糸井 |
『真夜中の動物園』、ああ、
いいアルバムだなあ、本当に。
どれが核になったんですか? |
中島 |
うーん‥‥。
たぶんお聞きになる方で
どこが肝というのは
違うかもしれないですね。 |
糸井 |
普通に考える考え方と
そうじゃない考え方とあって、
普通に考えるとラストの歌
(「負けんもんね」)なんですよね。
ご本人はいかがですか? |
中島 |
ナイショ。言わないでおきましょう(笑)。 |
糸井 |
内緒ですか、ああ。
混じっているんですよね、
いろんなふうにね。 |
中島 |
ね。 |
── |
みゆきさん、同時期に作ったものじゃなくて
ある程度長いスパンであったものから
集めたとさっきおっしゃいましたけど。 |
中島 |
書いたときには、
自分に取り込み切れていないで、
充電中で置いておいたのがあるんですよ。
「あ、そろそろ充電できたかな」
っていうので、入れると。
熟成待ちをしただけですね。 |
糸井 |
そのときには直すんですか、今なりに。 |
中島 |
語尾ぐらいのことは、ちょろっとね。 |
糸井 |
作ったときに、すでにあとで
直すかもしれないなと思って
作るときもあるんですか?
暫定案みたいに。 |
中島 |
完パケにしないで
置いているときはありますね、うん。
ここから先へ進まない、
そのうち進むでしょうって、
充電しとこうみたいなのが、はい。
糸井さんもそういうのはあるんですか? |
糸井 |
あります、あります。
本職ではないですけど、ただ好きで考えたり、
いつかなにかに使うかもしれないなっていう
アイデアは、手帳に書いて、
書きっぱなしにしておいたり、
あるいは自分にメールを入れといたり、
っていうのはあって。
「あのときのあれ、今だったらいいのにな」
と思って出しても、時期が来ないと、
やっぱり、まだダメとか、
あるいはずーっと経ってからスッと使えたり。 |
中島 |
ありますね。 |
糸井 |
なんですかね、あれ。
商売じゃなく仕事してるときですよね。 |
中島 |
別に、売る勘定で、
電卓叩いて考えているわけじゃなくて、
かいわれ大根を今日食卓に出すか、
植えちゃって待つかっていうぐらいの
ことなんですよね。
別にそれがお金になるからとか、
ならないからとかっていうんじゃなくて。 |
糸井 |
機能しなくても、
考えたいから考えているっていう。
“お役”がないんですよ。
見つかっちゃったものを、
ぼくは見たぞと言ってメモしとくみたいな。 |
中島 |
ふんふん。 |
糸井 |
自分でも、あとでわかったっていうことって
あるんじゃないですか? |
中島 |
ありますね。 |
糸井 |
ワンアイデアを出したときの、
ものすごい気持ちよさ。
アイデアのかたちが、まだないけれども、
「なんか見えた気がする、光が」
って言って、今度は
たたみかけるようなたとえで、
壁面を作っていくわけでしょう。
すると、壁面を作ったことで
ブリリアントカットみたいなものができて、
最初のアイデアがかたちづくられると、
「ああ、こんなに面白かったんだ」。
それは自分にとっても発見になる。 |
中島 |
ふふふ。
「あ、明るくなった!」っていうときに、
他のことしなきゃなんないときって
困りますよね。 |
糸井 |
そうかー。そうですよね、
社会との接点がありますしね。 |
中島 |
「紙と鉛筆!」って思ったときに、
コンサートで歌っていたら、ダメでしょう。
ちょっとブレイクして待っとってねって
わけにいかないでしょ。
ありません? そんなの。
アッと思ったとき、
新幹線に乗る瞬間だったりなんかすると、
乗りこんじゃったら
「忘れちゃったぁ‥‥」みたいなこととか。 |
糸井 |
言葉にして残せるものと、
残せないものと、
両方混じっていますからね。
メモを書いたけど、
俺、こうじゃないんだよって思うときもある。
そのときには、
“こうじゃないマーク”かなにか
付けておくべきでしょうね。 |
中島 |
そうですね、はい。 |
糸井 |
「もっといいことなんだよ、
俺が考えたのは」って。
でも、そういう人だから
やりっぱなしになるんだろうな。 |
中島 |
なるんですね。
散らかる、散らかる。 |
糸井 |
やがて、似たようなことしか
言ってないなってことも気付くんですよ。
このアルバムもそうなんだけど、
あんまりいろんなことは言ってないですよね。 |
中島 |
言いようがないですもん、はい。
おんなじことを言ってる気がする。 |
糸井 |
そうですよね。
ひらめきの種類はいっぱいなんだけど。 |
中島 |
人間、変わったわけじゃないですからね。 |
糸井 |
土壌みたいなものは一緒。
根っこが一緒か。
チカチカ、チカチカ、
いろんな花が咲くけどね。
‥‥でもね、そんなこと言っててもね、
ちょっと本当にもう、
一緒に話をしてるのが
失礼だったって今思います。
ぼくはねー、
もうちょっといい加減(笑)。 |
中島 |
なんすか、なんすか?
そうおっしゃるなら、うちだって、もう、
いい加減のへ〜らへら、ですよ(笑)。 |
糸井 |
おそれ多くなっちゃって、今。
同じに語ったところが。 |
中島 |
深く考えない魚座ですから。 |
糸井 |
そうかなぁ。
(つづきます) |