柳生真吾さんが運営する
『八ヶ岳倶楽部』でのみちくさが続いています。
高地の涼しい風が通り抜ける雑木林を歩きながら、
柳生さんがこの場所のことを話してくださいました。 |
|
吉本 |
さっきのコアジサイもミツバも、
ここにこれを植えようという感じで
計画的に植えられたものではないんですね。 |
柳生 |
そうなんです、みんな勝手に。
植物が生えている場所をつくるというと、
ふつうは何かを植えると思いますよね。
でもね、ぼくらの場合、森とか林のつくりかたは
「切る」と「刈る」なんです。 |
吉本 |
「切る」というのは、
木を切るということですか。 |
柳生 |
はい、
あと、草を「刈る」。
そうするとその場所に
届かなかった光が入ったりして環境が変わり、
ずっと出番を待ってた植物が出てくる。 |
|
吉本 |
ちがうものが出てくる。 |
柳生 |
ここでは笹を刈ったら、
いろいろなちがうものが出てきました。 |
吉本 |
笹畑だったんですか、ここは。 |
柳生 |
笹と松しかなかったんですよ。
ものすごく荒れてて。 |
吉本 |
そうだったんですか。 |
柳生 |
植物の世界は早い者勝ちなんです。
笹を刈ったあとに、何が出るか。
出てしまえば、笹を抑えてそれが育つんです。 |
吉本 |
なるほど。 |
柳生 |
だからまだ、あちこちに笹があるでしょ?
ほら、ここにも。 |
|
吉本 |
うん、あります、さっきから。 |
柳生 |
気がつくと、こうね(笹を抜く)、
条件反射のように抜いてるんですよ、ぼく。
子どもの頃からやらされてますから(笑)。 |
|
吉本 |
条件反射で(笑)。 |
柳生 |
このあたりも笹しかなかったのに、
きれいでしょう、草原になって。 |
|
吉本 |
このたくさん生えてる子は、何ですか? |
柳生 |
これはね、フウチソウといいます。
ここではこれが出てきたわけですね。 |
吉本 |
フウチソウ。
‥‥カーブがきれい。 |
|
柳生 |
ね。カーブが。
風の流れみたいじゃないですか。
目に見えない風を知ることができるから、
フウチソウ(風知草)ですね。 |
吉本 |
風を知っているから‥‥。
いい名前をつけてもらいましたねぇ。 |
柳生 |
すごいセンスですよね。
ちなみにこれは、別名があります。
ウラハグサ。 |
吉本 |
ウラハ‥‥?
葉っぱの裏のこと? |
柳生 |
この植物は、ふつうの植物では
ありえない形をしてるんです。 |
吉本 |
なにか特徴があるんですね。 |
柳生 |
(1本引き抜き)よく見てください。
どんな特徴だと思います? |
|
吉本 |
あ‥‥わかりました。
表と裏が逆についてる。 |
柳生 |
そう。
葉っぱの裏が表になってるんです。
ふつうはこうなのに‥‥ |
|
柳生 |
反転して、こうなってる。 |
|
吉本 |
なんでこんなふうになってるんですか? |
柳生 |
それが、理由がまったくわかんない。 |
吉本 |
わからない? |
柳生 |
ふつう葉っぱっていうのは、
表にソーラーパネルがあって光合成をしています。
で、裏には何があるかっていうと、
呼吸をするための穴が開いてるんですよ。
雨に濡れて穴に水が入らないよう、裏側に。 |
吉本 |
はい。 |
柳生 |
ところがこれは表と裏を逆にしちゃって。 |
|
吉本 |
どうしてなんだろう? |
柳生 |
謎なんですよ。
ごめんなさい、
問題を出しといて答えがわからない(笑)。 |
吉本 |
でも、あれじゃないかしら。
風になびきやすいから、
裏のほうが表になってる時間が長いんじゃない? |
柳生 |
あー、なるほど、風になびいて。
寝癖みたいな感じで。 |
吉本 |
そう。 |
柳生 |
「吉本さん説」ですね。
いやぁ、おもしろいです。
いまはまだ正解がないので、
「吉本さん説」もエントリーしたいですね(笑)。 |
吉本 |
たぶんはずれてると思うけど(笑)。 |
|
風を知る草、フウチソウ。
ほんとうにいい名前ですね。
別名の「ウラハグサ」も、
ぜひいっしょに覚えましょう。
次の「みちくさ」は、土曜日に。
「八ヶ岳倶楽部でみちくさ」編は、
火・木・土の更新でお届けいたします。 |