 |
日笠 |
うん、そう。「落ち着いて」とか
「いいよ」とかって言うと、ねえ。 |
糸井 |
そう。「悪くない」だけでもいいです。
そしたら、スイカが割れるわけだから。
それは、何だろう、当然のことですよね。 |
日笠 |
わかりますよ、すごく。
私、スイカをうまく割っていただく
お手伝いをさせていただくわけだから、
そういう意味ではやっぱり40分のなかで、
余計なこと言っちゃうと
割れないわけですから。 |
糸井 |
そうだよね。スイカ割りに来たのに、
桃でも食べましょうみたいになっちゃうよね。
でもマーコのところで観てもらった人って、
嬉しそうに帰ってくるよ。 |
日笠 |
あ、そうですか(笑)!
よかった、よかった。 |
糸井 |
で、面白いのは、
「何を観てもらったの」と訊いても、
あまり言わないこと。
本気なんだなと思った。
本気じゃなかったら、
もっとペラペラしゃべると思うんだ。
それが僕にはちょっと新鮮で、
「えー、みんな、こんなに本気なんだ」って。
で、喜んでるんだから、
いいことしてると思う(笑)。 |
|
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日笠 |
よかった。
日頃人に言えないことをカミングアウトする
場にもなってるわけですよね。
人に言えなかったとか自分の中でとか、
あとは、自分でしゃべってるうちに
やっぱり自分で聞いてることで、
「興奮してる」とか、
「あ、こういうことで自分が傷ついてる」
ってわかって、
‥‥うち、ティッシュがすごい消費量なの。
3割は泣いてるんですから。
糸井さんのまわりの人も
たぶん半分以上は泣いていると思います。 |
糸井 |
涙が出ちゃうんですか。
そりゃ気持ちいいだろうね。 |
日笠 |
うん、皆さん泣かれますよ。
泣かせ屋さん。 |
糸井 |
なんか触っちゃうんだね。
基本的に、人って自分の思ってることを
一番知らないから(笑)。 |
日笠 |
そうですよね。本当にそう。 |
糸井 |
そこがやっぱりポイントだよね。 |
日笠 |
そうね。それありますね。 |
糸井 |
いろんな思いつきとかって、
自分が思ってることを知る旅ばっかりです。
「やっぱりそうか」みたいな。 |
日笠 |
そうそう、うん、そうです。
結局三つ子の魂じゃないけど、
「あ、ずっと同じなんだ」っていう感じですよね。 |
糸井 |
やっぱり愛の問題が多いですか。 |
日笠 |
愛は95%。愛がらみが。
ついでのようにでも
愛がからんできますね、いろんな愛。 |
糸井 |
だから、二番手に聞くことも
含めて言うと愛が100%みたいな。 |
日笠 |
そうですね、大体ね。
だれもが愛の問題ではいろいろある。
でも忘れちゃうんですよね、
何話したかっていうのは。 |
糸井 |
マーコ自身が? |
日笠 |
人と話すでしょ? そうすると、
全部濃い40分が続いていくから、
例えば4時の回の人のときに
「1時だれだっけ? ああ、あの人だ」
と思っても、
「どういう話だったっけな?」
ってもう忘れてたりするんですよ。
仕事終わってもう開放しちゃうと
すべて──ほとんどすべて忘れます。 |
糸井 |
そうか‥‥。
今日、ひさしぶりに話して思ったのはね、
マーコみたいなものが生まれる時代が
あったんだなってこと。
つまり、バンドがあったとかね。
今ってバンドがあるっていう気がしないんだよね。 |
日笠 |
うん、私もそう思いますね。
ユニットはあるけどね。 |
糸井 |
うん。バンドがあったとか、それから
「どうする?」って言葉を
本気でどうするって思ってたじゃない。 |
日笠 |
うん。 |
糸井 |
「どこ行く?」っていうのも、
「どうやって生きてく?」っていうのも含めて、
「どうする?」っていう問いかけを
本当に思ったよね(笑)。 |
日笠 |
本当に「どうする?」と思ってましたよねえ。 |
糸井 |
思ってましたよね(笑)。
今は「どうする?」って、
選択肢3つのうちから選びなさい、
じゃないですか。
あのときのあの頼りない自分と
社会の関係っていうので、
自分で何か考えざるをえなくて、
うちに帰ってひとりで悩んだり
