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Greetings from Greece ギリシャからのおたより。

升ノ内朝子さんのプロフィールとご挨拶

升ノ内朝子(ますのうちあさこ)
1977年生まれ。千葉県出身。
慶應義塾大学哲学科卒業。
セツ・モードセミナー基礎科修了後渡英し、
University of Brightonにてイラストレーション科を卒業。
2005年よりフリーのイラストレーターとして活動中。
http://www.asako-masunouchi.com

~ご挨拶~

はじめまして。升ノ内朝子と申します。
至ってシンプルなわけあって、
ギリシャで暮らすことになり、かれこれ7年になります。

それはギリシャ人の主人と結婚したからでありまして、
今は今年5歳になった娘と3人で暮らしています。

こちらに来てから何度も何度も聞かれた質問があります。
「ギリシャは好き?」
「大好き!」と答えたいところですが、
7年も暮らしていながら、いまだに答えに困ってしまいます。
結婚したときは確か「遂に来てしまった」と思ったような。
その後、ギリシャでの生活は現実であって
好きとか嫌いとか言っても仕方ないから
考えるのを停止したと思われます。

そんな私ですが、気がつけば年々描き溜まる
ギリシャの風景画。
ギリシャの架空の島まで作り上げて、個展をしたことも。
ここ何年かの日本帰省の際には、
ギリシャが恋しくなっているのもまた事実です。

波間に漂うブイのように、私の想いは
ふわっふわっと揺れ動いていますが、
思うようにままならず、不便で、いろいろ不器用だけど、
大らかで優しくて、とっても熱いこの国に
だいぶ愛着が湧いているようです。

皆さまにも、これからお届けする
ギリシャの生活や出来事を楽しんで頂けたら嬉しいです。

升ノ内朝子

升ノ内朝子さんはギリシャ・アテネに暮らす
イラストレーターです。
ほぼ日の「やさしいタオル」のデザインも
手がけてくださっているんですよ。
そんな升ノ内さん、ギリシャのすてきなところを
みなさんに知ってもらいたいと、
現地で心を掴まれた風景やできごとを
イラストに描いてくれることになりました。
遠い国から届く絵ハガキをながめるように、
いろいろ想像して楽しんでくださいね。
不定期連載です。

低空飛行

ギリシャの北西部に、コルフ島という島があります。

ギリシャの海の中でも、このコルフ島を含むイオニア海は
とても鮮やかなエメラルドグリーンをしていて、
絶景と言えるビーチが数多く存在します。

また、コルフ島はヴェネツィアを始め
フランスやイギリスに支配された歴史があることから、
西欧の影響が色濃く残った街並みや食文化が魅力で、
ギリシャ人のみならず、他のヨーロッパの国からも
人気のリゾート地です。

コルフ島には、忘れがたい思い出があります。
それは旧市街のカフェにて、まだ1歳だった娘が
ソファから前のめりに落ちて、おでこを強打したこと。
旧市街の美しいとされる石畳は、
私にとってはこの胸の痛む思い出に直結しています。

慌てて現地で診てもらえる病院を見つけ出したはいいものの、
えらく遠くて、実際に診てもらえた時には
娘は既にすんとしていたのですが、
一応何の問題もないとお墨付きをもらえて一安心したのでした。

今回は描いたのは、そんなすったもんだのあった翌日に行った
名物カフェからの風景。このカフェでは、
広々とした海にポツンと浮かぶ「ポンディコニシ(ねずみ島)」
という名の小さな島と、その手前にある修道院の上を、
いくつもの飛行機が低空飛行で通り過ぎる独特の風景を、
近距離で楽しむことができます。

飛行機好きな私は、アイスコーヒーを飲みながら
のんびりこの風景を楽しんでいましたが、
当時の写真を見返すと、その傍らにいた娘のおでこには
紫色した大きなたんこぶ、また落下防止のベルトが
ぎっちぎちにつけられていたのでした。

そんな娘も今は、落下の心配も(多分)ないですし、
苦い思い出を上書きしに、いつかまた訪れたいです。
升ノ内朝子

2024-12-12

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