次の「みちくさ」は、来週の月曜日に。 月・水・金の更新でお届けいたします。
うわ、でかいカタバミがいるぞ、と思ったら、 柳生さんが「これはオキザリスです」と言う。 カタバミの園芸種がどこかの庭から逃げてきたらしい。 置き去り‥‥ 逃げてきた‥‥。 ふたつの言葉に魅了され、そのでかいのをじっくり見た。 すぐそばに、問題物の大きさを現すときに登場する ショートホープみたいにして、 普通のカタバミが生えている。 差は7、8倍あるだろうか。 紫、ピンク、白などの大きな花をつける 観賞用というお嬢さん育ちのこの植物が、 都会のど真ん中の公園まで、 いったいどこら辺りの庭から逃げてきたというのだろう。 家に帰っていつものように『牧野植物大図鑑』を繙くと、 オキザリスはハナカタバミという名前で載っていた。 カタバミ属は7種あり、 すべての種類の頭にOxalis(酸味の意)と 学名が付いていたが、 オキザリスと学名呼びされているのはこれだけだ。 解説に、アフリカ喜望峰原産、 日本には江戸時代末期渡来して九州に帰化した、 というようなことが書かれていたから、 目の前に、丸みを帯びてひろびろと、 あおあおと、きらきらとした大海原が浮かんできた。 旅人なんだなあ、この大っきいのは。 だから温室から逃げ出したくなるのだろうか。 先日伊豆の下田の町を歩いていたら、 花屋の店先に「オキザリス 200円」と書かれた 小さな鉢がびっしり並んでいるのを発見。 細っこい開花寸前のピンク色の花が付いているが、 その葉はどう見ても オキザリスおよびカタバミ属特有のハート形ではない。 しかし店の人の笑顔を見たら問い質せない。 店先で疑心暗鬼にもだえた。 で、証拠写真を撮って柳生さんに送って鑑定してもらった。 回答は、 「これは『オキザリス 桃の輝き』です。 きっと日本で生まれた品種でしょう。 すごく寒さに強く丈夫。 庭に植えるとかってに増えて困るほどかも!」 へえぇ。