今回の絵は、数少ない冬のギリシャ旅行の 思い出の場所を描いたものです。 そこはメテオラ、ギリシャの内陸部随一の観光地です。 なぜか日本人に異様な人気があります。 私も例に漏れず、初めてのギリシャでメテオラを訪れました。 メテオラの魅力は、なんといってもその風景にあります。 こじんまりとしたカランバカの街中に そびえ立つ巨大な奇岩の山々、そしてその頂上に佇む修道院。 そもそも「メテオラ」という言葉も、 ギリシャ語で「宙に浮いた」という意味だそうで、 確かに修道院が天空に浮いているかのようにも見えるその景色は、 まるでファンタジーの世界です。 冬のメテオラはめちゃくちゃ寒いですが、 夏のように観光客で混み合っていなくて、 その神秘的な雰囲気を存分に味わいたいなら 冬の方がいいかもしれません。 もう15年も前になりますが、 私にとっても忘れられない思い出です。 特に思い出深かったのは、 この時泊まったうら寂しいホテルでの朝食。 私達から少し離れたテーブルで、 オーナーとその弟らしい男性が、 何やらホテルの経営難と家族の複雑な事情 (奥さんが逃げたとかなんとか‥‥)を嘆いていて、 ただでさえ寒々しかったホテルに、より寂しい印象が。 それはさながらアキ・カウリスマキの映画の ワンシーンのようでした。 ここに「浮き雲」のカティ・オウティネンのような女性がいれば、 このホテルを見事に盛り返してくれていたことでしょうが、 さて今そのホテルは一体どうなっているでしょうか。 升ノ内朝子
2017-02-03