考えたりしたことがその人たちを作ってきて、
きっとマーコはマーコで、
「どうするっていうのが本当にないのよ」
っていう時代を得たんだろうね。 |
日笠 |
私は「どうしてー?」と思って
生きてきたわけですよ、
なんか子どものときから、
「どうして、どうして、神様どうしてー?」
みたいな感じがあって(笑)。 |
糸井 |
細野さんみたいに5分でマリンバ弾けちゃう人は、
そこのところはそんなに叫ばなくていいよね。 |
日笠 |
あ、全然叫んでないですね。 |
糸井 |
ねえ。マリンバ弾けない人の叫びですよね。
僕ら、でも、今はもう「どうして?」と
言えなくてなっちゃってますよね。 |
日笠 |
ああ、私も今は言いませんよ。 |
糸井 |
逆にいうと、年取ると、
そこのイヤな楽しさはもうないね。 |
日笠 |
うん。うん。 |
糸井 |
あと、きっと、年寄り独自の健康とか
病気とかっていうところで思うんだろうな。
「子どもがグレた」とか
「今日、妻が家出しました」とかね。 |
日笠 |
ああ、みんな大変。 |
糸井 |
(笑)大変。 |
日笠 |
私、だから、こんなこと言っちゃなんですけど、
私、結婚しないじゃないですか。
例えば結婚したいとかだれかと暮らし始めるとか、
親と同居するとかいろんなことがやってくると、
この仕事できなくなっちゃうと思うんですよ。 |
糸井 |
そうだろうね。そうだろうね。 |
日笠 |
だから、今は全然ないけど、
昔何度か、子どものことで相談に来た人が、
「先生はお子さんいらっしゃらないから
おわかりにならないんですわ」って。
でも、子どもがいないからわかること、
見えることもある。
結婚してないからわかること、
見えることもあるっていうのがあって、
なんか‥‥ |
糸井 |
よくわかってるがゆえに
答えを出せなくなっちゃうっていうこと、
ものすごく多いから。
方向がわかんなくなりますからね。
「いっぺんに100解決しろ」しかも
「向こうに歩いていけ」って言われても。
ひとつ解決したところで
そのあとの99について悩みになりますからね。 |
日笠 |
そうなんですよねえ。
私、まったく今日だれが来るかって
見ないようにしてるんですね。
事務所からもギリギリまで
スケジュールを送ってこないでくれって
言っていて。見てしまうと、
「ああ、あの人だ」とかって思うと──。
まったく何もわかんなくて
初めて会った人のことが、
わかるという意味では一番わかるんですよ。
身内だったり何度も会ってたり、
人となりとか背景とか知ってると、
少し“考える脳”が入っちゃうから、
わかんなくなっちゃうんです。
何もデータがなくて何もわかんない素の状態で
「はじめまして」で見ると、
へぇーってすごくわかる。 |
糸井 |
率直に面と向かうっていうのは
やっぱり簡単なことじゃないからね。
そこは難しいですよね。 |
日笠 |
知れば知るほどわからなくなりますね。 |
糸井 |
やっぱり頭で考えちゃうんだろうね。 |
日笠 |
手相は頭通してないですからね。 |
糸井 |
頭は概ね邪魔だよね。 |
日笠 |
ものすごく邪魔ですね。 |
糸井 |
その付近まで行くっていうときに
頭はすごく使えるんだけど、
そこからは「ちょっと帰っててくれる?」
っていうとこあるよね(笑)。 |
日笠 |
そう、ありますね。本当本当。
‥‥そうそう、糸井さん、
さっき言い忘れましたけど、
人さし指の付け根のわっかを、
「ソロモンの輪」といって、
ソロモン王の伝説から来てるんだけど、
だから人間以外の
言葉を持たない動植物と
自在にコミュニケーション取れるという印。
左右ともすごいくっきりきれい。 |
糸井 |
あ、そうなの? ソロモン? |
日笠 |
私もブイヨンや猫の肉球を見て
暮らしたいなー。 |
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糸井 |
(笑)きょうはどうも、
ありがとうございました。 |
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2007-04-17-TUE |