第2回
ミッフィー、カーディガンを編んでもらう。

気仙沼ニッティングは、
ほぼ日刊イトイ新聞の震災支援プロジェクトの
ひとつとしてはじまり、
2013年6月に独立した株式会社です。

遠洋漁業の港町である気仙沼は、
家庭で漁師さんの防寒用のセーターを
編む習慣がありました。
漁の網を編んで補修することも
日常的に行われていたこの地で
インフラが整っていないうちにはじめられた
「編みもの」は、ぴったりの産業かもしれません。
編み手は地元の女性たちが中心。
すべての商品を、編みもの作家の三國万里子さんが
デザイン、監修しています。

その気仙沼ニッティングで
ミッフィーのニットを担当することになったのは
田村純子さんです。
ルーマニアンレースの指導者でもある
高い技術の持ち主です。
「目がきれいで全体のバランスがよく、
 柄が浮かびあがるようなニットを編みあげる」
という定評のある方なのです。

気仙沼ニッティングの商品には、オーダーメイドで編む
「MM01」というカーディガンがあります。
デザインのかっこよさはいうまでもなく、
着る人のからだに合わせて左右の腕の長さを
変えることもあるほどです。
ミッフィーのカーディガンも
この「MM01」のデザインとコンセプトで
編むことになりました。

ミッフィーのサイズで、
ミッフィーにぴったりのものを編む。
これがとても重要なポイントになります。

田村さんは、ミッフィーが気仙沼にやってきた
その日にすぐ、採寸作業にとりかかりました。
頭部、胸部、おなかまわり‥‥
導き線となる糸をこまかくはりめぐらし、
サイズを立体的に、綿密に計ります。

採寸どおりに型紙を起こしたあとに、
シーチングと呼ばれる布地で仮縫いした服をつくり、
ミッフィーに着せて手直し。
サイズが完璧に出たところで毛糸を編んでゲージを取り、
そこから編み図を起こしました。

採寸をはじめてから
実際にカーディガンを編むまでには、
約2ヶ月を要することになりました。

糸に選んだ色は、
ミッフィーが本のなかで
よく着ていた「赤」です。


▲ゲージを確認するため、
 本番と同じ糸で編んだサンプルをあてます。


▲田村さんから送られてきた完成図。

ミッフィーが想像以上に大きかったので、
田村さんは三國万里子さんと話し合い、
毛糸を2本どりにして編むことにしました。

田村さんは、大きなミッフィーの面積分の
カーディガンと帽子をしあげるまで
「一度も編み直しをしなかった」のだそうです。
編みものについてご存知の方なら
おわかりになると思いますが、
これは驚異的なことです。

2014年9月8日から編みはじめ、20日後にはもう
カーディガンが完成していました。
その後、田村さんは巨大帽子にとりかかりました。

採寸作業は「居残りの生徒」のように、
気仙沼の事務所でもくもくと行いましたが、
編む作業は、田村さんの住む仮設住宅で。
少し編み進んでは
事務所にいるミッフィーに「あて」に行き、
「よしよし。こんなかんじでオッケー」
と確認しながら、また、自宅で編む‥‥。

3ヶ月の時間を経て、
ミッフィーのカーディガンと帽子のセットが
完成しました。

カーディガンも帽子も、
ボンドやピンで固定するのではなく、
ボタンやリボンで「着脱できるように」なっています。
(服として考えればあたりまえのことですが、
 ミッフィーを人形として考えると
 すごい‥‥! と思ってしまいます)


▲気仙沼ニッティングのみなさんに
 編みあがったニットを着せてもらうミッフィー。

そして‥‥
これが、気仙沼ニッティングで編んでもらった
ミッフィーのカーディガンと帽子です。


▲サイズぴったりのカーディガン。
 木のボタンを外して着ます。


▲帽子。ミッフィーは頭がまるいので、
 浮き上がらないように編むのがたいへんだったそうです。

では、ミッフィーちゃん、
帽子から着てみましょう。


▲寒そうな耳を、するすると。


▲顔のまわりもくるみます。あったかい。


▲帽子のリボンはあとまわしにして、
 カーディガンを羽織ってもらいます。


▲ボタンをとめます。ジャストフィット。


▲帽子のリボンをくるっと巻いてちょうちょ結びに。


▲はい、完了。
 『ゆきのひのうさこちゃん』から
 飛び出てきたようなミッフィーです。


▲「柄が浮かびあがる」といわれる
 田村さんの腕前がわかります。
 撮影:吉次史成


 うしろ姿もチャーミング。
 撮影:吉次史成


 大きなボタンとボタンホール。
 しっかりとまります。
 撮影:吉次史成

(つづきます)

2015-04-20-MON 
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