ギリシャでは、キリストの復活祭が 一年を通して最も盛大に行われるお祭りです。 一般的にはイースターとして知られていますが、 ギリシャ正教を始め東方正教会では「パスハ」と呼ばれています。 毎年変動するパスハの日付ですが今年は4月8日で、 今はパスハの前の節食期にあたります。 この約40日間続く節食期は、 キリストが行ったと言われる断食にちなんで、 肉や魚といった血の通った食べ物、 またその産物である卵や乳製品の摂取を控えます。 大きなお祭りの前に、節制をすることで身を清めるのです。 しかし今日では、この期間中ずっと 節食を実践している人は少なく、 「カサリ・デフテーラ」と呼ばれる 節食期の初日の月曜日と、 パスハ直前の1週間だけ実践する人が多いようです。 我が家では、毎年カサリ・デフテーラに 友人らと料理を持ち寄って集まるのが習慣となっており、 今回の絵も、ある年のこの日に訪れた 友人宅を描いたものです。 テーブルには様々な豆料理に、 タコのグリル、イカのフライ、 エビのごはんやトマト煮込み、 マカロニやタラモサラタ、この日にだけ登場する 「ラガナ」と呼ばれる平たいゴマつきのパン、 そして私の持ち込んだ手毬寿司が並びます。 タコやイカ、エビ、貝類といったシーフードは 血が通っていないとされ、 この日によく食されるのです。 さらにギリシャの代表的な蒸留酒で シーフードに合うとされる「ウゾ」や ワインのアルコール類もたっぷりと用意されていました。 しかし毎回思うのですが、 この日は節食を謳っているのに 皆いつも以上に食べるし、飲む。 クリスマスよりもお正月よりも、 一年で一番食べているんじゃないかとさえ思う。 唯一対抗できるとすれば ラム肉をこれでもかと貪るパスハ当日ですが、 今はそのパスハのための節食期のはず。 なのに主人なんか毎年この日は 記憶をなくす程飲むのがお約束になっているし、 シーフードはギリシャでは比較的高額というのもあって、 私からすると節食というよりむしろ贅沢、という印象です。 さらにこの日訪れた家の友人は 肉なしでは生きられないようで、夕方には我慢しきれず、 先ほどまで魚介を焼いていたその網で すでに肉を焼いていました。 人によって信仰心の度合いは違うので、 同じギリシャ人でもカサリ・デフテーラの 過ごし方はまちまちですが、 私の周りのギリシャ人にとっては、 節食とは程遠い日なのでありました。 升ノ内朝子
2018-03-20