ほぼ日の糸井と早野と河野が、
東京大学の特別講義に講師としてよばれました。
講義のタイトルは
「学ぶこと、盗むこと、仕入れること。」
名づけたのは糸井です。
若い学生たちの希望にあふれる視線を受けて、
3人は、人生の先輩として、
「知恵や知識、行動のいろんなやり方を
どうやって覚えてきたのか」
を話すことになりました。
20歳のほぼ日とほぼ同い年の大学生からすると、
私たちのことをくわしく知らない人も
多かったことでしょう。
それでも積極的に質問を投げかけてくれました。
今回はほぼ日をあまり知らないという方々に向けて、
〈参考〉もつけましたのであわせてどうぞ。
みじかめの文章で全10回、
どこからでもよんでいただます。
- 聴講生(男性)
-
社会人を経験しまして、
いまは情報理工学研究科の博士課程におります。
本日はありがとうございました。
あの、僕は「MOTHER」(#1)の大ファンでして。
- 原島
-
「MOTHER」の説明が必要ですかね?
どのくらい知っていますか?
- 聴講生
-
(半数以上手が挙がる)
- 原島
-
あ、かなりいますね。
そしたら大丈夫そうですね。
- 糸井
-
ありがたいですね。
- 聴講生(男性)
-
そのあとも徳川埋蔵金、
ダウンタウンさんとの釣りなど、
糸井さんの動向を夢中で追いかけていました。
僕にとって糸井さんは、
自分がおもしろいと思ったことを一生懸命されている
印象を持っていました。
ですが、今日糸井さんは
「誰かのために生きるよろこび」について話されていて。
自分のためではなくて、誰かのためという
考え方になった理由を教えていただけますか?
- 糸井
-
「誰かのため」というのが
別に立派なことではないんですが、
うーん‥‥なんでしょうね。
埋蔵金でもMOTHERでもほぼ日でも、
ものごとを考えるときには
自分を「肯定したい」という気持ちがあると思います。
「俺、ここにいてもいいんだ」って思いたいから、
調べたり考えたりして、
たどり着きたい理想に向かっていくんですよね。
ただ、綺麗ごとでもなんでもないんですが、
僕が経済行為にあまり興味がないんです。
よく公の場でも話すんですけど、
コピーライターをしていた28歳くらいから
会計士さんがずっと同じ方で。
でも、彼とは1年に15分しかしゃべらない。
本当はおまかせしちゃいたいくらいなんですけど、
いちおう現状を聞いて、はいと答えて終わります。
お金に対する欲がないわけではないですし、
むしろ、お金儲けをがんばりはじめたら、
僕はそればっかり考えてしまうと思うんです。
- 早野
-
自分の中にそういう欲が隠れているんですか。
- 糸井
-
欲というよりも、
なにをやるにも本気でやらないとおもしろくない、
と思う性格なんですよね。
博打だって、たぶんやると決めたら本気でやります。
バランスよく両立、
みたいなことが得意ではないんですね。
でも、おもしろいことを次々とやるためには、
ある程度お金がないとできない。
ものすごく贅沢な性分ではありませんが、
お金がかかることも選択できることが
「自由」だと思うんです。
忙しくてコンビニごはんの日もあれば、
高いけどおいしい料亭に行く日もある。
どちらも選べるお金があれば、
心に自由が持てる。
やっぱり、「自由」がほしいんですよね。
お金稼ぎは目的ではなくて
自由のために必要くらいのもので、
いまなにがいちばんやりたいか考えたら、
「よろこぶ人の数を増やしたい」
というのがいちばんです。
だから自然と「誰かのために」という
考え方に向いているのだと思います。
- 原島
-
でも、上場されましたよね。
それはどうしてですか?
- 糸井
-
大きな動機のひとつとしては、
僕らのことをもっと知ってもらいたかったんです。
みんなまだまだ知らないんです、僕らのことを。
たとえば生活のたのしみ展 #2を
3回やっていますけど、
場所を貸してもらえないこともあります。
今度の9月に初めて大阪で実施するのですが、
本気でやっていることが伝わったから
先方からプロポーズに来てくれました。
もっと知ってもらって、
よろこぶ人の数を増やしたいじゃないですか。
答えとは関係ないけれど、
やっぱり人がいちばん大事なんです。
自分のいちばん好きなことを教えてくれるし、
いちばん好きな人を紹介してくれるし、
「こんなところはダメなんだけどさ」と
忠告までしてくれます。
それってすごいことです。
でも、教えてもらうためには
信頼されていないといけないから、
知ってもらいたい気持ちが高くなったのかもしれません。
- 早野
-
僕もいま、ジュネーブの国際チームリーダーを
次の方に引き継いでいるのですが、
誰に、どうやって引き継ぐべきか、
逆算してものすごく考えました。
それで人の大切さを実感しましたね。
糸井さんもいずれ引き継ぎの時期を迎えるでしょうし、
みなさんも人生のどこかで、
自分以外の人にバトンを渡す時がくると思います。
そういうときに人は大事だから、
信頼はつくっておかなければいけないと思いますね。
- 糸井
-
そうですね。
ただ、それこそ古典を学ぶと
そんな順序立てて物事は進まなくて、
平気で包丁を持った人に刺されて
終わってしまうこともあります。
不慮の事故があれば一瞬で消えてしまいますから、
できると思いすぎないほうがいいですよね。
(つづきます。)
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- #1 MOTHER
- 1989年に任天堂から発売された
糸井が手がけたロールプレイングゲーム
「MOTHER」シリーズ。
愛と勇気と冒険の物語を
多くの方がたのしんでくださったおかげで、
ほぼ日手帳のカバーやグッズでも再登場。
現在はWii U、ゲームボーイアドバンスなどで
遊んでいただけます。
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- #2 生活のたのしみ展
- さまざまなアーティスト、目利き、ブランド
などとほぼ日がいっしょにつくる、
お買い物を中心としたイベントです。
これまで3回開催され、
次回9月は初の大阪・阪急うめだ本店で実施します!