Evergreen
これまで比較的暖かく、本格的な冬を迎えていないギリシャも、
12月に入り街角のイルミネーションが増えて、
やっとクリスマスムードが漂ってきました。
この季節になると、何年か前のこの時期に訪れた、
「カルペニシ」という街を思い出します。
カルペニシはギリシャ中部の山々に囲まれた小さな街で、
毎年冬には雪が降り、ギリシャのスイスとも呼ばれています。
ギリシャでは数少ないスキー場もあります。
また、もみの木の群生地としても有名で、
毎年アテネのシンタグマ広場に飾られる立派な
クリスマスツリーは、カルペニシから来るのだとか。
私がカルペニシに行った時には雪は降っていませんでしたが、
それでもやはりアテネとは違う湿った寒さがありました。
高台にあったホテルからは、一面オレンジ色の瓦屋根の街が
霧と暖炉の煙とで包まれている、幻想的な風景が。
雪が積もっていたら、さらにロマンチックだったことでしょう。
街の周りには、同様の、でももっとずっと
小さな村が山の合間に点在していて、スキーの他には
こういった村を訪れるのが旅の楽しみとなっています。
村の名前も「大きな村」「小さな村」と牧歌的。
それぞれの村に教会や小さな広場があり、
おとぎ話に出てきそうなかわいらしさがあります。
しかし誤算だったのは、車を持たない我が家がよく直面する
困難なのですが、公共交通機関が見つけられなかったこと。
スキー場もあるし観光地だからと高を括っていたら、
全ての移動がタクシーとなり痛い目に遭いました。
金銭的に厳しいので幾つかの村に絞らざるを得ず、
少し消化不良に終わった旅行だったのですが、
それから数年経った今年の夏、
娘の小学校の修学旅行先がカルペニシで、
なんと親同伴可ということだったので、
今度は夏のカルペニシを再び訪れることができたのでした。
二回目の旅では、以前行けなかった離れた村にも訪れることができ、
ストレスフリーの移動に大満足でしたが、
特に印象的だったのは「プルソス修道院」です。
大体どんなギリシャの観光地にも、辺鄙な所に建てられた修道院が
観光スポットとしてあるものですが、
このプルソス修道院も、山あいの崖っぷちに建てられており、
山の緑と鮮やかな赤い屋根のコントラストの美しいこと!
その存在を全く知らなかった私は、こんなところにこんな絶景が!と
思わぬ掘り出し物を見つけたような嬉しい気分になりました。
奥深いカルペニシ、他にもたくさんの村や洞窟、
トレッキングコースがあるとのことですが、どこへ行くにも車は必須。
不便な所ゆえ、あまりギラギラと観光地化していない良さが
あるとも言えますが、それにしたってもうちょっと
観光客に優しくしてくれよ、と思ったりもするのでした。
升ノ内朝子
2023-12-30