ダ・ヴィンチ×ほぼ日刊イトイ新聞 共同企画 中島みゆきさんとの、遊び時間。 『真夜中の動物園』をめぐる120分。
その2 3分間ならお任せください。
  (着替えがおわり、ふだん着の
 Tシャツ、ジーンズ姿のみゆきさん登場。)

糸井 あっ、ロック関係のかた(笑)!
さっきまで画廊のママみたいだったのに。
中島 言ったとおりでしょう、
こんなんなっちゃうのよ。
糸井 よくわかりました。
中島 別人のように。
そんなこんなで、よろしくお願いします。
糸井 よろしくお願いします。
中島 さあ、どうしましょうね。
── 前回の対談は3年前になります。
すごく素敵な対談でした。
その節はありがとうございました。
中島 ありがとうございました。
── 今回、特に決まったテーマはないんですが、
最近糸井さんがすごく
「歌」に興味を持っている、というところが、
入口かなと思ってるんです。
中島 すごくいっぱい仕事して
いらっしゃるのよね。
糸井 そんなこと(笑)。
中島 ラジオとか。
糸井 ああ、ラジオね。
中島 働くねぇ!
糸井 あれはね、「歌」をやりたいから
引き受けちゃったんですよ。
中島 でも、定期的に
やらなきゃならないわけでしょ。
糸井 一週間にいっぺんです。
でもいつやめるかは、
最初から決めてあるんです。
中島 定期的な仕事を引き受けるって
すごいことよ。
糸井 いや、大変だよ。
ある曜日に必ずそこに
いなきゃいけないって、
色々不都合があるねえ。
中島 人間の身体、1週間単位で
必ずしも動いていないから。
「今日じゃないのよね」
みたいなときってあるでしょう。
でも、その日にやんなきゃいけない。
糸井 「中島みゆきのオールナイトニッポン」
だったわけだよね。
中島 てなわけですよね、
ようやったなと思いますわ。
糸井 あれって、どのくらい?
中島 8年ぐらいでしたっけね(*)。

*「中島みゆきのオールナイトニッポン」は
 1979年4月から1987年3月までの8年間、
 毎週月曜日の深夜1時から3時に、
 放送されていました。

糸井 てことは、あの曜日の
あの時間を空けておいて、
いろいろなことを
していたということですよね。
中島 いや、コンサートだった日もありますよ。
ツアーで行って、その夜、
どこか地方の局に入ったりとか。
むちゃくちゃでしたね。
糸井 ただ笑ってりゃ
いいってもんじゃないですよね、
いくらなんでもね。
とにかくこの人は笑ってるなっていう、
そういう印象はありましたけど(笑)。
中島 私も憶えていることは
それだけです、はい(笑)。
今、あの番組を聴いていた人から、
「あれ、面白かったですよね」
「ああいうふうにまた、
 喋ってみてください」
って言われても、いや、私は
ハガキを読んでアハハって
言っていただけなので、ハガキがないと、
自分でなんか言って笑かす芸はないです、と。
でもそう思われちゃうの。
糸井 8年も、ほんとによくやったねえ。
中島 ねえ! 生放送っていうのが
大基本でしたからね。
糸井 そこで鍛えられたものって
なにかあるのかしら?
中島 3分感覚。
糸井 えっ、3分?
中島 コマーシャルがあって、曲が入って、
間でハガキを読むという間(ま)って
だいたい3分なんですよね。
3分でどのぐらい読めるのか、
残り1分といった時に
何行省けば1分になるのかなみたいな、
そういう時間感覚。
今はもうだいぶ忘れましたけどね。
糸井 ぼくがラーメンを作るときとか、
みゆきさんを呼べばいいんだ(笑)。
中島 ハガキがあるとできますから、
1枚書いといてください(笑)。
糸井 ハガキの長さにかかわらず、
なんとなくわかるんだ?
中島 長さというか文字数で時間を計ってるんです。
この文字数なら2分半とかね。
構成作家の人が目の前にいて時計見ながら、
時間がないって時にはササッと
文字を消してくれるんだけど、
それでも後ろが危うくなってきた時は
「ええい1行飛ばせ!」みたいなことをね。
そういう時間感覚かなあ、
ラジオで身に付いたのは。
別に何の役にも立たないですけどね、
あはははは(笑)。
糸井 だからラーメンを作るとき
呼んであげるって(笑)。
中島みゆきという人が
道具屋さんに置いてあったら、
「これ買って帰ったら
 ラーメン作る時に
 いいんじゃない?!」って(笑)。
中島 そうよね、ひとつあってもいいわよね!
砂時計みたいなもんですから。
糸井 ちょっと大きいけど(笑)。
中島 かさばるよー。
金のかかる砂時計だから。
あはははは(笑)。
── おふたりは、世間で言う
「手に職」っていう職業とは違うわけですよね。
つぶしがきくっていう。
中島 つぶし、きかない。
食糧危機になったら、
いちばん最初に死んでしまいそう(笑)。
糸井 いや、歌を歌っているのは
手に職なんじゃないの?
中島 ならないんじゃない?
生産的じゃないですもん。
糸井 励まし合ったりするとき、いいよ。
地下牢に閉じ込められてさ、56人ぐらいが。
中島 地下牢で、日が入らなくて真っ暗けで、
何日経ったかわからないとき、
3分お任せください! あはははは。
糸井 まず3分!(笑)
で、みんなが、「もうダメだ!」とか、
「寝るんじゃない!」とか言っているときに、
急に歌い出すのよ。
「♪まわる〜まわる〜」とか。
中島 ボコボコにされそうじゃない(笑)。
糸井 最初は「なんだ、こんなときに!」
って言うんだけど、
だんだんもうひとりのやつが、
「♪時代はまわる〜」とか歌い出すわけよ。
それでみんなで「やっぱり生きていこう!」。
そういうドラマ、いっぱいあるじゃない。
収容所みたいなところで
レコードをかける話とかもあるし。
中島 あっ、でも歌詞には責任持てないな。
憶えてないもんなあ。

(つづきます)
2010-10-14-THU
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