柳生さんと吉本さんは、のんびりと雑木林を進みます。
ふつうに歩いていたら通りすぎてしまいそうな場所で、
柳生さんが足をとめました。
指さす先にある、ちいさなピンクの花の名は‥‥? |
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柳生 |
ちらちらと見えてますが、
わかりますか? このピンクの花。 |
吉本 |
はい、かわいいのがありますね。 |
柳生 |
もうちょっとすると、
ここはピンクの花でいっぱいになります。 |
柳生 |
この人の名前は、ママコナといいます。 |
吉本 |
ママコナ? |
柳生 |
ママコナっていいます。 |
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吉本 |
不思議な、不思議な形。
ママコナ‥‥。 |
柳生 |
ママコナの「ナ」は、
草という意味なんですけど、
「ママコ」はどういう意味かわかりますか? |
吉本 |
ママコ‥‥
あのぅ、義理のお母さんの‥‥? |
柳生 |
ん? |
吉本 |
あんまりいい言葉じゃないんですけど、
血のつながっていない子どものこと? |
柳生 |
ああ、継子(ままこ)ですね。 |
吉本 |
ちがう? |
柳生 |
そうですね、それもママコですね。
うん。
これは、そのママコじゃないんです。 |
吉本 |
じゃあ‥‥ご飯? |
柳生 |
そう、ご飯。
正解。
マンマ、ご飯粒。
漢字で書けば「飯の子」です。 |
吉本 |
米粒みたいに見えるからでしょうか? |
柳生 |
そうそうそう、すばらしい。
この白い部分をお米に見立てて。 |
吉本 |
ほんとだ、米粒みたい。 |
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柳生 |
さっき吉本さんがおっしゃった、
「継子」がついた植物もあるんですよ。 |
吉本 |
あるんですか。 |
柳生 |
ママコノシリヌグイっていう草があります。 |
吉本 |
えーー?! |
柳生 |
それはね、葉っぱも茎もぜんぶトゲトゲで
さわるとすっごく痛いんです。 |
吉本 |
そんなに痛いもので
子どものお尻をぬぐうの?
それ、ひどくないですか? |
柳生 |
ひどいですよ。
その草で子どもいじめるっていう意味ですから。
でも、そういう名前なんです。 |
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吉本 |
うーん。
名前をつけられたほうも
たまったもんじゃないですね。 |
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柳生 |
ほんとうに。
‥‥で、こっちのママコナの話に戻ると。 |
吉本 |
はい。 |
柳生 |
おもしろい特徴があるんですよ。
虫の目からは、
このママコの部分がぶわあって
光ってみえるんだそうです。 |
吉本 |
光ってるんですか、これが? |
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柳生 |
「虫の目カメラ」っていう、
虫の目で見たらどういうふうに写るか
っていうカメラがあるんですよ。
それで、これを見ると、
このママコが光ってるんです。 |
吉本 |
人間の目には見えない光‥‥? |
柳生 |
紫外線。
紫外線をここから出しているんです。 |
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吉本 |
えぇーーー? |
柳生 |
ぼくらは白にしか見えないけど、
虫の目からはパーッと、
ここがネオンサインのように光って見える。 |
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吉本 |
それで虫が来ちゃうんだ。 |
柳生 |
そのとおり。
虫がこれを見たら、
もう行かずにはにいられないっていう。 |
吉本 |
繁華街のネオンサイン。
「いらっしゃいませー」って(笑)。 |
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柳生 |
そうそうそう(笑)。 |
吉本 |
すごいねぇ。 |
柳生 |
すごいでしょう?
たいしたママコなんですよ。 |
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ご飯粒に似ているからママコナ。
これも覚えやすい名前ですね。
紫外線を出しているお話も興味深かったです。
それにしても、ママコノシリヌグイ‥‥。
かわいそうな名前ですねえ。
今回、吉本さんのエッセイはお休みです。
次の「みちくさ」は、火曜日に。
「八ヶ岳倶楽部でみちくさ」編は、
火・木・土の更新でお届けいたします。 |