糸井 |
いままで話していることって、
それぞれの芸人さんの
「人生」のことなんですよね。 |
三宅 |
ほんとうに、
結局は、それぞれの人の生きざまです。 |
糸井 |
いま、話しているような人というのは、
瞬間最大風速として、どのくらい売れたか、
なんていうところについては、一応、
みんな、経験をしてきている人たちですから。 |
三宅 |
そうですね。 |
糸井 |
みなさん、しあわせが、そういう
瞬間最大風速だけではないということは、
わかってるんですよね。
そして……土屋さんが出会った
芸人さんと言えば、
やっぱり、ダウンタウンだと思います。
いまは、ノリノリとも見えるし、
次へのステップとも
見えるような時期にいますけど。 |
土屋 |
次へのステップなのでしょうね。
松本は『ごっつええ感じ』が、
ああいうかたちでレギュラーが終わって、
単発の『ごっつ』スペシャルの
二時間ものをやったときに、
土曜日の七時九時だったかな……
この視聴率が、九%だったんです。
そのトラウマを、
ずっとひきずったままに見えます。
ぼくは、一七年ぐらいのつきあいのなかで、
もうずっと一緒にいるものだから、
ダウンタウンに、テレビが
どういうふうにこたえているのかが
気になっているんです。
「テレビで本気でお笑いをやる」
ということができないと思えば、
松本はDVDや映画でもやろうか、
というふうにならざるをえないわけですから。 |
糸井 |
土屋さんは、
ダウンタウンとは、
どういうふうに出会ったんですか? |
土屋 |
まだ、ダウンタウンが大阪で
『四時ですよーだ』
という番組をやっているときです。
花王名人劇場の新人賞を取ったのを
オンエアで見て
「こいつら、とんでもなくおもしろい」
と思いました。
それで、大阪の吉本に行って、
会わせてもらって
「東京、出てこいよ」と言って……。 |
糸井 |
そんなところから、土屋さんがやってたの? |
土屋 |
そうです、そうです。 |
糸井 |
うわぁ! |
土屋 |
最初に会ったのは、
和歌山でコンサートをやってる
ダウンタウンですからね。
関西で、ダウンタウンが
コンサートツアーをやってるわけですよ。
LPとか出してるわけですよね。
ステージの最初は、紙を張ってるところに、
シルエットでふたりが出てきて……
「キャーッ!」という声援のなかで、
ダーンと出てきてうたうみたいな、
そんなコンサートをやっている頃ですから。
それで東京に出てきて、
ちょうどフジで
『夢で逢えたら』が深夜ではじまって、
ぼくも『ガキの使い』とか、
その前の番組とかというかたちで
一緒に仕事をやって……。
「大阪の芸人はたいへんだなぁ。
大阪で一度売れてから、もう一回、
東京でゼロからリセットして
売れなきゃいけないから」
そういうことが言われる時代から、
一緒に時間を過ごしてきました。
松本は、また、
人見知りが激しいじゃないですか。
それで、ほんとに
ともだちがいないわけですよ。
今田くんたちも、
まだ出てきていない頃だから、
そのときは、松本とぼくは、
ほんとに一緒に暮らしている、
みたいな状態ですよね。
『夢逢い』が
何時に終わりますからって言うと、
ぼくは『夢逢い』のスタジオに行って、
スタジオの隅のテーブルに座ってるわけです。
終わったあとは
「じゃあ、今日はどこでごはんを食べる?」
みたいに……。 |
糸井 |
へぇー。 |
三宅 |
その頃かな?
一度、ぜんぜん売れてないときに、
スペシャル番組をやったんです。
ダウンタウンとか、ちびっ子ギャング、
ビシバシステム、そういう若い人たちで
コントをやっていたけど……
ダウンタウンは、中でも強烈でしたね。
森の妖精のコントとかをやっていたんです。
その頃は、まだ、ちびっ子ギャングのほうが
推されていたんだけど、
ダウンタウンって、こいつらはおもしろいなぁ、
と思っていました。 |
土屋 |
『ガキの使い』がはじまった当時、
ダウンタウンには
漫才のネタが八本ぐらいあって、
とにかくそれが見たいから、
それをやろうと言ってやって……。
それがなくなった後には、
新作を一本無理矢理作らせて……
いよいよ、もうありませんとなったら
「じゃあ、しゃべったらいいや」と、
『ガキの使い』が
フリートークの番組になっていったんです。
スタッフの中には、
若手だから、ということで、
とにかくダウンタウンに
若手らしいことをいろいろやらせよう、
とする人もいました。
でも、こいつらはそうじゃないだろうと。
刺し身で食べられるものを、
なにも煮たり焼いたりしなくてもいい……
しゃべっていておもしろいんだから、
とにかくしゃべっていればいいよ、
ということで、いまの
『ガキの使い』の原型ができたんですよね。
それぐらい、惚れこんで。 |
糸井 |
それは、『ガキの使い』が深夜の頃ですか? |
土屋 |
深夜一時四〇分の頃ですね。
そこでスタートして一五年なんです。 |
糸井 |
当時は、
まだ自信ありそうな感じでは、
いなかったですよね。 |
土屋 |
そうですね。
まだ、お客さんが、
ダウンタウンを知らない頃でしたから。
やっぱり、松本は、けっこうきつい
下ネタとかをやるでしょう?
だけどそのときに
「引かば引け!」
と言った浜田がえらいなと思ったんです。
それを言い続けることによって、
だんだん、引いていた客が、
寄ってくるわけです。
今の若手の笑いの連中の中には
「こういうことを言うと
引くからやめましょう」
なんて、楽屋裏で
聞いた風なこと言うやつもいるんだけど……。 |
三宅 |
ダウンタウンは、逆手にとるわけですね。 |
土屋 |
ええ。
浜田が「引かば引け!」と、
ステージの上で言い放ったんですよね。
そしたら、引いてた客が、
どんどんどんどんこう、前に来るわけです。
そうすると
「こんなことを言うのは
ダウンタウンだけだ」
ということになるわけで。
ダウンタウンの突出感っていうのは、
やっぱりそういう出かたで、
逃げずに、フリートークに
こだわったところなんじゃないかと思うんです。 |
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(次回に、つづきます) |