hobonichi

Greetings from Greece ギリシャからのおたより。Greetings from Greece ギリシャからのおたより。

「クシスタ」

ギリシャの夏休みは長い‥‥。
ということで、私もがっつりこの連載を休んでしまいました。
イースターのお話以来ですね。
そのときのヒオス島について、もう少し書きたいと思います。

そもそも私が長年ヒオス島に行きたいと思っていたのは、
この島の南部にあるピルギ村を訪れたかったからです。
ピルギ村は、建物に「クシスタ」と呼ばれる
幾何学模様が描かれていることで有名です。
その風景をどうしてもこの目で見たかった。

ネットで世界中の風景が簡単に見ることができる今、
旅先ではその風景を見て「やっぱりな」と
思ってしまうことが多いですが、
久しぶりに素直に感動してしまいました。

長屋のように連なった家々の全面に消し炭色の幾何学模様が続く。
それは思っていたよりもずっと広範囲にわたり、
路地を曲がれども曲がれどもモノクロの不思議な空間は終わらない。
そんな迷路のような路地を抜けると、
そこには教会やカフェニオン、パン屋、薬局、日用雑貨店など、
これまたすべてが模様に包まれた広場に出る。
村一番の活気を感じる場所ですが、
どのお店も看板やドアは昔のまま色褪せており、
こんなに圧巻の情景なのにも関わらず、
そんなに“ザ・観光地”という感じがしないところがまたいい。

このクシスタは、イタリアに支配されていた頃の塗装技術と、
お隣トルコに支配されていた頃の
オリエンタルな影響を受けた模様とが
相まってできたものと考えられています。
この模様の黒い部分は塗ってあるのではなく
フォークで削られていて、近くで見ると
ギザギザのテクスチャーが見てとれます。
相当な時間がかかるものと思われますが、
その根性と技術を受け継いでいくのはやはり難しいのか、
村の人曰く残念ながら今は誰もやる人がいないそうです。

またピルギ村周辺は、ギリシャの名産品
「マスティハ」の世界唯一の生産地としても有名です。
マスティハはこの地域にだけ自生する木の名前であり、
その樹液に優れた抗菌作用があるとして
食品や薬品、美容品などに使われています。
その樹液の雫の形から、マスティハは別名「ヒオスの涙」とも言われ、
昔から村の人はこの秘薬を外敵から守ってきたと言います。

そんなおとぎの国のような外観を持ち、
RPG(ドラクエのイメージ)の世界を具現化したような場所、
それが私のピルギ村の心象です。
升ノ内朝子

2018-10-10

乗組員フジタのひとことギリシャメモ

名物の不思議なマスティハ
(マスティックともいいます)の樹液については、
ただいま製作中」でも
何度か取り上げたことがありました。
この樹液を使った飴やガム、歯磨きペーストなどは
首都アテネのお土産屋や空港でも簡単に手に入るので、
ギリシャに行かれたかたは、
ぜひトライしてみてくださいね。