第1回ブローチは小さな結界。

──
今日は光浦さんがつくったブローチを
いくつか持ってきていただいたんですよね。

いったいどんなものか拝見したくて‥‥
光浦
はい、持ってきました。

1冊目の本に載せたものと、2冊目のと‥‥
これが3冊目の本に載せたものです。

──
わー、すごい! ひゃー‥‥
実物のインパクトは想像以上ですね。

光浦
まぁ! うれしい反応です。

ありがとうございます。
──
近くでみても丁寧で細かいつくりで‥‥
光浦
そう言ってもらえるとうれしいです。

あと、これが裁縫道具です。

──
こちらはお持ちの裁縫道具の一部ですか?
光浦
一部ですが、主にはこれをつかっています。

‥‥あ。フェルトがでてきちゃってる。

 
(チクチク)
──
即座に修繕されるんですね。
光浦
それは手芸のいいところですね。
──
さすが、手慣れていらっしゃいますね。

今までブローチはいくつつくられたんですか?
光浦
本を1冊つくるのに約100個つくるので、
たぶんこれまで300個はつくりました。
──
300個ですか!

それはすごい数ですね。

▲1冊目で掲載したブローチの集合写真。©池田晶紀(ゆかい)

光浦
いつの間にかそんな数になっていました。

‥‥わ。久々に外にだしたので、
修繕したくなりますね。

少しだけ直してもいいですか?
──
どうぞ、どうぞ。
光浦
ありがとうございます。

(チクチク)

──
完成したものをお家に飾ったり、
身につけたりされないんですか?
光浦
しないですね。

つくるのは好きですけど、
整理整頓できないもんで
1度片付けたら、
もう2度と外にださないものもあるかと‥‥

がんばってつくったのに
日の目を見ていない作品が
たぶんあると思います。
──
集中して、ずっとつくられますか?
光浦
たのしくてしょうがないので
キャッキャ、キャッキャしながら
つくっていますよ。

全然苦痛にならないです。
──
番組収録の合間も
ずっと手芸をされているんですか?
光浦
いえ、家でないとつくれないです。
本をつくるときは家にこもって、
朝から晩までずっと
本に載せる作品をつくっています。
キャッキャ、キャッキャと。

──
どうしてこんなにたくさんの
しかも手間のかかりそうなブローチを
つくれるんだろうと思っていたのですが
その答えは‥‥
光浦
キャッキャ、キャッキャ。
──
すごいですね。

飽きはこないですか?
光浦
純粋に好きですから。
──
これだけの数の作品をつくられていて、
光浦さんはきっと
何か伝えたいことがあるのではないかと、
勝手に思っていました。
光浦
伝えたいことですか‥‥
──
制作時間もかかるでしょうし、
ただ好きなだけでは
これだけの数とクオリティのものを
普通はつくれないと思うんです。

ブローチを通して伝えたい、
光浦さんの胸の内といいますか。
光浦
そうですね‥‥趣味ですから。
──
趣味ですか。
光浦
好きでやっているので、
伝えたいことはないかもしれないです。

そりゃ、伝えたいことはいっぱいありますが、
こう、言葉で「これ!」と
わかりやすく言えることはなかなか‥‥

本を読んだ方が決めることだと思うので。

ただ、わがままを言うと、
すぐに「意味わかんねぇ」と言ってしまう方の
手には渡らないといいなぁと。希望です。

──
「意味わかんねぇ」とは、
意見や批評のようなものですか?
光浦
批評というより否定がメインみたいな。

あの、ブローチは小さな、小さな、
保護地区といいますか‥‥

私にとって、
とってもささやかなたのしみなんです。
──
保護地区。
光浦
結界、ですかね。

どんな色をつかっても
どんなものを作ってもいいですよね?

あの丸の中だけでも自由にいさせてくださいと
思っています。
──
ブローチは自分だけの世界ってことですね。
光浦
はい。

好きな人だけで、コソコソたのしみたい。

──
ああ、いいですね。

好きな人だけでコソコソ。
光浦
ブローチという結界で守られた小さな丸の中は、
センスがなくても自分の好きなようにできる。

誰にも何も言われない、自由な場所なんです。

そういう場所があってもいいかなと。

で、みなさんもやってみては?って。
──
そうか。

だから小さな世界を閉じ込めることができる、
ブローチなんですね。
光浦
自由につくりすぎて、
主張が強い作品ができてしまうので
自分では身につけにくいですね。
──
ああ、なるほど。

そうなんですか(笑)
光浦
本を出して自分から見つかろうとしているので、
言っていることとやっていることが
矛盾しているなって自分でも思うんです。
──
本やこういった展示を通して、
コソコソ一緒にたのしめる仲間ができることは
うれしいですよね。
光浦
好きな人だけでコソコソ、
キャッキャ、キャッキャ。
いいな。

──
想像するだけでたのしそうです。
光浦
多少でもわかってくれるかな?

という人たちには、
広まってくれたらいいなあ。

打たれ弱いので。

(つづきます)

2017-05-08-MON