カステラの丘
今年の6月、娘が小学校を卒業しました。
娘が通っていた学校は家から少し離れた
ピレウスというところにあって、
ギリシャでは小学生を一人で出歩かせるという習慣がないため、
夫が送りを、私はいつも迎えに行っていました。
わざわざバスやトラムに乗らなきゃいけないので、
歩きや待ち時間をふくめると片道45分ほど。
面倒と思いつつも出不精の私にとって外に出るいい機会。
家にいると漫然と時を過ごしてしまうことが多いので、
このぽっかり空いた移動の時間に考えたりするのが
案外心地よかったりしました。
バスやトラムに揺られて海沿いを走ること20分、
学校の最寄りの停留所を降りると、
カステラという名のかわいらしい丘が目に飛び込んでくる。
その丘を見て一瞬お菓子のカステラを思い描いた後、
学校までの道のりをいろんなことを考えながら歩いたものです。
ギリシャでは入学式や卒業式が日本のように格式ばっておらず、
だいぶラフな感じで行われます。
親子共に正装する事もないし、整列することもない。
ただ卒業式は同時に子供達の発表会も兼ねていて、
合唱や演劇が行われます。
クリスマスや独立記念日などのイベントでも
同様に発表会があって、毎回劇が演じられ、
また週に一回演劇の授業があったりするのも
劇発祥の地であるギリシャならではかなと思います。
他にも宗教の授業があったり、
ギリシャ神話を「歴史」の授業で学んだりするのも、
ユニークな点です。
卒業式に話を戻すと、発表会の後はそのまま
立食パーティに移行し、最終的に、
これは卒業式に限らず毎年学年末のお約束なのですが、
子供達が水風船やらウォーターガンやらペットボトルなどで
とにかく水をぶっかけまくる水合戦で幕を閉じます。
この習慣がどこから来たのかはよくわからないのですが、
夫が子供の時からあるそうなので、
そこそこの伝統がありそうです。
そんな感じで全身びっしょり、
全てを水に流して、清々しくあっけらかんと終わるのが
ギリシャ式といったところでしょうか。
カステラの丘を見ると、そんな小学校での様々な想い出が
パブロフの犬的に思い出されます。
夏休みが明けて9月からは中学生。
学校は同じくピレウスにあるのですが、
スクールバスがあると聞いていたので
お迎えの習慣ともお別れかなと思っていたら、
これもギリシャあるあるですが、バスの手配はこれからで、
いつになるのか、また結局用意できるのかも不明とのこと。
カステラの丘を見て思い出される想い出は、
今も日々更新されています。
升ノ内朝子
2023-10-25