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ホストに訊く語録・総集編!

ホスト界ナンバーワン・零士さんに訊いた言葉は、
「モテたい!」という男子に効くだけではなくて、
あの人を射とめたいと思う女子にも効いちゃうし、
サービス業のなんたるかまで教えられちゃうんだ!
大長編の過去のコンテンツを、総集編にしました。

第1回 まず自分をわかっちゃおうよ!

第2回 モテるやつは、タフでマメ。

第3回 もう一歩上のことをやるには?

零士 あの……女の子に意外に効果があるのは、
なんか、一緒にいて食事してても、
何もしゃべらない時間ってありますよね。
そういうとき……自分は本当に
しゃべりたくないだけなんですけど(笑)。

で、逆にそのことを、
そのまま言っちゃうんですよ。
「何もしゃべらないでいられるって、
 それって、そのままだから……」って。

でも本当のことですよね。
事実を確認するんです、常に。
で、それを外部から
「おまえ、それちがうだろ!」
って言うヤツがいくらいても、
もうシャットアウトしちゃうんですよ。
防音装置はっちゃうんですよ。
そういう、なにげに言っちゃったことで、
ものすごく相手の心に
響いちゃうことがあるんですよ。

「去年の何月に、
 あなたこういうこと言ったでしょ?」
「え? どこで? あー、はいはい」
「本当に素朴だなぁ、
 ああ、こういう人なんだなって思ったの」
って言ってる。
でも、それ、ウソじゃないんですよ。
「いや、あの時はさ、俺疲れてたんだよね。
 本当に疲れてて、
 なにもしゃべりたくなかったんだよね」
「いや、それ、伝わってきた……」って。
もちろん僕がご馳走に招待したわけですよ。
ちゃんとした店で、
おいしいとかなんとか言う前に、
「なんかこうやって、
 しゃべらないでいられるのもさ、
 それ、俺のままなんだよね……」って。
なにもしゃべってないんですよ。

「スーツ? これはただの鎧だ」とかね。
それは文字どおり、
こんなスーツはただの鎧なんだよ、
っていう意味を、含めてるかもしれないし。
別な意味かもしれないし。
「目の前の料理なんか、どーでもいいんだ。
 この空間が、俺にとっては、
 すごく素に戻れるっていうか……
  違和感ないね」って。
それがどういう意味なのか、
そこまでは言ってないですから。
でも、ウソじゃないですから。
本当に疲れててしゃべりたくないんですから。

最近それに加えてるのは。
こう……無心っていうか。
「無心になれるってのは、いいよなぁ」って。
だから、僕らはよく
「三手先を読め、三手先にもっていけ」と言って、
間の1つ、2つをとばしちゃってるんですよ。
とばして三手先に行ってるんですよ。
だから、難しい相手のときに、会って早い段階で
「もう君のこと、わかってますよ」っていう流れに
もっていくってのは、そういうことですよ。
でも、あれですよ、
今回、これだけ対談の時間をとってもらったから、
みなさんに伝えられるんですよ。
これ、10分や20分の話じゃ
伝わらないことなんですよ。
難しすぎて。

ビールの泡をシャンパンの泡に変える言葉みたいに、
短くてパーンという言葉を
メディアは求めてますよね。
本当はダメなんですよ。
で、僕はテレビに出たりすると、
あえてみなさんにわかりやすいように……、
つまり、ホストに対するモヤモヤしたイメージを
吹っ飛ばしたいがために、
ちょっとコミカルで、
ちょっと古風なことを短時間の枠でやるしかないんです。
テレビとかは、時間の尺が決まってますから。
短めに。

古風なことをやるしかないんですよ。
それも、決まった尺度の短い時間で
パーンと行くしかないんです。
だから、テレビはちがいますよね。
“今”じゃないですよ。
古風です。
“今”ってのは、今話してることですよ。
これは現実に進んでることですから。
いつも“今”なんですよ。

