♯5 パトリス
松井
夜になると、何時くらいかな? 6時とか?
みんな帰っちゃうんだよね。
モモ子
もう早いですね、帰りは。
 
───
朝が早いんですか。
モモ子
そう。
だから夜はわりと孤独で。
松井
僕はその様子をみてるじゃないですか。
モモちゃんがこう、一所懸命に描いてるのを。
───
写真でも伝わってきます。
モモ子
夜はさみしいですよ、人がいなくなると。
松井
でもほら、パトリスが(笑)。
モモ子
ああ、ちょっかい出しにくる(笑)。
───
パトリス?
モモ子
わたしが撮った写真が‥‥。
あ、このいちばん右のおじさん。
 

※安藤モモ子さんのカメラで撮影
───
このかたも職人さんですか?
モモ子
パトリスはここのオーナーなんです。
───
あ、オーナーなんですね。
モモ子
パトリス(笑)、すっごいかわいい。
夜にちょこちょこやってきて、
わたしのカメラで勝手に撮るんです。
これとか。
 

※安藤モモ子さんのカメラで撮影
───
職人さんたちから作品への
感想みたいなものはありましたか?
モモ子
ありましたよ。
でも、3枚目くらいでやっとです。
この人たちの目は、いちばん厳しいから。
───
いっぱいみてますからね。
モモ子
みんな何十年選手ですから。
すっごい人から若造まで、
いっぱいみてるんですよね。
日本からわたしみたいなのが来て、
最初はすっごい冷静な目でみられてた気がします。
松井
そうだったんだ。
モモ子
で、ようやく最後のほうになって、
「グッド!」とか言われて(笑)。
松井
そうか、最後のほうでやっと‥‥。
でも、そうかもしれない。
ぼくは2回お邪魔したんだけど、
1日目はだれもぼくの顔を見ないんですよ。
「なんだこいつはー」みたいな感じで。
でも、2日目のときは、
ね? 向うから話しかけてきたりしたよね?
モモ子
うん。
松井
それは単純に、
ぼくじゃなくてモモちゃんが
受け入れられたからだと思うんですよ。
モモ子
‥‥でも、時間かかった。
松井
そうかあ、あれは時間がかかったんだ。
モモ子
うん。
最後は、よかったな‥‥。
帰る日のフライト直前まで作業してたんですけど、
いきなりみんな揃ってて、
シャンパンとケーキを持って、
「お疲れさま!」みたいな。
そんとき、みんな笑顔で。
───
いいですねえ‥‥。
モモ子
認めてもらえたっていうのがうれしくて、
超泣きそうになって。
でもここで泣いたら、
日本人はすぐ泣くとか言われそうで。
───
なめられちゃいかん(笑)。
モモ子
そう(笑)。
───
ほんとうに、
めくるめく1週間でしたね。
モモ子
もう詰め込み過ぎですよ。
パリに10年住んだくらいの気持ちになった。
変わった人にも会いまくったし。
松井
いろんな人がふらっとやってくるからね。
モモ子
石版、おもしろかったなあ‥‥。
わたし、刷り上がりよりも
石版を残したいって思っちゃいました。
松井
思っちゃうよね。
でも、モモちゃんの石版は削られて、
また次の人のために準備されていく。
モモ子
うん。
松井
ほんと、側でみていておもしろかったです。
───
そうですか。
松井
ぼくがいたのは2日だけだったけど、
いいときに目撃してたような気がする。
モモ子
そう、いいときに松井さんがいてくれたと思う。
───
このたくさんの写真がそれを物語ってますよね。
松井
あの、ぼくは一応フランス語がわかるんですけど、
職人さんたちがモモちゃんのことをね、
「こんなバンビちゃんがよくやってるよなあ」
ってことを言ってましたよ。
モモ子
えー(笑)。
そうなんだ、ぜんぜんわかんなかった。
松井
言ってた。
モモ子
そうかー。
───
‥‥ありがとうございます。
何度も言いますが、そのまま映画になりそうな。
モモ子
(笑)
───
たぶんスライドショーがメインの
コンテンツになると思うんですが、
おふたりのお話も、ぜひ添えさせていただいて。
モモ子
そうですか、変な話ですみません。
───
いえいえ、では、あらためてご連絡を。
松井
わかりました。
きょうはありがとうございました。
モモ子
ありがとうございました。
───
こちらこそ、ありがとうございました。
 
 
(おわります)
2010-04-29-THU

 

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