元ゲーム雑誌の編集者で、
テレコマンとしても活動している永田ソフトが
ここでは永田泰大さんとして
『MOTHER1+2』をプレイする日常をつづります。
ゲームの攻略にはまるで役に立たないと思うけど
のんびりじっくり書いていくそうなので
なんとなく気にしててください。

8月2日

墓場を抜けて川沿いから谷へ

前回ちらりと報告したけれども、
僕はいまやひとりでこの世界を行くのではない。
女の子と、メガネの男の子のふたりがそばにいる。
僕らは3人でゾンビの巣くう街に
平穏を取り戻そうとしている。

仲間たちと3人で、墓場の薄暗いダンジョンを進んでいた。
ともに進む仲間が増えたということは、
相手にするモンスターも
それまでより強くなるということである。

墓場のダンジョンはそれほど長くない。
けれど、そこから先の川沿いの道がやっかいだ。
どうやら出てくるモンスターのHPが高いのである。
それらが複数で出てくると、
通常攻撃だけでは倒すのに数ターンかかってしまう。
サイパワーを使えばかなり楽になるけど、
行く道の先が見えないから際限なく使うわけにもいかない。

けちけち戦っていたら、2度ほど仲間が意識不明になった。
僕は、パーティーの誰かが意識不明になると
それ以上先に進むことをあきらめるようにしている。
残ったメンバーとのあいだに
レベルの差ができることがいやだからだ。

それで、苦労して進んできた道を、苦労して戻る。
気のせいかもしれないけれど、
墓場のダンジョンは進むときよりも戻るときのほうが
モンスターが多く出現するような気がする。

そういうふうにして何度も同じ道にチャレンジしていると
パーティーのレベルは底上げされるし、
地形も把握できて無駄な行動がなくなっていく。
たいてい、僕は難所をそのようにしてクリアーしてきた。

その道へ3度目の挑戦をするとき、
過去の経験からいってそろそろ抜けられるだろうと
やや楽観的に思っていた。
ところが、墓場のダンジョンを抜けた川沿いの道で
またしても仲間が意識不明になった。

やっぱり、ここのモンスターはけっこう強い。

戻ろうと思ったが、背後にもけっこうな数の敵がいる。
しかもやっかいなことに、
さっき買い物したあとにお金を預け損ねていて、
かなりの額のお金を持ったままになっている。
もしも全滅してしまったら、
所持金は半分になってしまう。

やっぱり進もうかと思ってしばらく進み、
これじゃ全滅してしまうと思ってしばらく戻り、
めずらしく方針の決まらぬままうろうろとした。
そしたらどんどん状況は悪くなっていった。

やばいな、と思っていたら、前方に洞窟が見えた。

ひとりの仲間は意識不明だし、
残されたふたりのサイパワーも少ない。
しかも、全滅するわけにはいかない場面だ。

新しい洞窟に入るのはちょっとした賭けだったが、
どっちにしろこのままじゃ全滅してしまうと思ったので
僕は決心してそこへ踏み入れた。

すると、ぼんやりとではあるが、
懐かしい音楽が聞こえてきた。
洞窟の効果音に掻き消されそうになりながら
うっすらと不思議な音楽が鳴っている。

洞窟を抜けるとそこはちょっとした谷間で、
そこには不思議な生き物が僕を待っていた。
全身が肌色で、2本足で、大きな鼻があって、
装飾品といえば頭の上に
真っ赤なリボンがひとつだけ。

谷間に棲むその独特の生き物は、
息も絶え絶えの僕らに向かってこう言った。

「ぼくらは いつも
げんきですけど
こんにちは。」

──ああ。やっと会えた。

2003-08-03-SUN