『MOTHER2』のはじまりは。
えー、このたび、
Wii U のバーチャルコンソールで
『MOTHER2』が配信されることとなりました!
つきましては‥‥。
- 糸井
- 永田くん。
はい、なんでしょう。
- 糸井
- 「ほぼ日」を読んでる人には、
バーチャルなんとか、みたいなことを言っても
よくわからないかもしれないよ?
ああ、失礼しました。きちんと説明します。
ちなみに、糸井さんはわかってますよね?
- 糸井
- 失礼な、わかってるよ! ‥‥だいたいは。
- 岩田
- ははははは。
ええとですね、去年の年末に発売された
任天堂の最新ゲーム機、Wii Uには、
「Wii U バーチャルコンソール」という機能があります。
これは、ファミコン、スーパーファミコンといった、
過去の任天堂のハードでリリースされた名作ソフトを
ダウンロード購入できるというサービスなんです。
‥‥ということですよね、岩田さん?
- 岩田
- はい、そのとおりです。
ちなみにWii Uでは、
ゲームボーイアドバンス用ソフトについても
配信を準備しています。
- 糸井
- ふむ。
で、奇しくも今年はファミコン生誕30周年です。
そのお祝いも兼ねて、
「Wii U バーチャルコンソール」で過去の名作7本を、
なんと、「30円」で購入できるという
体験キャンペーンがはじまっているのです。
- 糸井
- 安すぎるっ!(ドンッ!)
お茶がこぼれますから、
ほんとに机を叩かないでください。
- 糸井
- ティッシュ、ティッシュ。
- 岩田
- ちなみに、今回の体験キャンペーンは
「Wii U バーチャルコンソール」の正式配信に
さきがけた先行販売という位置づけです。
「30円」での購入は30日間限定です。
はい。ということで。
- 糸井
- ということで?
かの、スーパーファミコンの名作、
『MOTHER2 ギーグの逆襲』が、
体験キャンペーン第3弾として、
3月20日より、4月18日まで、
配信されることになりましたー!
パチパチパチパチ!
- 糸井
- よかったです。
- 岩田
- よかったですね。
WiiでもDSでも3DSでも、
『MOTHER2』は遊べなかったですからね。
しかも、のちほど説明いたしますが、
「Miiverse(ミーバース)」という
Wii Uのなかにあるネットワークサービスに
糸井重里本人が登場して、
みなさんとコミュニケーションする、予定!
パチパチパチパチ!
- 糸井
- なんだか、よくわかってないけど、
よかったです。
えー、本日は、その、
「『MOTHER2』ふっかつさい」開催の
お祝いと告知を兼ねまして、
本日は、このゲームにたいへん縁の深い、
糸井重里さんと岩田聡さんにお越しいただきました。
- 糸井
- 縁は深いねぇ。そうとう深い。
- 岩田
- でも、「ほぼ日」の読者のなかには、
そのあたりのことを、ご存じない方も多いですかね。
そうですね。
岩田さんは、任天堂の社長になられる以前、
黎明期の「ほぼ日」の起ち上げに
ご協力くださっているんですが、
そもそも、糸井重里と出会ったきっかけが、
この『MOTHER2』というゲームで。
- 岩田
- そうですね。
『MOTHER』の話というのは、同時に、
私と糸井さんの出会いの物語でもあるので。
はい。じゃあ、そのあたりの経緯から
軽くふり返っていただければと。
- 糸井
- ‥‥‥‥。
‥‥糸井さん?
- 糸井
- うん?
そのあたりの経緯から
ふり返っていただければと。
- 糸井
- そのへんはさぁ、永田くんが
しゃべっておけばいいんじゃないの?
えーー。
- 岩田
- ははははは。
- 糸井
- だってさぁ、そんな、3人が知ってる話を
わざわざもう一回くり返さなくても。
そうはおっしゃられましても‥‥。
- 糸井
- 永田くんがまとめて書いておいて、
それを、さも俺と岩田さんが話したように
まとめておいてくれてもいいよ。
えーー。
- 岩田
- ははははは。
- 糸井
- そのあたりのことを永田がまとめます。
さぁ、どうぞ!
ええーっと、1989年、糸井重里のつくった
『MOTHER』というRPGがファミコンで発売されました。
その続編である『MOTHER2 ギーグの逆襲』は、
スーパーファミコン用のソフトとして
開発されていたのですが、
ま、簡単にいうと、それが頓挫しかかったと。
- 糸井
- うん。
そのとき、難航していた『MOTHER2』の開発を
立て直すべく現場に現れたのが、
岩田聡さん、その人でありました。
ちなみにそのときは、HAL研究所という
ソフト開発会社の社長兼プログラマーという立場ですか?
- 岩田
- そうです。
- 糸井
- そのとき岩田さんが言った
有名なセリフがあるだろう?
いま言おうと思ってたんですよ!