ただ、今いっていたようなことを、
女はもともと使ってるんですよ。
女性は鼻の下が伸びないから、
正確にその手を使ってるんです。

たとえば、読者からいただいた
質問メールのなかに
「私は今まで想った意中の人を
 だいたい落としてきました。
 で、その3人くらいのうちのひとりが今の旦那です」
というメールがあったんですよ。
で、この人の方法として、
「私はね、会社の食堂で意中の男の人を
 ずーっと見てるんです。
 けっこう効果あるんですよね」
って書いてあります。
そういう使い方をしてるんですよ。
でもね、これは……、
質問のメールをくれた人、ごめんなさいね。
これは、あくまでも、素人さんの究極なんです。

これね、プロの女になってくると、
相手がこっちを見るまでは
ずーっと見てるんですよ。
で、見たら、フッと目線外すんですよ。

外しのサブリミナル効果なんですよ。目線の。

要するに目線をフッと外すわけですけど、
このメールをくれた女性は、
「ずーっと見てた」って書いてるんですよね。
「けっこう我慢してジーッと見てる、
 これってけっこう効果あるんですよ」って書いてある。
それは効果、ありすぎちゃうんです!
濃すぎちゃうんです!

プロは……、
プロとしてパツンパツン行ってる女は、
男が目線感じて、あれっ? って思って、
なんか女の方をフッと見たら、
もう目線外されてて、なんか見てなかったような
気がしちゃうっていうか……、
そういうふうに持っていくんです。
だから、さっき言ったように、
三手先までもっていっちゃうんですよ、その方法で。

ずーっと相手の男を見てるっていう方法だと、
1が始まって、2が来てるんですよ。
そうじゃなくて、ずーっと見ててフッと外すと、
いきなりボーンと飛んでっちゃうんですよ。
目線外された男っていうのは、
「あれ? なんかこっち見てたかなぁ……?」
っていきなり3が始まっちゃうんですよ。

そこまで計算できる女がいるんですよ。
女は使ってるんですよ、昔からずっと。

男と女では進化の度合い、スピードがちがうんで、
女性の進化のなかで生まれてきた女性のテクニックと、
男性の進化のスピードで認められてきた技とは、
やっぱり異ってるんですよね。
これは一緒じゃないですよ。

そうはいっても、
「別にいいんだよ、あんな女は……」
いや、よかぁないって!
俺にしてみたら、そりゃ、よかないよ! と。
自分がきっちりねらいを定めた以上、
たとえば、マグロ釣りに行ってカツオ釣れたんじゃ、
そりゃ、よくないんですよ。
「いや〜、カツオは旬だからねぇ」って……。

「カツオは旬だからねぇ」って言っても、
でも、おまえ、
マグロ釣りに行ってんだろ? って(笑)。
カツオ釣れちゃっても、意味ないわけですよ。
それを、ちゃんと自分のなかで……要するに
「己を知ってくれ」ってことなんですよ。

本当はどうしたいんだってことですよ。

別に第三者は関係ないですよ、
今しゃべってる僕だって
客観的に言ってるだけですからね。
いわば、第三者なんですよ。
でも、自分のなかで、マグロとカツオを
ちゃんとわけてほしいっていうか……
若い人は特にね。
それでね、
いろんな質問メールを送ってくれた中に、
40代、50代の男の人がいるんですけど、
この人たちは、実は意外とよくわかってますよ。
本当はわかってるんですよ。
たぶん俺が思うに、
「本当はわかってるけど、わからないふりをして、
 ここんとこ零士に訊いてみよう、
 ホストに訊いてみよう」
という部分ってあるんですよ。

よくわかってますよ、本当は。
この対談で僕の本音を聞いて、
「やっぱりそうだったか!」と思って、
また明日、元気に会社行ったり、
息子さんと接したりしたいんでしょうね、きっと。
そうだと思うんですよ。
若い子は、本当にわかってないですよ、これ。
本当にビクビクしてますよ。

ただ、開きなおって、弱い部分は弱い部分で、
もうあんまり手をつけないで、
いい部分だけで勝負していって、
ガンガンガンガン行って、
それで相手をぶっ倒しちゃうという。
俺はそういう方法をすすめます。

