ときおり通り過ぎる自動車に気をつけながら、
おふたりは冬の青山界隈を歩き続けています。
視線を下に向けて、てくてくと。
とある交差点で、諏訪さんが足をとめました。 |
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諏訪 |
ああー、これは‥‥。
きょうのきわめつけの、
すごい名前のみちくさがありますよ。 |
吉本 |
え? これが‥‥。
なんていう名前なんですか? |
諏訪 |
これの名前はですね。 |
吉本 |
はい。 |
諏訪 |
ハキダメギク。 |
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吉本 |
ええ?! ハキダメ? |
諏訪 |
そう(笑)、ハキダメギク。 |
吉本 |
ハキダメギク。 |
吉本 |
こんなにかわいいじゃないですか。 |
諏訪 |
ねえ。
なぜその名前になったかというと、
ほんとにゴミ捨て場の掃き溜めで
最初に見つけられたからなんです。 |
吉本 |
掃き溜めで‥‥。 |
諏訪 |
ものの本によれば、そういうことでした。
たまたまそんな場所で見つかったばっかりに。
かわいそうな名前ですよねえ‥‥。
ちなみにこれも帰化植物なんです。 |
吉本 |
そうですか。
こんなかわいいのに。 |
諏訪 |
すごくかわいいんですよ。 |
吉本 |
なのに、ハキダメ。 |
諏訪 |
よく付けましたよね、
その名前を。 |
吉本 |
ねえ。
ちっちゃな小花が‥‥。 |
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諏訪 |
これも基本的に、花は夏から秋に咲くんですよ。 |
吉本 |
じゃあ、チチコグサモドキといっしょですか?
日照時間のせいなんでしょうか。 |
諏訪 |
そうかもしれませんね‥‥。
まぁ、あとは、
単純に「暖冬」ということもあるかもしれません。 |
吉本 |
そうか、暖冬‥‥。
とくに都会はあたたかいですものね‥‥。
あれ? そこにあるのも、ハキダメギク? |
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諏訪 |
ああ、はい、そうですね、同じです。 |
吉本 |
こっちの子も花を咲かせて‥‥。 |
諏訪 |
しかしまあ、
ハキダメギクがあるとは思わなかったな‥‥。 |
吉本 |
ちょっとほんと、
ゴミがありますね、近くに。 |
諏訪 |
うーん、そうですね。 |
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吉本 |
この子が掃き溜めにしたわけじゃないのに。 |
諏訪 |
ほんとに。
こんな名前をつけられた上に、
咲きたくない季節に咲かされて。 |
吉本 |
かわいそうなハキダメギク。
‥‥はい、しっかり覚えました。
これはさすがに覚えやすい。 |
諏訪 |
ええ、すごい名前ですから(笑)。 |
吉本 |
ハキダメギク‥‥。
ああ、つくづく、あんまりな名前だなぁ(笑)。 |
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ほんとにすごい名前です、ハキダメギク。
たしかに覚えやすい。
でもやっぱり、気の毒な名前ですよねぇ。
ずいぶん春めいてきましたが、
冬の都会のみちくさ編は、もうすこし続きます。
次の「みちくさ」は、明後日に。
月・水・金の更新でまいります。 |