今もなお猛威を振るう新コロナウイルスのために、
全世界で不自由な生活が強いられていますが、
もちろんギリシャも例外ではありません。
ギリシャで初の感染者が発覚したのは2月26日。
それからあれよあれよという間にーー
3月10日には学校閉鎖、3月14日から
ロックダウンがはじまりました。
ロックダウン下のギリシャでは、食品店、
デリバリーフード店、キオスク、薬局以外の全てが封鎖、
外出には身分証明書と外出の目的を書いた書類を
携帯することが義務づけられ、
違反すると150ユーロの罰金が課せられました。
情けないことにしばらくはその怒涛の展開についていけず、
規制ばかりの生活を不満に思ったりしていましたが、
隣国イタリアの、すさまじい勢いで増加する
感染者数と死者数を目の当たりにし、
やっと人ごとではないことに気づきました。
全く頼りにならない医療事情を持つこの国で、
もし実際に感染したら‥‥と想像した時、
まず脳裏に浮かんだのは終わりの見えない待ち時間、
超絶面倒くさそうな手続き、たらい回し‥‥。
もし爆発的な感染が起これば、
すぐに医療崩壊が起きてすさまじい数の死者が出るのは必至。
「絶対に感染するわけにはいかない」
そう気づいてからはギリシャ政府の比較的迅速だった
ロックダウンの決断に感謝し、
今までの生活と比較する事をやめ、
新しい環境を受け入れるべく気持ちを切り替えました。
家族3人の缶詰生活は、はじめこそいたずらに
時間を消費している気がして焦っていましたが、
予定が軒並みなくなったこともあり、
そういう感覚もだんだん麻痺し、
新しい生活のリズムが不器用ながら
だんだんと形作られていきました。
今回の絵は、この期間中の数少ない外出時に
私たちの心を慰めてくれた、近所のフリスボスの海です。
約週1回の散歩ではいつもこの海岸沿いを歩き、
途中空いたスペースを見つけては
娘とボールやバドミントンで遊んたり、
貝殻や野草を見つけたりしました。
折しも季節は春。気持ちのいい風に包まれながら
太陽の光に輝く海を見ていると、こんな不穏な状況下なのに、
うっかり世界が平和に見えてしまう
不思議な感覚をその都度味わいました。
5月13日現在、これまで爆発的感染は起こっておらず、
感染者数も徐々に減少しており、
5月4日には初めての規制緩和もされました。
まだまだ油断は禁物、そしてこれからは経済面で
もっと大変な状況になるであろうことを危惧しながらも、
少しずつ活気を取り戻しつつある街を見て
喜ばずにはいられません。
どうかこのまま、いい方へと向かってくれますように。
フリスボスの海を見ながら、心の底から
平和を感じられる日が一刻も早く訪れますように。
今はただ、そう願うばかりです。
升ノ内朝子
2020-05-22