もし、不安材料を消すことによって
自信をつけたとしても……でも、そいつが本当に
怖がってるライバルってのは、きっと、
今言ったパターンのヤツなんですよ。
左フック一発ねらいで、ガーンガン来るヤツってのは、
やっぱ怖いですよ。

弱いところが気になるなら、
むしろ逆をやらなきゃ。
そうしないから、どれも同じに見えちゃうんですよ。
サイボーグみたいに。
だからなんか「あれ? なに君だっけ?」って
マジでわからなくなっちゃうんですね、こっちも。

たいしたことないんです。
ひとつ抜けてないんです。
ボクサーで世界チャンピオンになった人で、
よく会う人と話をしていて、
「零士、おまえ……チャンピオンってさ、
 負けるときって、どういう時か、知ってる?」
って聞くから、
「いや〜、やっぱそれって、あれでしょ、
 ちょっと力が衰えたときとか、
 練習しなかった時でしょ?」って言ったら、
「逆だ!」って言うんですよ。
練習しすぎた時なんですよ。
チャンピオンであるはずの自分が
手負いの狼になっちゃってる時なんですよ。
現実は、ぜんぜん手負いの狼じゃないんですよ、
チャンピオン、キングなんですから、
だれよりもぜったい強いんですよ。
ランク的には、自分より上がいないんですから。
でも、結局、下から上がってくる、
本当の手負いの狼みたいなヤツが
食いついてくるのが怖くて、
練習をしすぎてオーバーワークでダメになる、
って言うんですよ。

で、そのチャンピオンだった人が
「優秀なトレーナーってのは、
 選手をいかにリラックスさせて、
 いかに練習させないか、ってのができる人だ」

って言ってましたね。
「あ、そうなんですかぁ……、
 だいたいみなさん、そうなんですか?」
って訊いたら、
「ほとんどそうだ!
 よほどのアホじゃないかぎりな」って。

「完璧にするということは、逆にそれは、
 完璧にした時点で、本当の手負いの狼に対して、
 自分が手負いの狼になっちゃうんですよ」って
ことなんです。

恐怖心を振り払いながら、
あえて自ら得意技1本で挑んでくるヤツに対して、
本来なら勝てるにもかかわらず、
半端に完璧にしようとして
形をこじんまりまとめすぎちゃって、
それで、やっつけられちゃうんですよ。きっと。

で、相手のパンチが当っちゃうところに、
自分からわざわざ回り込んじゃうんでしょうね、
きっと。
それで、ドカーンとパンチ食って
やられちゃうんですよ。
俺、そうとしか考えられないですよ。

今の若い子、それと一緒で、
練習だけして、チャンピオンベルト巻いて
家に帰っちゃうんですよね。
しかも、
自分で勝手につくったチャンピオンベルト。
非公認の(笑)。
「そんなチャンピオンベルトはないだろ?」
みたいな。
自分だけのベルトして帰っちゃうんですよ(笑)。
試合しないで。

俺、そう思いますよ。
だから今言った、その……
本当の手負いの狼的な部分が
なくなっちゃってるんですよね。
もっとあっていいと思うんですよ、俺は。
糸井 本当の手負いの狼的な部分ってことで、
たとえば零士さんだって、
10代の頃とんちんかんな格好して、
東京に出てきて浮きに浮きまくってた話を
平気でできてるじゃないですか。
それ、若い子、できないですよね。
零士 たぶん、できないでしょうね。
当時の僕は大まじめで行ってたんですから、東京に。
でも、浮いてることに自分で気づいて、直して……。
でも、その経験はエピソードとして
自分に誇りをもっていて、
「だから今があるんだ」っていうね。
だから、さっきちょっと出た話で、
“難しい相手”に遭遇しても、
その時こそ自分の得意技で行くしかないですよね。
あえて、まとめる必要ないですよね。
糸井 でもさ、自分の得意技がなんなのか
自分が知ることって、
本当はなかなかできないですよね。
むずかしいんじゃないかなぁ。
零士 だからいつも
「自分はなーにを考えてるんだろう?」
「自分はどれだけ異性のことを考えてるんだろう?」
とか、考えるんですよね。
「考えちゃいけない」って決まりないですから。
「私いっつも、男のことばっかり考えてるのよね」とか、
「俺っていっつも女のことばっかり考えてるんだよ」と。
それって悪いと言えることじゃないですよね。
はっきり言って、
「ああ、すごくいいんじゃない!」って、思う。

