ほぼ日 |
森川さん、こんにちは。
『テロメアの帽子』
『ヌカカの結婚』の2冊が、
書籍から、iPhone、iPad用の
電子書籍になって、
とても評判がいいとききました。 |
森川 |
どうもありがとうございます。 |
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ほぼ日 |
おどろいたのは、書籍とくらべたときの
違和感のなさというか。 |
森川 |
iPhoneとかiPad自体に
物(ブツ)感がありますものね。
パソコンのモニターの前で
見てるのとも違って、
1つのデバイスとして完結してる。
そのモノ感が助けてくれたと思います。
印刷物と同じような感じがあるのも、
マウスでクリックするのとは違って、
「手でめくる」「手に持つ」でしょう。
そういう感覚は、パソコンはもう
太刀打ちできないと思います。 |
ほぼ日 |
それでこんどは、
書き下ろしっていうのかな、
新作を、iPhoneとiPad用の
アプリとして、発売されるんですね。
そのうちの数編を
「ほぼ日」で立ち読み版として
掲載させていただくことになりました。
ありがとうございます! |
森川 |
いえいえ、おおぜいの人に
読んでいただけるかもしれない
機会ができて、とてもうれしいです。 |
ほぼ日 |
これから週1回の連載が
はじまるんですけど、
その前に森川さんのことと
このアプリの内容について
お聞きしておきたいと思って。
あの、森川さんって、
研究所にいるわけではないんだけれど、
在野の学者、みたいな印象があります。
しかも、絵を描く、文系的なところと、
こうして科学をつきつめていく
理系なところが同時にあるというか。 |
森川 |
人ってわりと、
「私は理科系です」とか、
「私は文科系です」とか言うけれど、
僕の場合はまったく
同じぐらいのウェイトなんです。
学生時代もね、高校は理系の進学コースで
大学は物理系に進もうとおもっていたのに、
急ブレーキをかけるように
芸術系に行ったんです。
油絵の学科なんだけれど、
受験で描いたデッサン、
人生4枚目でしたもん。 |
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ほぼ日 |
えっ‥‥? |
森川 |
練りゴムっていう専用の消しゴムとか
木炭とか、絵の道具まったく知らずに
ふつうの消しゴムとエンピツで受験しました。
かろうじて受かったからよかったけど、
今考えるとゾッとします。
もうちょっと準備しようよって。 |
ほぼ日 |
なんでそんなふうに思ったんですか、急に?
理系止めて芸術系に行こうって? |
森川 |
新聞読んでたら、
「これからはスペシャリストの時代だ」
っていう記事があってね(笑)。
いかにも高校生が感化されやすいような内容で
「引かれたレールの上を歩いていっていいのか?」
とかいうようなことが書いてあって。
それでなぜか芸術だ!
と思ったんだけれど、
芸術にどんなジャンルがあるのかも知らないから、
唯一知っていた油絵を受験したんです。
それで入ったのはいいんだけれど、
油絵があんなに
乾かないものだとは知らなくて。
いやぁ、本当にびっくりするくらい乾かないの。
1日かかるの、乾くの。
で、待ってられないから描くと、
色が混ざっちゃう。
もうこの世界は無理だと思って転部しました。 |
ほぼ日 |
転部。 |
森川 |
1年で鞍替えして、
エディトリアル・デザインに。
そして6年かかって卒業したんです。 |
ほぼ日 |
そこで就職なさったんですか。 |
森川 |
ぼく、就職は一回もしてないです。 |
ほぼ日 |
えっ、えっ。
じゃあ、なにを? |
森川 |
ずっと映画を見てました。
というのはね、エディトリアルを出ると
すぐに雑誌のレイアウトのバイトが
できたんですよ。
先輩が出版社にいっぱいいたんで、
レイアウトの下請けをしたんですよ。
ページいくらで、指示通りに線を引く。
で、絵も描けるから、
スペース勝手に空けて、イラスト描いて、
レイアウトとイラスト、
両方のお金もらって稼いでたの。
バイトとしては、すごくいい。
だから徹夜して稼いで、
好きな時間に映画見てたんです。 |
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ほぼ日 |
ふつうならそのまま
エディトリアルデザインの道に
すすみそうなものですけれど。 |
森川 |
とんでもない、
ぼくは、そんな大したことできないわけ。
グラフィック・デザイナーになれるような
才能もないし、テンションもない。
全然興味がなかったんですね。 |
ほぼ日 |
その森川さんがどうして
コンピューターゲームをつくることに
なっていったんですか。 |
森川 |
あるときに、今ポケモンの社長の
石原恒和さんに会ったんですね。
そのころアミーガ(Amiga)ってマシンが出て、
石原さんが持っているというので
遊びに行きました。
ぼくはパソコンもそのとき初めて触るんだけど、
それは、アニメーションがすごい得意な、
グラフィックに特化したマシンで、
これはおもしろいと思ったんです。
それで自分も始めてみた。
そしてちょうどその頃、
テレビで深夜番組が始まった。
深夜番組って予算がないから、
タイトル作るだけで2千万ぐらいかかる
CGは使えない。でも、やっぱり使いたい、
そんなふうに作り手が考えていたんですね。
そこにアミーガという安くつくれるCGがあって、
需要が出てきたんですよ。
そして石原さんが、その後、
『ウゴウゴルーガ』をつくることになる
福原伸治さんや
プロデューサーと知り合いで、
「手伝わない?」って声をかけてくれたんですね。
それで『さんまのまんま』のタイトルロゴを
つくったのが、最初の仕事です。 |
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ほぼ日 |
ほ、ほう‥‥。 |
森川 |
その後、『IQエンジン』とか、
『アインシュタイン』とか
フルCGをアミーガでつくってました。
アミーガ使えるのが、当時、東京に、
5、6人だったかな、
だからぼくでも仕事になったんです。
そしてその後『ウゴウゴルーガ』に参加します。
当時、新鋭のプロデューサーや
ディレクターたちが、
深夜から早朝の枠を担当していたんですね。
『カノッサの屈辱』とか、
『やっぱり猫が好き』とか、あの当時、
深夜枠って結構おもしろい番組が
いっぱい出てきたんですけど、
その頃ですよ。
画期的なこともバンバンやっていた。 |
ほぼ日 |
たのしかったでしょうねー! |
森川 |
ところがね、僕は僕で、
6〜7年やっていたら、
飽きてしまって。 |
ほぼ日 |
ありゃ。 |
森川 |
そしたらこんどはソニーが
ゲーム機を出すというんです。
(後編につづきます) |