第2回コツコツ、コツコツ、

よくやるよ!

──
そこまでお好きでしたら、
手芸作家に転身したいと思われますか?
光浦
おばあさんになったら、ですね。

芸能界で必要とされるうちは
稼げるだけちゃんと稼ぎたいです。
──
そんな人生プランが。
光浦
今日の番組収録で、
ひとり暮らしのおじいさんが
ハッキリ言ったんですよ。

「やっぱりさびしいね」って。

──
さびしい、ですか。
光浦
「1人で年をとることはさびしい」って
断言したもんで、将来がこわくなった。
──
切実な感じだったんですか?
光浦
いや、なんというか‥‥
明るい感じで。その人は毎日を
たのしそうに生きてるようにみえたので
逆に、響きました。
──
雰囲気と話されたことが
違ったイメージの結論だったんですね。
光浦
その姿をみて、共演者のみんなで
「やっぱり誰でもいいから家族をつくりたい」
っていう話になって。
でも、わたし、
このままだと一生1人かもしれないんで
1人だったら楽しみがないと辛いだろうな、と。

定年退職のない、
いつまでも続けられる仕事を
自分で作らないと…と。そのために
もっと稼がなきゃいけないんですよ。

自分の身は自分で守らなきゃいけないもんで。
──
なるほど。
光浦
だからぎりぎりまで芸能界でお金を稼いで、
そのうち沖縄に移住して、
ブローチ屋さんをオープンして、
「光浦靖子のブローチが大人気!」って
芸能界でつくったコネクションを活かして
何とか情報を操作していただいて。
──
(笑)
光浦
沖縄限定販売にしたら、
みなさんもわざわざ買いに来てくれるかも
しれないでしょ。
──
すごく考えていらっしゃいますね(笑)
光浦
だいたい50歳くらいで沖縄に移住するとして、
店をやるのは体力がいるから
そうなるとだいたい20年で‥‥
──
70歳になりますね。
光浦
70歳だと、まだ死んでいないでしょ。

90歳までは生きちゃうでしょ‥‥

こわい、こわい。

──
こわいですか?
光浦
手芸作家になれたと仮定して、
70歳まで食べていけたとしても、
まだ20年先の職業までしか
用意できていないんですよ‥‥こわい。
しかも1人で。
──
ここまで真剣に人生プランを設計できていたら、
むしろ大丈夫な気がします。
光浦
私は全く冒険ができない性格なので
常に保険をかけて生きてきたんです。

芸能界に入った時も大学生をやっていて、
いざというときには
新卒で就職活動できる身だったんですよ。
──
そうだったんですか。
光浦
でも、保険をかけとるのに
結果は芸能界という安定しない場所で
独身でふらふらしていて、
全然安全じゃないほうを選んでいる。

保険を使っていないんです。
──
ということは、
ブローチも保険になりますか?
光浦
いや、保険にはしたくないですね。

夢ですね。保険は使わないが一番ですからね。
──
光浦さんは本がお好きなイメージがあるので、
「手芸」という選択肢は意外でした。

小説家など、そういう道もあったのかなと。
光浦
小説家は2度ほど依頼がきまして、
トライしましたけど、書けませんでした。

伝えたいことがない! って(笑)
──
じゃあ、まずは先に手芸を。
光浦
手芸はたのしいですもん。
笑ってもらえるし。
──
笑い、ですか。
光浦
はい、そこが大事です。
──
たのしいだけではなくて、
手芸にも笑いが大事なんですか?
光浦
笑ってもらうことを目的につくっています。
──
手芸作家さんで、笑いを目的にしている方って
あまり聞かないですよね?
光浦
いらっしゃらないと思います。
芸術家やアーティストとよばれる人で
カッコつけ過ぎて、
それじゃカッコわるいよぉ、って。

笑いにもってけばカッコいいのにぃ、って。
──
そんな風に思っているんですね(笑)
光浦
もちろん、カッコいい芸術家さんも
大勢いらっしゃいますよ。
──
たとえば、どの方ですか?
光浦
片岡球子さんが好きです。
──
ああ。
戦後に活躍された日本画家の方ですね。
光浦
あの方はもう「カッコいいなぁ」と思って‥‥
絵もすごくカッコいいんですけど、
99歳になってもスケッチをしていた
というところが、またカッコいいなぁと。

──
へえ、そうなんですか。
知らなかったです。
光浦
片岡さんは先生をされながら
作品をつくりつづけて、
すごくスケッチもしていたらしいんですよ。
──
作品も雄大で素晴らしいですが、
そういうみえない努力があったんですね。
光浦
世間から「真面目な人でさあ」と言われる人が、
実は一番クレイジーで
カッコいいんだよねと思って。
──
毎日、ですもんね。
光浦
そう、地道にコツコツ。
──
光浦さんもコツコツ作品をつくりながら、
「カッコいい」を目指していきますか?
光浦
いやあ‥‥。
──
それは違うんですか?
光浦
いつかは、カッコいいなぁって思ってくれる人が
出てきてくれたらうれしいですけどね。

なんていうのかな‥‥
──
はい。
光浦
作品をみて感動する、は一番カッコいいですよ。

でも、その才能は私には無理といいますか‥‥

生き様とか作品に向き合う姿勢とか、
引きでみたときに「よくやるよ!」って
笑ってもらえるというんですかね?

──
この作品が素晴らしいな、とか
構図が絶妙だ、とかそういうのではなく。
光浦
そうですね。なんかこう、
「コツコツ、コツコツ。よくやるよ!」と
引きでみたときの生き様的なものに
心が動いてもらえたらうれしいです。
──
‥‥いいですね。引きでみて、ですか。
光浦
ぜーんぶひっくるめて感動しましたっていう人が
この先10人も現れたら本望です。

──
もう、そういう方はいる気がします。
光浦
いや、まだ私はそこまで評価されるところに
到達できていないです。

ブローチ作り始めて、
たかが、たかが10年弱ですよ。

それに本を出版して自分から宣伝している時点で
もうゲスいんですよ。
──
そんな言いかた(笑)

(つづきます)

2017-05-09-TUE