ええと、現場でそれまでできたものを
チェックした岩田さんは、
糸井重里に向かってこう言ったそうです。
これをこのまま‥‥。
- 糸井
- 「これをこのままつくるなら2年かかります」
しゃべるならぜんぶしゃべってくださいよ。
- 岩田
- ええとね、私の記憶によると、
とりあえず、その時点では
完成する流れになってなかったんですね。
で、まず「このままではできないと思います」
って糸井さんに断言したんです。
うわぁ。
- 岩田
- 「よければお手伝いしますが、
つきましては2つ方法があります」と。
そこで、そのことばになるんですね。
「いまあるものを活かしながら
手直ししていく方法だと2年かかります。
イチからつくり直していいのであれば、
半年でやります」と。
- 糸井
- かっこいいだろう?
糸井さんは、それを聞いてどうでした?
- 糸井
- もう、「お願いします!」なんだけど、
正直いって、そのときはまだよくわかってないんだよ。
- 岩田
- で、私は、
「とりあえずちょっと動かしてみます」ということで
そのときにできていたデータを持ち帰るんですね。
それで、たしか1ヵ月後ぐらいに、
マップがスクロールして動くようなところまで組んで
糸井さんたちに見せたんです。
そしたら、みんな、ものすごく驚いてくれたんですよ。
- 糸井
- もう、びっくりしちゃった。
「う、動いてるぅっ!」って。
それくらい行き詰まってたんですね、開発が。
- 岩田
- みなさんが異常なテンションで驚かれるもんですから、
私は逆にものすごく不思議なわけです。
いや、ふつうのことしただけなんだけどな、って。
- 糸井
- その「ふつう」が、ずっとできてなかったんだよ。
おそろしいところにいたねぇ、いま思えば。
そこからは、みんなが岩田さんを頼りにしてね。
実際に半年でぜんぶ動くようになったんだよ。
『MOTHER2』の開発期間って
ぜんぶでどのくらいなんですか?
- 糸井
- どのくらい‥‥でしたっけ?
- 岩田
- えーっと、開発をはじめてから丸5年くらいですね。
岩田さんがいなかったところも含めて。
- 岩田
- そう、ぜんぶで5年です。
私がいない4年間があって、
最後の1年だけ、お手伝いしたんです。
んん? いま、あらためて気づきましたけど、
岩田さんが入ってからは1年なんですね。
- 糸井
- そうだよ。速かったよ。
- 岩田
- でも、個々の要素はできてましたから。
グラフィックもできてたし、
シナリオもサウンドもある程度、完成してたし、
材料はそろっていたわけで。
でも、動いてなかったんでしょう?
- 岩田
- はい、動いてなかったですね(笑)。
あの規模のRPGが、
動くようになってから1年で発売できてるって、
やっぱりすごいです。
- 糸井
- うん。
- 岩田
- 半年ぐらいでとりあえず全体がつながって、
通しで遊べるようになって、
やっぱり、もうひと磨きして出しましょうって言って、
あと半年、細かいところを調整して。
- 糸井
- でも、短いよねぇ。やっぱりすごいよ。
- 岩田
- でも、そういう意味でいうと、
過去の4年間があればこそ、『MOTHER2』なんです。
あの味は、1年で即席でつくったら出ないですよ。
過去の4年が無駄だったわけではまったくなくて、
悩んだ人たちの試行錯誤は
ぜんぶゲームのなかに活きてます。
- 糸井
- そうだねー。
開発が止まっていたからこそ、
糸井さんのなかで肥大化していく遊び、
みたいなものもあっただろうという気がしますし、
そのあたりの「規格外」な要素こそが
『MOTHER2』だという気もします。
- 岩田
- おっしゃるとおりですね。
- 糸井
- それ、俺が言ったことにしといて。
ちゃんとしゃべってください。
- 岩田
- (笑)
- 糸井
- そう、だから、ふつうだと成り立たないというか、
整合性がとれないことが増えてくるでしょ?
そうですね。
糸井さんが遊びの要素を盛り込めば盛り込むほど、
まぁ、ゲームは破綻していくというか。
- 岩田
- ははははは。
- 糸井
- ところがね、そういうのが積み重なって、
「ここがどうしても整合性がとれません」
みたいに問題がはっきりすると、
それはそれでぼくの得意分野なんだよ。
- ふたり
- あーーー。
- 糸井
- だから、そういう相談を持ちかけられるときって
ぼくはけっこううれしかったね。
「よーし、なんとかしよう!」って。
- 岩田
- で、タコけしマシンを発明するんですよ。
そうだ(笑)。
- 糸井
- そうそう(笑)。
ゲームの中で、行けるところと行けないところを
はっきり管理しなきゃいけなくなって、
どうしようかと頭を悩ませていたときに糸井さんが、
「じゃ、その道をタコで塞げ」と。
で、そのタコをなくして道を通れるようにするために
どうすればいいかというと‥‥。
- 糸井
- 主人公が「タコけしマシン」を手に入れるんだよ。
- ふたり
- ははははははは。
- 糸井
- そういうことを考えてるときは
ほんとにたのしいんだよなぁ。