糸井 |
ぼく、いつでも歌は好きなんですけど、
みんなが言葉の意味とか機能とかを、
強く言い過ぎるようになっちゃって。
世の中全体が、単純に言うと
せちがらくなってきて、
「意味はないんだけどいいな」とか、
「言っていることはしょうもないんだけど
感心したなー」とか、
そういうものが、
ないことにされ始めたんですよ。
それに対して歌っていうのはいつでも、
なんであるんだかわからないけれども、
いいじゃない、っていうところを、
みんなで手を握り合って確かめる、
みたいなところがあって。
そっち側の空気を送りたいなっていう気分が、
自分に対してもあって。
理屈っぽい人とやりとりしていたりすると、
理屈で勝たなきゃならないっていうときが
あったりするんだけど、
そんなことをしていても不毛ですよね。
その答えがわかるまでに、
67年ぐらいかかっていたりね。 |
中島 |
あはははは。 |
糸井 |
そんなことを一所懸命やっているんだったら、
今あるひとつのほほえみの中に、
ふたりで歩んでいったほうがいい、
みたいなところがあるじゃないですか。
そういうのを、
ちょっと余計に言ってみたいなと思っていて。
「面白いよね、歌は」、
「この遊び方もできるよ」
ってことをやりたいなと。
で、この人たち(「ダ・ヴィンチ」&
「ほぼ日」のめんめん)は、
カラオケで中島みゆきを歌う会とかが
どうもあるらしいんだけど、
なんで俺、呼んでもらえないんだろう(笑)。 |
中島 |
糸井さん、カラオケで歌います? |
糸井 |
歌いますよ。
ぼくは「かもめはかもめ」とか
「窓ガラス」ですね。
「窓ガラス」なんか、も、ヤよね(笑)。 |
中島 |
「窓ガラス」のギターは
アルフィーですよ。 |
糸井 |
ああ! あの、
♪チャララチャッチャッチャチャチャ〜、
軽くて切ない。 |
中島 |
スタジオミュージシャンを
やってくれたんです。 |
糸井 |
坂本(龍一)くんもやっていますよね。 |
中島 |
そうなんです、信じられないような。 |
糸井 |
坂本くんが、
「中島みゆきはスタジオで
本当に泣くんだぜ」って
言ったのを覚えてる。 |
中島 |
あれっ、そうでしたっけ? |
糸井 |
「ほんとに泣くよ、あれは。
ああいうことがありうるんだと思うとさ」
って。
あの人、もともと勉強していた人だから、
そんなことありえないと
思ったらしいんだよね。 |
中島 |
ありゃ。
そんなふうにして聴いていらしたのね。 |
糸井 |
そういう歌の遊び方みたいなこと、
自分が今まで楽しんできたのを
小分けしてバラまこうと思って、
ラジオも引き受けたというか。
みゆきさんもそうだし、
あとiPod以降なんですけど、
イヤホンで聴いたら、
今まではそんなでもないと思っていた歌が
よく聴こえたりすることがでてきたんですよ。
特に歌謡曲がね。
それでチケット取って
前川清さんのコンサートに
久しぶりに行ったんです。
そしたら静かにしてたのに
見つかっちゃって。 |
中島 |
見つかっちゃったの(笑)。 |
糸井 |
うん(笑)。
それで終演後に楽屋へ挨拶に行ったら
「嬉しいなあ!」と言ってもらえて。
久しぶりに会った前川さんは、
相変わらずやっぱりいいんですよ。
でも彼は歌が大っ嫌いなんですって。 |
中島 |
へっ?! |
糸井 |
「ぼくは大嫌いなんです。
演歌も大嫌いなんです」とかって。
なのに人は彼の歌を聴いて、
「いい」と言うわけ。
そこにも歌の秘密みたいなのがあって、
テーマとか内容を超えて、
なにかとなにかが通じ合っているんですよね。
そういうようなことをみんなで
味わいっこして遊ぼうと思って、
今は主に、訳のわからない歌のよさを
ばらまきたいなと思っているんです。
それが自分を楽にすることだからね、
ぼくのいい加減さとかを。
だから今日のお話なんかも、
みゆきさんの新しいアルバムが出た話とか、
「おお、歌の話だ」と思うと、
嬉しくなっちゃう。 |
中島 |
よかった。つらくなくってよかった(笑)。 |
糸井 |
いや、あとでまた言いますけど、
面白いですよね。 |
── |
今言ってください(笑)。 |
中島 |
取材が終わってから言いますって(笑)? |
── |
そんな。 |
中島 |
で、言うのを忘れて帰っちゃったりして。 |
糸井 |
合間、合間にさ、寸鉄のように、
言うかもしれませんよ。
言わないかもしれないし(笑)。 |
中島 |
さあ、探せるかな。ははははは。
(つづきます) |