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(着替えがおわり、ふだん着の
Tシャツ、ジーンズ姿のみゆきさん登場。) |
糸井 |
あっ、ロック関係のかた(笑)!
さっきまで画廊のママみたいだったのに。 |
中島 |
言ったとおりでしょう、
こんなんなっちゃうのよ。 |
糸井 |
よくわかりました。 |
中島 |
別人のように。
そんなこんなで、よろしくお願いします。 |
糸井 |
よろしくお願いします。 |
中島 |
さあ、どうしましょうね。 |
── |
前回の対談は3年前になります。
すごく素敵な対談でした。
その節はありがとうございました。 |
中島 |
ありがとうございました。 |
── |
今回、特に決まったテーマはないんですが、
最近糸井さんがすごく
「歌」に興味を持っている、というところが、
入口かなと思ってるんです。 |
中島 |
すごくいっぱい仕事して
いらっしゃるのよね。 |
糸井 |
そんなこと(笑)。 |
中島 |
ラジオとか。 |
糸井 |
ああ、ラジオね。 |
中島 |
働くねぇ! |
糸井 |
あれはね、「歌」をやりたいから
引き受けちゃったんですよ。 |
中島 |
でも、定期的に
やらなきゃならないわけでしょ。 |
糸井 |
一週間にいっぺんです。
でもいつやめるかは、
最初から決めてあるんです。 |
中島 |
定期的な仕事を引き受けるって
すごいことよ。 |
糸井 |
いや、大変だよ。
ある曜日に必ずそこに
いなきゃいけないって、
色々不都合があるねえ。 |
中島 |
人間の身体、1週間単位で
必ずしも動いていないから。
「今日じゃないのよね」
みたいなときってあるでしょう。
でも、その日にやんなきゃいけない。 |
糸井 |
「中島みゆきのオールナイトニッポン」
だったわけだよね。 |
中島 |
てなわけですよね、
ようやったなと思いますわ。 |
糸井 |
あれって、どのくらい? |
中島 |
8年ぐらいでしたっけね(*)。
*「中島みゆきのオールナイトニッポン」は
1979年4月から1987年3月までの8年間、
毎週月曜日の深夜1時から3時に、
放送されていました。 |
糸井 |
てことは、あの曜日の
あの時間を空けておいて、
いろいろなことを
していたということですよね。 |
中島 |
いや、コンサートだった日もありますよ。
ツアーで行って、その夜、
どこか地方の局に入ったりとか。
むちゃくちゃでしたね。 |
糸井 |
ただ笑ってりゃ
いいってもんじゃないですよね、
いくらなんでもね。
とにかくこの人は笑ってるなっていう、
そういう印象はありましたけど(笑)。 |
中島 |
私も憶えていることは
それだけです、はい(笑)。
今、あの番組を聴いていた人から、
「あれ、面白かったですよね」
「ああいうふうにまた、
喋ってみてください」
って言われても、いや、私は
ハガキを読んでアハハって
言っていただけなので、ハガキがないと、
自分でなんか言って笑かす芸はないです、と。
でもそう思われちゃうの。 |
糸井 |
8年も、ほんとによくやったねえ。 |
中島 |
ねえ! 生放送っていうのが
大基本でしたからね。 |
糸井 |
そこで鍛えられたものって
なにかあるのかしら? |
中島 |
3分感覚。 |
糸井 |
えっ、3分? |
中島 |
コマーシャルがあって、曲が入って、
間でハガキを読むという間(ま)って
だいたい3分なんですよね。
3分でどのぐらい読めるのか、
残り1分といった時に
何行省けば1分になるのかなみたいな、
そういう時間感覚。
今はもうだいぶ忘れましたけどね。 |
糸井 |
ぼくがラーメンを作るときとか、
みゆきさんを呼べばいいんだ(笑)。 |
中島 |
ハガキがあるとできますから、
1枚書いといてください(笑)。 |
糸井 |
ハガキの長さにかかわらず、
なんとなくわかるんだ? |
中島 |
長さというか文字数で時間を計ってるんです。
この文字数なら2分半とかね。
構成作家の人が目の前にいて時計見ながら、
時間がないって時にはササッと
文字を消してくれるんだけど、
それでも後ろが危うくなってきた時は
「ええい1行飛ばせ!」みたいなことをね。
そういう時間感覚かなあ、
ラジオで身に付いたのは。
別に何の役にも立たないですけどね、
あはははは(笑)。 |
糸井 |
だからラーメンを作るとき
呼んであげるって(笑)。
中島みゆきという人が
道具屋さんに置いてあったら、
「これ買って帰ったら
ラーメン作る時に
いいんじゃない?!」って(笑)。 |
中島 |
そうよね、ひとつあってもいいわよね!
砂時計みたいなもんですから。 |
糸井 |
ちょっと大きいけど(笑)。 |
中島 |
かさばるよー。
金のかかる砂時計だから。
あはははは(笑)。 |
── |
おふたりは、世間で言う
「手に職」っていう職業とは違うわけですよね。
つぶしがきくっていう。 |
中島 |
つぶし、きかない。
食糧危機になったら、
いちばん最初に死んでしまいそう(笑)。 |
糸井 |
いや、歌を歌っているのは
手に職なんじゃないの? |
中島 |
ならないんじゃない?
生産的じゃないですもん。 |
糸井 |
励まし合ったりするとき、いいよ。
地下牢に閉じ込められてさ、56人ぐらいが。 |
中島 |
地下牢で、日が入らなくて真っ暗けで、
何日経ったかわからないとき、
3分お任せください! あはははは。 |
糸井 |
まず3分!(笑)
で、みんなが、「もうダメだ!」とか、
「寝るんじゃない!」とか言っているときに、
急に歌い出すのよ。
「♪まわる〜まわる〜」とか。 |
中島 |
ボコボコにされそうじゃない(笑)。 |
糸井 |
最初は「なんだ、こんなときに!」
って言うんだけど、
だんだんもうひとりのやつが、
「♪時代はまわる〜」とか歌い出すわけよ。
それでみんなで「やっぱり生きていこう!」。
そういうドラマ、いっぱいあるじゃない。
収容所みたいなところで
レコードをかける話とかもあるし。 |
中島 |
あっ、でも歌詞には責任持てないな。
憶えてないもんなあ。
(つづきます) |