そればっかでいいんですよ。
変にまとめなくていいんですよ。
で、若いうちからうまくまとめようとしたヤツは、
だいたい、そうですね……25歳で、
もう昔話始めちゃうんですよね。

「俺が若いときはさぁ……」って、
オマエまだ若いだろ!って(笑)。
「昔は渋谷センター街でブイブイ言わせちゃって、
 まあ、当時はねぇ……」って、
オマエ、それ最近だろ!
「当時、俺の名は通ってたよ」なんてね(笑)。

いや、もう、だいたいそういう人は……、
夢を語ってて目が爛々としてるんだったら
いいんですけど、
もうだいたい死んだ目しちゃってるんですよ。
たとえば、僕が昔話をしても、たぶん、
目が爛々としてると思うんですよ。
「昔やったことは今の自分のルーツで、
 これからもっと行くんですよ!」
という感じが相手に伝わると思うんですよ。
でも、そうじゃない昔話をするヤツには、
「だからなに?」ってなっちゃうんですよ。
女性はもっとすごいです。
「俺って昔さぁ、ああで、こうで……」なんて
自分だけ楽しくて、自分だけウケてるような
そんな話を男が女にしても、
女は「だからなに?」で終わりっていうね。
その時点で、まあ10歩のうち、6歩、7歩は
引いちゃいますよ。
糸井 そういえば、しないほうがいい自慢話をして
失敗するヤツっていっぱいいるよね。
零士 いっぱいいるんですよ。
俺がよく使うのは、さっきの話題で言うと、
自分より上に見える男とつきあってきた女に対しては、
「俺は、こんななんだけど」ってことを
まず最初に明確に示すことですね。
「わぁ素敵……」って思うんですよ、人間として。
「俺はこんななんだけど、こういうことが好きだよ、
 こういうことができるよ」って言う。
それって誇りですからね。
自慢も、誇りのある自慢もあるんですよ。
なんか立証できないような、ただのへんな自慢話とは、
ぜんぜんちがいますからね。

「僕はこのクルマが好きだから……、
 このクルマ高いかもしれないけど、
 そうじゃないんだ。
 僕が乗ってるこのクルマには、こういう歴史とか、
 思い出があって、それで大事にしてるんだよ。
 あなたにとって、そういう物ってない?
って訊く。
相手の女性は、話し始めますよね。
だから、自分だけ自慢するんじゃなくて、
相手の女性に自慢させるんです。

だから、自慢話をするには、
自分に誇りがあって、
相手にも誇らせなきゃいけないんです。

誇りがあるはずなんです。
それを自分だけが言うと、
「そんなもんアタシはないわよ!」とかね、
「自分の自慢話ばっかりして!」ってなるでしょ。
なると思うんですよ。おそらく。
だったら、女に言わせないとダメですよ、自慢話を。
たとえば、僕ら若い世代にとっても、
なんか、そういう物ってあるでしょ。
たとえば、フェラーリに乗ってたとしても、
「みんなフェラーリ、フェラーリって言うけれども、
 実は僕はこのシフトレバーが好きなんだ、これが。
 このアルミのシフトレバーが好きなんだよ」と。

「でも、クルマなんかまあいいじゃん、
  なんちゃってー」
なんて自分からアホなこと言って。
で、自分の核の部分を明確に示しておきながら、
相手の誇りとか、自慢話をしゃべらせるのもいいし。
やっちゃいけないことって、ないと思うんですよ、俺。
でも、それなりにちゃんと裏付けがないと、やっぱり。

いい加減に考えてるんだったら、
最初からいい加減にしてたほうがいいですよ。
中途半端はよくないですよ。
マニュアルどおりは、いい加減ですよ。
自分で考えてないですから。

