- ──
- ハルさんは、どんな気持ちで、
この本をデザインなさったんですか。
- ハル
- junaidaの絵がすばらしいから、
グラフィックは‥‥静かに、静かに。
- junaida
- そこが、ハルさんの最高なところ。
空間を美しくデザインしてくれる。
あの‥‥なかには、
デザインでつよめに主張をしないと、
デザインした気になれない人も、
まあ、いらっしゃると思うんですよ。
- ──
- junaidaさんは過去の画集をはじめ、
オリジナルのグッズなども
自分自身でデザインされているから、
ビシッと言える意見ですね。
- junaida
- その点、ハルさんは、
そのものに必要十分なデザインを
出してくれるんです。
個人の主張みたいなものより、
デザインとして「いい佇まい」を
最優先してくれるから、
ぼくは、すごく信頼してるんです。
- ハル
- ありがとう。
- ──
- といっても、当然ですけど、
何にもしてないってことじゃなく。
- junaida
- もちろん、もちろんです。
字の大きさや配置、間隔が絶妙で、
絵を引き立たせてくれます。
ハルさんデザインじゃなかったら、
こうはならないんです。
- ──
- みなさんの関係性を見ていると
すごくチーム感があっていいなあと
思うんですけど、
所属はバラバラというか、
臨時のチームではあるわけですよね。
- junaida
- そうですね。
- ──
- それが、おもしろいなあと思います。
- junaida
- 岡田さんもね、すばらしいんです。
まず、とっても大好きな編集者で。
- 岡田
- ああ、うれしい(笑)。
- junaida
- 押し出しの強いところはないですし、
話しぶりとかも、
物静かな感じではあるんですけれど、
でも、じつは情熱にあふれる人。
心のなかで、ひそかに
パッション岡田と呼んでるくらいで。
- ──
- おお、急に芸人っぽい感じに(笑)。
でも、本に対しては、
それほどまでに情熱家でらっしゃる。
- junaida
- そうなんです。で、それはきっと、
ぼくとやっている仕事だけじゃなく、
どの仕事でも、誰との仕事でも、
そうなんだろうなと伝わってきます。
- ──
- わかる気がします。
- junaida
- たがいの意見がぶつかった場合には、
何でも「はい、はい」と
ぼくの言うことを聞くわけじゃなく、
でも、理解をしてくれるし、
意見を尊重してくださっているのが、
よくわかるんです。
- ──
- 気持ちを共有してくれるんですね。
- junaida
- そう、だからこそ、
岡田さんから出たアイデアや意見も、
そっちのほうがいいと思ったら、
すなおに自分の意見を変えられます。
そういう関係性って、必ずしも、
誰とも築けるわけではないんですよ。
- ──
- 最近、他社で本をつくったんですが、
制作を進めるにあたって、
そこの編集者がついてくれたんです。
自分が編集の役のときには、
何にも思っていなかったんですけど、
「編集者って助かるなあ!」
って、しみじみ、思ったんですよね。
- junaida
- そう思いますね。自分以外の人間で、
今、この世の中で誰よりも、
目の前の作品について、
情熱を持って、
本気で考えてくれる人‥‥ですから。
- ──
- 編集者というのは。
- junaida
- 今回も岡田さんは、何度となく
自分のことのように悩んでくれたし、
よろこんでくれたし、
アイデアを出してくれました。
「道」を、切り開いてくれたんです。
ぼくとハルさんが
「こーんな絵本にしたいな♡」って
妄想していても、
岡田さんがいなかったら、
何にも実現しなかったわけですから。
- ──
- はい。本の「前後」をなくしたいと
言ったてみたりね(笑)。
それと、聞くところによると、
印刷の色を調整する
プリンティングディレクターの方が、
とんでもない人だったとか。
- 岡田
- そうです。佐野さんとおっしゃって、
すでに退職されているんですが、
「ここぞ」という場面で、
出てきてくださる超ベテランですね。
- ──
- ここぞ。
- 岡田
- 微妙な色調整が必要な写真集や画集は、
「佐野さんじゃないと」
という感じで、お願いされるようです。
今回も、junaidaさんということで。
- ──
- レジェンドがお出ましに。
- junaida
- すごかったです。
- ──
- 具体的には、どこが、どのように?
- junaida
- 原画と印刷物って別物じゃないですか。
- ──
- 原画は無限の色からできていますけど、
印刷物の場合は、
その無限の色を4色に分解して、
再構成している‥‥という意味ですね。
- junaida
- そう‥‥なんですけど、
佐野さんが手がけてくださる色校って、
原画とならべて見くらべても、
どっちが原画で、どっちが色校か、
一瞬わかんなくなる瞬間があるんです。
- ──
- わあ。
- junaida
- 部分的には、原画よりも、
絵のよさを引き出してくださっている、
そんなこともあるくらいでした。
- ──
- 色を見わける目がいいってこと?
- junaida
- 経験値、ですね。
- ──
- ああ、もう少しマゼンタを足せば、
もっとよくなるだろうみたいな判断が。
- junaida
- 的確。ものすごいところまで、
原画に寄せてきてくださるんですよね。
理解力が、すばらしいんだと思います。
元の絵にたいして、
画家がいちばん大事に思っている部分、
そのポイントを完璧に理解して、
きちんと印刷に出してくださるという。
- 岡田
- 今回も、原画を目にした瞬間、
「ここは蛍ピンを使いましょう」って。
- ──
- 蛍ピン‥‥蛍光ピンク?
- junaida
- そう、このページには、
蛍光ピンクの特色を使ってるんですが、
原画の朱色を見て、
「このページには、
蛍光ピンクを混ぜたほうがいい」と。
- ──
- それを瞬時に見抜いちゃう。
- junaida
- もう、びっくりしっぱなし。
- 岡田
- あの、高野山に、
「誰も見せてもらえない曼荼羅」が
あるんですけど。
- ──
- はあ。
- 岡田
- その写真集をつくることになったとき、
プリンティングディレクターの
佐野さん一人だけ、
その曼荼羅を見せてもらったそうです。
つまり「実物を見ないと」ってことで。
- ──
- 誰も見せてもらえない曼荼羅を、
見せてもらえる‥‥まさにレジェンド。
- junaida
- とにかく、最高のチームでした。
- ──
- ほんとですね。その編成で、
未知の道を歩んできたわけですよね。
junaidaさんを先頭に、
junaidaさんが信頼を寄せるハルさん、
パッション岡田さん、
そして‥‥レジェンド佐野さん。
- junaida
- 最高のチームでしょう?(笑)
<つづきます>
2018-11-23-FRI