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おもしろ魂。
三宅恵介さん土屋敏男さんと、テレビを語る。

13. 演者をあたためることが、演出。


ここでひとつ、お知らせがあります。
フジテレビの三宅さんによる、
9月20日(月・祝日)の昼間の特番についての話を、
このコーナーを、読んでくださっている方なら、
聞きたいと思いまして……その話をおとどけします。

「藤村俊二さんと、
 だいぶ前に、昔の
 『巨泉・前武ゲバゲバ90分』
 みたいなものをやりたいと、
 いろいろ話したんですね。

 それで、藤村さんを筆頭にした
 昭和九年会
 (藤村さんや牧伸二さんや
  坂上二郎さんといった
  昭和九年生まれの芸能人の集まり)
 のメンバーで、
 老人が見て元気になるようなコントを、
 今年の九月二〇日の、敬老の日の
 昼間にやろうということになりまして。

 『ジジババと四十人の盗賊」というのを
 おひょいさんが考えたんですけど、
 これはもうすぐやります。

 司会は、
 平成九年生まれにしようっていうので、
 小学校二年生ぐらいの子なんです。

 今年、古稀を迎える
 九年会のメンバーでコントをやれば、
 違うおもしろがりかたがあるかなぁ、
 とは思っていて、
 それをやろうと考えています」


テレビのことをおもしろがりたい思い、
「なんかやっぱり、
 自分でおもしろがっていたい」
と思っている三宅さんの番組での挑戦を、
よかったら、祝日の日の昼間に、
どうぞ、おたのしみくださいね。

それでは、今日の3人の会話を、おとどけです。

三宅恵介さんプロフィール
土屋敏男さんプロフィール

三宅 笑いの場合には、
「おもしろい台本ですから、
 これをそのままやってください」では、
絶対に出演者はみんなそのとおりには、
やらないんですよね。

しかも、そこで台本どおりやるような人は、
そもそも、だめなんです。

「あ、これおもしろい……ちくしょう……」
そこから自分で考えるような人ばかり、
ぼくは、つきあってきました。

「だから、まずは
 演者を乗せることから憶えなきゃ」

っていうような話を、
腹が立ってきたものだから、
そのディレクターに、
延々と話してしまいまして……(笑)。
糸井 そういうときって、自分が、
なんかうるさい人みたいに思えてきますよね(笑)。
三宅 そうなんですよ。

そこに、たまたま一緒にやっているADがいて、
そのディレクターが帰ったあとに、

「おまえは、わかるだろう?
 笑いっていうのは、
 そういうことを勉強してるんだから……。
 あいつにうるさいやつとかなんとか思われても、
 オレはもうかまわないけど」

そういうことを、言ったんです。
そういうことすると、
発注が来なくなるんだろうけど(笑)。

でも、土屋さんがおっしゃったように、
そういうことって、けっこうありますよね。
土屋 すごくわかります。

たけしさんにしても、みなさんにしても、
若手のテレビ制作者に対して、

「おまえらが、わかってないから、
 テレビの世界に物足りなくなるんだ!」

そういうことを言うと、
自分のところの若いヤツの
悪口になっちゃうし、
イヤなジジイみたいな
言いかたになっちゃうんですけど……
でも、正直、そうですよね?

こないだ、三宅さんと糸井さんと
話をしたときにも、やっぱり結局、
こういう考えかたについて触れていて、
職人の「住み込みによる受け渡し」についての
話になっていったんですけど……。
三宅 「表面的なことではなくて、
 本質的なところを、誰も教えていない」

という。
糸井 さっきの
「自分を粗末に扱ってほしい」
という、鶴瓶さんの考え方みたいなものと
重なると思うんですけど、
おもしろい仕事のコツって
「どれだけ自分を消すか」ということですよね。

ディレクターが、
いくらいい台本を持っていても
「それをそのまま使ってください」では
「ぼくを褒めてください」
というメッセージしか、
伝わってこないですよね。
それに、出る側としては、
そういう台本が来るとイヤですし。

「あの、ここに
 メモがわりのものがありますけど、
 まぁ、どこを取ってもいいんですが、
 このあたりのところにいくと
 うれしいんですけど……」


そう渡してくれたら、
へぇ、と思って台本を読みますよね。
三宅 まさにそこを、
われわれは「演出」だと思ってるんです。
糸井 やっぱり、そこですよね?

