ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

一瞬の善人、一瞬の悪人。

< 一瞬の善人 >

スーパーであれこれ買い物をし、
空いているレジを探した。

すると、ひとつのレジが空いていて、
店員さんがヒマそうにしているではないか。

私は、今がチャンスとばかりに急ぎ足で
レジに向かった。

ところが、私の前に杖をついて
ゆるゆると歩いている老人が‥‥。

すばやく老人を追い抜いて、
レジに一番乗りすることもできたが、
ふと思い直して老人の後ろをゆるりゆるり。

「足の悪い老人を追い抜いてまで、
 時間を節約する理由なんて、あるのかい?」

という、心の声が聞こえたような気がして。

あの老人のおかげで、ほんの一瞬、
私は善人になれたのかもしれない。
 
 
< 一瞬の悪人 >

いつものレストランに着いた。
午後1時を過ぎていたが、
あいにくと店は満席のようだ。

「少し、お待ちいただけますか」
私は店の前で待つことにした。

窓ガラス越しに、客が談笑しているのが見える。

「おいおい、もう食べ終えたんだろう?
 さっさとお金を払って席を空けてくれよ」

私はついつい、心の中で先客を呪った。
一瞬、私は悪人になっていたのだ。

数分後、やっと一組の客が席を立ち、
私はやれやれと席についた。

本日のランチ・メニューは私の大好物
『鶏のビネガー煮』。

鶏肉はホロリと骨から外れ、
口に入れるととろけるよう。

まろやかな酸味が爽やかな後味となり、
いくらでも食べられそう。

あぁ美味しかったと余韻に浸りつつ、
ふと見ると、
外で待っているひとりの客と目が合った。

「食べ終わったら、さっさと出なさいよ」

とでも言いたげに、
彼女は私を睨みつけているのであった。

関連コンテンツ

今日のおすすめコンテンツ

「ほぼ日刊イトイ新聞」をフォローする