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─── |
(写真をみながら)ああ‥‥集中してますねえ。 |
モモ子 |
うん。
もう、やるしかないから(笑)。 |
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─── |
ふだん描いている絵もこういうタッチで? |
モモ子 |
そうですね。
「呪われそう」
って言われることもあります(笑)。 |
─── |
リトグラフは
いつもとずいぶんちがうものですか。 |
モモ子 |
いつも下書きを絶対しないで
描く手法なんですよ。
「間違いというものはない」という考えで。 |
松井 |
うん。 |
モモ子 |
どういう絵になっても、それはそれ、
続けて描いて終らせるっていう。
なのでそういう意味でリトグラフは
つながる部分があるように思いました。
リトグラフも1回インクを落としたら、
すぐ染み込んで消せないので。 |
松井 |
向いていたのかもしれないよね。 |
モモ子 |
そうですね。 |
─── |
なるほど。
じゃあこれも、石灰石の上にいきなりインクで? |
モモ子 |
そう、いきなり描きます。
濃く置いたところが後で薬品を塗ると
深くえぐられて濃くなる。 |
松井 |
薬品は、酸だよね。 |
モモ子 |
酸で食わせて、凹凸を作って、
そこに黒インクをのせて刷る。 |
─── |
インクの部分が腐食していくわけですね? |
モモ子 |
そうですね、
えぐられるとインクがのりやすくなる
という意味だと思います。
でも、刷り上がりでどう出るかは、
やったことないのでぜんぜんわからない。 |
松井 |
試し刷りを1回しますよね。 |
モモ子 |
うん。 |
─── |
最初の試し刷りは緊張しそうですね。 |
モモ子 |
ひいーって思ってた。
でも、その顔色を読まれたら負けだと思って、
「ふぅーむ」って(笑)。
ほんとはもう、胃はひきつるし、
ドキドキドキドキして、
もう、どうしよう、
ヤバい、ほんとにヤバい!
だってこれ、3日かけて職人さんが
用意してくれたんですよ? |
松井 |
そうだよねー。 |
─── |
それで‥‥最初の試し刷りは? |
モモ子 |
がくぜんとしました。 |
─── |
ああ−、出なかった。 |
モモ子 |
思ってた線が出てない。 |
─── |
それは、直せるものなんですか? |
モモ子 |
1回だけ修正できるんです。
でも、もう薄い色とかは出せないですね。
滲んだような色とかはできなくて、
あとは真っ黒で描いてくしかない。 |
松井 |
うん。 |
モモ子 |
これを、どうやって、よくするか?
っていうので、一瞬ポカーンとなりました。 |
─── |
で、どうしたんですか? |
モモ子 |
ここまできたらもう、
小細工してもらちがあかない。
だから太い線で、ぐわーって描き足しました。
ものすごくドキドキしながら。
でも、ここは日本人、
なめられちゃいかんと思って。 |
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一同 |
(笑) |
モモ子 |
ここはもう、男気見せないと! みたいな。
一発で、日本人のこの筆さばきを! |
─── |
一発修正。 |
モモ子 |
行くぜ! と。 |
松井 |
そうだったんだ(笑)。 |
モモ子 |
その修正は石を動かせないので、
石の上に乗っかってやるんですよ。
たしかわたしのカメラで撮った写真が‥‥
ああ、ありました。 |
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※安藤モモ子さんのカメラで撮影 |
モモ子 |
ここで描くのは、けっこう大変で。 |
松井 |
しかもこれ、
周囲に触っちゃだめなんでしょ? |
モモ子 |
手を付けれないんですよ、下に。
バランス取れないじゃないですか。
どうすりゃいいの?! |
─── |
はははは。 |
モモ子 |
だから震えるんですよ、手が。
細密なことはできない。 |
─── |
かなり不自然な体勢ですよね。 |
モモ子 |
鉄の棒の上で膝とすねに
重心をかけるんで、痛いんですよ。
何回も頭をぶつけたし。
最後の方は、体中が痛かったです。 |
松井 |
でも、慣れてきてたよね。 |
モモ子 |
うん、めきめき腕が上がった。 |
─── |
めきめき(笑)。 |
モモ子 |
加減がわかってくると、
もう、おもしろくておもしろくて! |
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(つづきます) |
2010-04-27-TUE |