僕が「こいつはモテるだろうな」って思う人は、
ま、僕とちがうタイプで、よく見るというか、
なるほど、こういうパターンもあるんだな、
と思うのは、
“わりとソフトなんだけど、
 相手をこう……言葉だけでない雰囲気で、
 うなづかせるヤツ”。
やっぱ、いるんですよねぇ。
トーク、あんまりなくて……、
あのね、僕にはちょっとできないことなんですけどね、
そういう人って……相手とパッと合うんですよ。
で、さっき僕は、1の段階から一気に
3にもっていっちゃうと言いましたけど、
それを言葉じゃなく、
態度でできちゃうヤツがいるんですよ。
僕は言葉で持っていくって言いましたよね。
「こういう、何もしゃべらないでいるのも、
 これって、俺なんだよ……」というのも、
やっぱり言葉で言ってますよね。
それを言わないで、
3にもっていちゃうヤツがいるんですよ。
世の中には。
いるんですよ。
なんかその、セリフがなくて、
「…………」ってだけで、
「あ、かっこいいなぁ〜」って思うヤツ。
言葉じゃなくて、
仕草でできちゃうヤツがいるんです。

それができる裏付けは、勘違いですね。
ぜったい勘違いなんですよ。
それって、魅力でしょう?
大勘違い。素敵ですよ!
一緒になって勘違いしないと
いけないような気がしちゃいますね。

天敵ですよ。言葉いらないですからねぇ。
それ、できないんですよ。
だから、それにちょっと似せるには、
単純なことですけど、
「普段いい加減なんだけど、やる時はやるよ」と。
それをちゃんとメリハリをつけて
ジッと相手に見せる、というのも、ひとつの手です。
効果として似てるというか。
だから、言葉だけではちょっと伝えられない部分の、
暗黙知的なものを、ちゃんと見せるには、
なにか言葉ではないものを学ぶんですね。
僕はいつもそう思ってるんです。
「あ、これって言葉じゃないんだなぁ」って人は
いるんですよ。
そういう人をよーく見るんですね。
俺、学びますね、その人がやったことを。
糸井 性がらみのことは、
あんまりしゃべってなかったですね。
そのへんって、
現実のホストはどんな感じなんですか?
零士 あの……セックスというのは、
基本的にはその、肉体的な満足感と、
精神的な満足感があると思うんですよね。
で、あの……セックスを売り物にするということは、
ひじょうに難しいと思うんですよね。
精神的な満足感を与えるには、
べつにセックスじゃなくても、
ほかのものでも、いっぱいあるわけですよ。
肉体的な満足感を与えるよりも、
精神的な満足感を与えるほうが、
ホストとしては、大切なんです。
ずーっと対談してきたことは、
結局はそういうことなんですよ。
たとえば今、
「あー、おもしろかった!」と言って、
この対談の後、スタッフのみなさんで
お茶を飲むなり、酒を飲むなりしてもらうためには、
精神的な満足感を感じてもらったほうが、
質が高いんですよね。
糸井 性をコントロールするってのは、
暴力なんかに近いんですかね?
零士 ええ、そうなんです。
だから、そっちのほうに走っていくと、
もう尺が決まっちゃうんですよね。尺度が。
幅が決まっちゃうんですよ。
で、夢を売っているホストが
幅が決まっちゃうようなことに走ったら、
夢じゃなくて現実になっちゃって、
もうみんな斜めに傾いちゃうんですよ。

たまに、手段として、走る人はいますよね。
ま、正直言って、ぶっちゃけた言い方したら、
「お客さんと寝ちゃって、どうこうして、
 そういうふうにヤリまくってるホストが、
 ナンバーワンなんじゃないか?」という
イメージが先行してるんじゃないですか。
でも、それは幅が決まっちゃってますから。
かけ算じゃないんです。たし算ですよね、それは。
僕はたし算求めてこの世界に入ってないですから。

だから、上に行く人ってのは、
そのことじゃなくて、ちがう方法で行ってるわけですよ。
精神的な満足感を与えるには、
どうすりゃいいんだろう?って知恵をしぼるんです。
で、工夫するんです。
だから“研究”と書いて“どりょく”と読む、みたいな。

