宮沢 |
ワクワクしたり、ドキドキしたりするものって、
それがあれば生きていけるじゃないですか。
ほかにいくら満たされてても、それが無いと
「俺どうしちゃったんだろう」みたいになる。
ぼくはひとりひとりに料理を作ることはできないけれど、
ぼくとかかわることによって、ちょっと元気になって、
「またあいつの話聞きてぇなぁ」とか、
「近くに歌いに来るんだったら
ちょっと見に行こうかな」
ぐらいなことができたら最高だな、って。
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糸井 |
「あんたに頼んだ!」って
宮沢くんは言われてるんだよ、もう。きっと。
頼むよ、って。
ただ、音楽って、バンドを動かすと
雇う人だとか運び賃だとか、
泊まってどうとかでこんだけお金がいります、
だから、お客さん何人入れなきゃなんないです、
みたいな話に必ずなる。
音楽のそのあたりをどうクリアするのかなってのは、
もっと考えたいところなんですよね。
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宮沢 |
近頃、ローリング・ストーンズも、
舞台にやっぱりお金かけてないですもん。
スティングもそうです。
今回のコンサートツアーでは、
ストリングスは全部現地調達です。
ロック界の最高峰の人たちだってそういう状況です。
じゃ、俺達どうすんだ、って。
ぼくは、その話とはちょっと関係ないんですけど、
今年はギターだけで
全都道府県回るっていうのをとにかくやって、
2012年日本ってこうだったんだ、っていうのを見ます。
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糸井 |
何ヵ所ぐらい?
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宮沢 |
全都道府県プラスいくつですから、
50いくつじゃないですかね。
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糸井 |
やったほうがいいね!
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宮沢 |
元気な姿を、見せる。
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糸井 |
自分のためにやったほうがいいね。
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宮沢 |
自分のためにもですけどね。
糸井さんとぼくの違うところっていうか、
糸井さんのすごいとこは、最前列にいるのに、
糸井さんの活動で“糸井重里”っていう名前は
もちろんぼくらは見るけれども、見えないっていうか。
糸井さんにかかわってたり賛同してる人たちが行って、
ほんと一番前に行ってるのに、
糸井さんの姿がうっすら後ろにいるのがすごい。
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糸井 |
ぼくは、やりたいことがやりたいだけで、
自分じゃなくてもいいと
思ってるからじゃないですかね。
やりたいことがやりたいんです。
あと、ま、特に被災地は、
主役お前らだぞって、
意地悪な意味でも、言わなきゃね。
ぼくがいっくら頑張ってもダメなんです。
ただ、出なきゃなんないときの
自分の部分ってのは出さなきゃなんないし。
なかなか、加減は難しいですよね。
それも文体でしょうね。
軽やかな文体で描けば、
おなじことでも辛そうにはなんないですよね。
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宮沢 |
文体としては、
これだけ苦労して俺はここまで来た、
っていうストーリーなんて
いくらでも書けるわけですから。
ぼくは、結構悲観的な人間なんですよ。
だから、正月に地震が起きれば、
「これはメッセージだ」と思っちゃうし
「忘れるなよ」って言ってるんだろうなって
捉えちゃうんですよ。
でも、俺はそれでいいと思ってる。
ある意味物理的な惰性があるのと一緒で、
我々のこの営みは
「もう今止めてもその惰性で
線路を越えて落ちちゃうよ」
っていうとこに来てるって思ってるんですよ。
でも、そこをちょっと頑張って燃えてるぞ、
乗り越えようとしてるぞ、ということをテーマにして。
「あいつなんか鼻息荒いし、年も取ったなぁ」
なんて言われながら、バタバタしている。
頑張ろうっていうことなんですけど、
ひと言で言うと。
糸井さんはまたぼくとは
まったく全然違うタイプですよね。
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糸井 |
ぼくとはまた違うけれど、
宮沢くんのその気持ちは分かります。
自分は何を大事にするかな、っていうのを
みんなが考えればいいだけなんじゃないか、
誰もお前に文句言わないよ、ってぼくは思ってる。
だから、ぼくはぼくでやるし、宮沢くんにも、
「おお元気でやれそうだ。ああよかったよかった」。
そういうことなんです。
最後に「元気にやらないです」って終わったら、
それはちょっと勘弁してくれって思うけれど、
だけど、何を思ってても、
「元気にやれるんです」っていう結論が出るってことは、
何かジャンプしてるんですよね。心で。
そのジャンプが人間てものだと思うんだ。
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宮沢 |
そうですね。
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糸井 |
こんなに話して結論は
「元気でやる」かい?! っていうのは、
ほんとはすごいジャンプがあるんだけど、
ロジックじゃないところに人間っているんでね。
それは歌ですよね。
で、やっぱり、人が機嫌がいいっていうのは、
いちばん、いいですよね。
それの手伝いをしたい。
自分もそういうところの人だからね。
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宮沢 |
ぼく、世界で2曲、歌詞が好きな曲があるんです。
1曲は、ジョン・レノンの“イマジン”です。
想像すればいいだけだから、「簡単じゃん」って。
「想像すればいいんだ」って、
「みんな未来はこうなるんだよ」って。
「こうなりたいよね、って思えば、
みんなでフワッと行くかもよ」っていう。
それはロックの究極のメッセージなので。
もう1曲は、ブラジルの曲で、
日本語のタイトル言うと、
“世界の全てが君のようだったら”
というアントニオ・カルロス・ジョビンの詩です。
「世界の全ての人が君のようだったら、
この世界はなんて美しいんだろう」っていう
ベタベタのラブソングなんだけど、
すごいメッセージだと思って。
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糸井 |
いいね。
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宮沢 |
自分の愛する人のようにみんながなってくれたら。
ほんと、そうだなって思う。
だって、一人一人できることなんか
もうほとんどないと言ってもいいし、
一人一人がフワッと、
なんでもない人が幸せそうにしてるっていうのが
いちばんいいと思う。
そうなるには一人一人が元気だったり、
夢があってワクワクしてたりドキドキしてたり、
願いがあったり、っていうことなんじゃないかなと
ぼくは思うんです。 |
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(おわります) |