冬の青山、骨董通り。
小雨がぱらぱら降ってきました。
これ以上、雨足が強くなりませんように。
吉本由美さんと諏訪雄一さんのおふたりは、
骨董通りから、すこし細目の裏通りに入っていきます。
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諏訪 |
ここ、曲がりましょうか。 |
吉本 |
こっちに行くんですね。 |
諏訪 |
ええ、その向こうに、
ちょっと植物がありましたので。 |
吉本 |
そうか、諏訪さん、
ロケハンしてくださったんですもんね。 |
諏訪 |
はい、日曜日に、
このあたりを歩いてみました。
やっぱりちょっと見ておきたかったので。 |
吉本 |
お休みの日にありがとうございました。 |
諏訪 |
いえいえ‥‥
あ、これですね、ちょっと気になったのは。 |
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吉本 |
ここは‥‥花壇? |
諏訪 |
そう。ほら、こんなのが‥‥。 |
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吉本 |
ツタですね‥‥枯れかけているような。 |
諏訪 |
枯れかけてますけども、
ヤマイモの仲間だと思うんですよ。 |
吉本 |
ヤマイモ? ここにヤマイモ?! |
諏訪 |
たぶん、ヒメドコロか、オニドコロではないかと。 |
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吉本 |
それはヤマイモの一種なんですね。
ジネンジョですか? |
諏訪 |
いや、残念ながら(笑)。
あのおいしいやつじゃないですね。
ヤマイモの仲間は
それなりに種類があって、区別が‥‥ |
吉本 |
難しい。 |
諏訪 |
でも、この葉っぱはたぶん、
ヒメドコロとかオニドコロだと思います。 |
吉本 |
姫か鬼‥‥その名前もすごい。 |
諏訪 |
はい(笑)。 |
吉本 |
これ、誰かがここで育てようと思って
植えたわけじゃないですよね。 |
諏訪 |
そうではないでしょう。
おそらく土を持って来たときに
タネが入ってたのかな。 |
吉本 |
ああ、そういう。 |
諏訪 |
ヤマイモの優れているところは、
増え方が3種類あるんですよ。
ふつうは、花が咲いてタネが落ちて
子どもができるじゃないですか。
ヤマイモもそうやって増えるんですが、
同時に「むかご」っていう‥‥
ごぞんじですか? むかご。 |
吉本 |
ちいさな玉みたいな。
おいしいですよね。 |
諏訪 |
そう、パチンコ玉みたいな身がいっぱい付いて
それが地面に落ちて、芽が出るんですよ。 |
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吉本 |
へー。 |
諏訪 |
でも、ヒメドコロとオニドコロの場合は、
むかごはできないんです、たしか。 |
吉本 |
あ、そうなんですか。 |
諏訪 |
そのかわり、
イモ自身がこう、割れて増えたりも。 |
吉本 |
そうか、タネイモだ。
おいもってそうですよね。 |
諏訪 |
むかごからイモになるのに
だいたい2〜3年かかるんですね。
タネからだと5〜6年かかっちゃう。 |
吉本 |
わあ、たいへん。 |
諏訪 |
タネイモを植えれば
その年にはもう穫れちゃうんです。
だから早く増やすには
切ったイモを植えるのがいいんですけど、
その場合にはマイナス面があるんですよ。 |
吉本 |
それはどういう? |
諏訪 |
自分の体の一部を太らせるので
遺伝子がまったく同じなんです。
クローンができるわけですね。
これは、むかごの場合も同じです。 |
吉本 |
おいもの、クローン。 |
諏訪 |
花を咲かせてタネから育てれば
遺伝子が混ざり合うので、
環境が変わっても、
どれかしらが生き延びる可能性のある
子どもたちができあるんですね。 |
吉本 |
でも、クローンでぜんぶ同じ遺伝子だと‥‥ |
諏訪 |
ひとつの要因で
ぜんぶダメになっちゃう危険があります。 |
吉本 |
‥‥この子は、きっとタネからですよね?
だって、こんな場所で丈夫に育ったんですから。 |
諏訪 |
そうかもしれませんね(笑)。 |
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青山でヤマイモの仲間を見つけたのも意外でしたが、
お話が「クローン」のことになったのも予想外でした。
実際に野菜を育てている諏訪さんならではの解説ですよね。
次のみちくさは、3月16日に。
月・水・金の更新でまいります。 |