── |
岩崎さん、今日はありがとうございました。
貴重なライブまで見せていただいて‥‥。 |
岩崎 |
いえいえ、とんでもない。 |
オトヤ |
本当に、ありがとうございましたーっ! |
── |
さっそくで申しわけないのですが
いま、聞いていただいた
うちのオトヤの読書感想文ですが‥‥。 |
岩崎 |
いくつか重要な論点をはらんでいましたね。 |
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── |
ほ、ほんとですか!? |
岩崎 |
ええ。 |
── |
それは、たとえばで言うと‥‥。 |
岩崎 |
「大型二種免許」の件とか。 |
── |
ああ‥‥このオトヤさんという人は、
管理部門ながら
業務に関係ない自動車の「大型二種免許」を
取得しようとしています。 |
オトヤ |
そうです。もう教習所にも通っています。 |
クリックすると運転席のオトヤが見えます。
取材協力:上江橋モータースクール |
── |
‥‥でも正直なところ、われわれ同僚は
必ずしも
「ピンと来ている」とは言えない状況で。 |
オトヤ |
「オッティ、どこ目指してんの?」とか
ふつうに聞かれちゃうんスよね、正直。 |
── |
そもそも「大型二種免許」を持ってたら
何が運転できるのかとか、
みんな、よく知らないと思うんですよ。
観光バスなのか、ダンプカーなのか、
あるいはショベルカーなのか‥‥。 |
オトヤ |
いやいやいや(あきれたという笑い)、
ショベルカーは
「大型特殊自動車免許」なんで。 |
岩崎 |
‥‥「大型特殊」は取らなくていいんですか? |
オトヤ |
えっ!? ‥‥あ、はい、そ、そうスね、
自分、あの、ショベルカーとかユンボとかは、
まだ作業的に興味があまりなくて‥‥。 |
「大型特殊」とはたとえばこんな車両。 |
── |
「大特」は、さすがに時期早尚であると。
わかりました。
‥‥岩崎さんは、どう思われますか。 |
岩崎 |
大型二種の取得について? |
── |
はい、ようするに管理部門でありながら
「大型二種免許を取得する」
ということを、
オトヤは「イノベーションの一環」と
主張していましたが、
果たして
本当に「イノベーション」なんでしょうか。 |
全長11メートルに及ぶ路線バスでは内輪差に充分配慮しなければならない。 |
岩崎 |
‥‥イノベーションでしょうね。 |
── |
ええっ! |
オトヤ |
おおっ! |
── |
ほ、本当ですか!? |
岩崎 |
少なくともイノベーションに繋げることは
可能じゃないでしょうか。
というのも、ドラッカーは
イノベーションのことを述べた部分で
「昨日はすべて陳腐化する」と
そのようなことをおっしゃっているんです。 |
オトヤ |
「昨日はすべて陳腐化する」‥‥。
(メモをとっているようす) |
|
岩崎 |
そう。
「昨日、つまりイエスタデイは、
すべて陳腐化する。
そう仮定し、
計画的・体系的に行動していくことが
イノベーションの第一歩である」
‥‥というようなことを
おっしゃっているんですけれども、
その考えからすると
「昨日と同じことをしない」ということが
大切なことになってくるんです。 |
オトヤ |
なるほどー‥‥(メモを取っている)、
勉強になるッス! |
岩崎 |
つまり、これは、
「昨日を捨てなければ、
明日をつくることはできない」
ということなんです。
だから、いいんじゃないんでしょうか。
管理部門なのに大型二種を取ったって。 |
|
オトヤ |
ありがとうございます! |
岩崎 |
偉大な経済学者・シュンペーターも
「イノベーションとは創造的破壊であり、
それは
昨日の設備と投資を陳腐化させる」と。 |
── |
ええ、ええ。 |
岩崎 |
管理部門の人間が
大型二種の自動車免許を取るなど‥‥。 |
── |
まるきり「昨日」とちがう投資ですね。 |
オトヤ |
そうですよね! |
── |
ちなみに、オトヤさんの場合は
自主的というか、
免許代はもちろん自腹なんですよね。 |
オトヤ |
そりゃそうッスよ。好きでやってるんで。 |
── |
世の中の管理部門とは
まるきり異質な自己投資をする管理部門‥‥。 |
岩崎 |
それに、ドラッカーさんは
「成果とは打率である。
失敗しない者を評価してはならない」
とも、おっしゃっていますから。 |
── |
なるほど、その言葉は、
モチベーションを高めてくれますね。
つまり、ヒットばかり打たなくても
いいってことですもんね。 |
岩崎 |
みなみが手にとった『マネジメント』にも
このようにあります。
「成果とは百発百中のものではない。
百発百中は曲芸である。
成果とは長期のものである。
すなわち、まちがいや失敗をしない者を
信用してはならないということである」 |
オトヤ |
あ、みなみちゃんが
幼なじみでキャッチャーの柏木次郎と
バスで偶然乗り合わせた場面のあとくらいに
出てくる引用文スよね。
※5回も読んでいるため
オトヤは「もしドラ」の内容を
すっかり暗記している。 |
みなみが柏木次郎とバスで偶然乗り合わせた場面。 |
── |
‥‥大型二種免許を取ったけど
結果、何の役にも立たなくったって、
つまり、
成果が出なくてもいいじゃないかと。 |
岩崎 |
「成果とは打率である。
弱みがないことを評価してはならない。
そのようなことでは
意欲を失わせ、士気を損なう。
人は、優れているほど
多くのまちがいをおかす。
優れているほど新しいことを試みる」 |
オトヤ |
優れているほどまちがうし、
優れているほど、新しいことに挑戦する‥‥。 |
|
── |
失敗も次につなげればいいわけで、
大事なのは
ともかくも打席に立つことだ、と。 |
オトヤ |
じゃあ、大型二種免許を取っても
オーケーなんスね! |
岩崎 |
オーケーです。
‥‥といいますか、
そんなこと、私が判断することでも
ないと思うのですが(笑)。 |
オトヤ |
いやぁでも、「もしドラ」を読んだときも
思ったんですけど、
ドラッカーさんの言葉って
なんか、超ヤル気出てくるんスよねー。 |
岩崎 |
二種ということは「旅客」を乗せられる
免許なわけだから、
いっそう、正しく丁寧な運転技術が
身につくと思うんですよ。
だから、
さすがに観光バスは運転しないにしても、
糸井社長や他の社員さんを乗せて
車を運転する際など
より安全に運転業務を遂行することが
できるのではないでしょうか。 |
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オトヤ |
そうなんです、そこなんです! |
── |
なるほど、つまりぼくらが
オトヤさんの「顧客」になるわけですか。 |
岩崎 |
そうですね。 |
── |
社内ベンチャーかなんかを立ち上げて
社内市場を開拓し出したりしたら‥‥。 |
岩崎 |
まさしく「顧客」でしょう。 |
オトヤ |
「オトヤ・ロケーション・サービス」‥‥。 |
岩崎 |
ドラッカー的な用語をつかうなら
「顧客の創造」です。 |
オトヤ |
‥‥自分、超ヤル気出てきたッス! |
上江橋モータースクールの優しい教官・高井良明先生と。 |
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<つづきます> |