血と汗と涙の結晶とか、
そういうことを言ってるうちは、まだまだです。
結局、肉体的に動かす、どうのこうのって、
イメージ自体がもうまちがってますよね。
血と汗と涙は、もう当たり前ですから。
そこから一歩上のことをやらないと。

もっとぶっちゃけた話は、たとえば、
「5万円でセックスできます」と。
で、裸になって、じゃあ、っていたして、
5万円払うってなると、終わったあと、
「なんか高かったかな……」と思うんですよ。
ところが、たとえば、2時間あったら、
1時間50分しゃべって、あとの10分で
チャチャっとしちゃって、
そうすると逆に、「また行きたい」と思うんですよ。

だから、さっき、僕が最初に話したことで、
長い話を時間を感じさせないで、
しゃべることができたら、
それは、モテる秘けつですよと。
時間を感じさせない、というのは。
そこでも話がつながるんですよ、ぜんぶ。

長い時間しゃべってきましたけど、
これだけ十分に話す時間をもらえれば、
こっちの言ってることは読者に伝わると思います。
中途半端なヤツがでてくると、
「まーたなに言ってんの、この人!」と
思うかもしれませんが、
一応、僕が出てきた以上、
ここで話してることは本当のことですから。
でも、ひじょうに簡単で、当たり前のことを
しゃべってきたんですよ。


若い人は特に、自分の位置を見ておかないと、
なにげにヒツジの群れと同じように動いてるんですよ。
それよりは、ヒツジの群れを仕切る、
牧羊犬になってほしいですね。
牧羊犬は、
きっと責任感もってやってるんですよ。
誇りをもって。

ホストが増えていってる今、
先のことを考えると、名称を変えたいと思うんですよ。
で、僕らの世界で……、なぜ歌舞伎町で
今これだけホストが増え続けているかというと、
タテ社会だからなんですよ、基本的には。
体育会系なんですよ。
そうじゃないと、ご法度ごとが守れないんですよ。

秩序とモラルを守らせるためには、
体育会系で縛るしかないんですよ。
30人で派閥をつくらずに、30人で店を動かす場合はね。
それが50人になったら、割ったほうがいいんです。
だから、そういう意味で、
我々はこれだけちゃんとやっているわけですよ。
まあ、もーのすごく厳しい世界ですよ。
で、みなさんが思ってるよりは、
めちゃくちゃ厳しい世界なのに、“ホスト”って言うと、
たとえば、昔、体育会系でがんばってきたお父さんが、
「なに? ホスト!?」ってマイナスイメージで言うのが
僕はすごく残念なんですよ。
そういうんじゃないんですって!
俺たち相撲部屋みたいな感じで
がんばってるんですよ。
もう、めちゃくちゃにしごかれるし、
時には本当にブッ飛ばされてますからね。
仕事で酒飲んでも、ヘベレケになってても、
ミスはミスで怒られますから。
すごい厳しいですよ。

僕らの世界は、すごい厳しいんですよ。
だから俺、息子ができたら、店に入れたいですよね。
手っ取り早いですから。

「いろんなものが、よく見えるよ」と。
「人間関係がよーく見えるから」って。
「タテ社会が基本で、
 ピラミッドの形がよくわかるよ」って。

どうやって上がっていけば、頂上に辿りつくかってことが、
よく見えるから、見てきな、って言いたいですね。
で、やっちゃいけないことは、こういうことだよ、って。

こないだ、うれしい話を聞いたのは、
田舎にいる知りあいのオジサンが同窓会に出たときに、
そこに子どもが来たんですって。中学生の。
でまあ、普通の会話の中で、
「おい、オマエ、大きくなったら何になるんだよ?」
って言ったら、
「僕、ホストになる!」
「は?」
「ホストになりたい」って。
「こないだテレビに出てた人がいて、
 僕、あの人のところに行く!」って
言ったっていうんですよ。

3、4年前では、これ、考えられないことですよ。
若い男の子たちの、そういうせっかくの気持ちを
ホストという名称を出しただけで、
「あー? なに言ってんのアンタ!」みたいなね、
「バカなこと言ってんじゃないよ!」って
親に言われないような、なにかを
僕らは作ってあげたいです。
零士さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「零士さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2004-11-11-THU

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