「あくまで下敷きの、
 下調べだけはしておきました。
 捨てちゃってもいいんですけど、
 一応は、こういうことです」

そう言われたら、
どうおもしろくしようか?と、
ディレクターが自分を消してくれたおかげで
乗りこめるんです。

鶴瓶さんの話も、
「オレはすごいだろう」
の部分を消しているおかげで、
どこにでもおもしろいところへ
入っていけるんです。
覆面して遊ぶのと、おんなじですよね。

このあいだも出た徒弟制度の話ですけど、
大工の徒弟制度で憶えさせることって、
あれはぜんぶ
「自分を消させる仕事」なんですよね。

つまり、大工の腕というのは、
頭で憶えたところで意味がなくて、
腕が憶えるまでは憶えない、という……。
三宅 なるほど。
糸井 カンナをかけるっていうことを
憶えるのには、腕で憶えるしかないし、
「どこで生まれて、一応、大学も、
 いいところを出てるんですよね」
という優越感なんて、そういうときには
ものすごく邪魔になってしまう。

だからこそ、住み込みで、
そういうところを
ぶっ飛ばしていくという……。

そういうことを思い出して、
「早い話が、どれだけ自分を
 消せるかというのが、
 仕事のコツかなぁ?」
と、昨日、思ったんです。
三宅 台本は、
「こうなれば、いいなぁ」
というような下敷きですよね。

生放送をやると
「三宅さん、追いこむ状況を
 作るのが好きですよね」
と言われたりもするんですけど、
こちらとしては
「ふたりで、このことについて
 話したら、おもしろそうだなぁ」
というだけなんです。

そのほうが、
おもしろそうだというだけですし。

……なんらかの狙いがあったとしても、
自然の流れでそうならないと、
見ている側も感情移入ができませんし……

やらせと演出の違いって、ありますから。
糸井 リハーサルで
「こういうことを話してください」
というようなことを言われて、
そのとおりにやらせるような番組って、
しゃべっているディレクターは、
結果を知っていて
しゃべっているわけですよね。

できあがっちゃっていれば、
出演者もテレビを見る人も、
もう誰も驚きようがないわけで……
出ている人が謎を解いてくっていう
プロセスがないと、驚けないんです。

それなのに、ぜんぶを
段取ろうとする人が、けっこういますよね?
三宅 ええ、おかしいです。

まずそれは、タレントさんを
信用してないからそうなるんですよね。

いまのディレクターの中には、
「段取りが演出だ」
と思っているヤツも
いるところがあるんですね。
糸井 今日の最初の話のセックスに例えたら、
「わたくし、これから、右側の乳首を
 3秒ほど舐めさせていただきますので、
 そこで、おそらく何か感じられると思うので、
 まぁ、体をねじっていただいて……」
ということですよね。
三宅 「ちょっと、キャッとか、ウッとか、
 こう、あえぎ声を出していただいて。
 感じていただいたら、もっといいですねぇ」
糸井 (笑)そういうふうに
番組を作ってる人が、
いっぱいいるということですよね?
三宅 本質がなくて
カタチだけ上手になるというのは、
そういうところなんです。

大将なんかも、演出にこう言うんです。
「じゃあ、どうしろっていうんだ?
 オレは、どこでも好きなところから
 出ていってもらって、
 『沸かしてください』
 と言われたほうが、気がラクなんだ。
 結局は、おもしろくすればいいんだろう?」

だから、
そこの気持ちを、どうやってあたためるか、
ということになるわけで。
土屋 お笑いって、息だと思うんですよね。

当然、コンビとは合わせるわけだけど、
『27時間テレビ』の「かま騒ぎ」でも、
全体に共通した
「こうやるとおもしろくなりますよね?」
というのを、芸人さん側が、
息だけで伝えていく感じがあって……。

そこに、ニヤッとこちらの
制作側が息を合わせることが、
できるかできないか、
というところだと思うんです。

息のコミュニケーションを、
理解するかしないかというところを、
どうやって、テレビマンたちに
伝えていくのかという気がするんです。
糸井 「そこのところをちゃんと
 怒ることのできる三宅さん」とか
「自分のやりにくいことを考えては
 課していく鶴瓶さん」とか、
みんな、方法が、くそまじめですよね。

そういう人たちのほうが、
長持ちするだろうなぁ、と、
横で見ていて思います。
きっと、ずっと、遊んでいたいんでしょうね。
三宅 摸索しながらやっていくと、
人生が激しくなりますよね。
糸井 そうでしょうね。
  (次回に、つづきます)


今日のひとこと:

「台本は、あくまでも、
 こうなれば、いいなぁ、
 というような下敷きですよね。
 なんらかの狙いがあったとしても、
 自然の流れでそうならないと、
 見ている側も感情移入ができませんし、
 やらせと演出の違いってありますから。

 いまのディレクターの中には、
 段取りが演出だと思っているヤツも
 いるところがあるんですが、
 まずそれは、タレントさんを
 信用してないからそうなるんですよね。

 だけど、演者の気持ちを、
 どうやってあたためるか、
 それこそをわれわれは
 『演出』だと思っているんです」
             (三宅恵介)

※このコーナーへの感想をはじめ、
 テレビや、企画づくりについて思うことなどは、
 postman@1101.com
 ぜひ、こちらまで、件名を「テレビ」として
 お送りくださると、さいわいです。
 どのメールも、すべてじっくり拝読しますし、
 つい、おおぜいと分けあいたくなるような
 メールの感想などは、「おもしろ魂」連載中に
 ここで、ご紹介させていただくかもしれません。


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2004-09-17-FRI

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