春。桜の季節。
東京で桜が満開の頃、福島の三春町に行った。
町はまだ寒さが残るも
開花宣言をいまかいまかと待ちわびていた。
開花宣言が出されると三春は桜の町に変わる。
もっとも有名な樹齢1000年を超える滝桜の周辺は
全国からやってくる観光客を受け入れるべく
屋台が建ち並び、駐車場や交通整理など準備で慌ただしい。
その時にまたお花見に来ようと再訪を決心した。
1年前、東京の蔵前にあった
器や生活道具を扱うお店「in-kyo」が
三春に移転すると店主のちえさんからハガキが届いた。
結婚を機にご主人の長谷川さんの地元郡山からほど近い
三春町で暮すことをちえさんは決めた。
書籍や雑誌の撮影でちえさんと知り合って随分経つが
呑み屋に食堂、和菓子屋さんや喫茶店、
7号で三春あげやがんもどきを紹介した朝日屋豆腐店など
昭和のやさしい雰囲気が残る商店街に
「in-kyo」が“嫁いだ”と思うと三春町が近く感じられた。
それから一週間後。町から滝桜の満開宣言が出されたが
再訪できたのはその2週間後、見頃には間に合った。
月曜日の早朝、たった数時間しかいられなかったが
ご主人の長谷川さんが三春駅に車で迎えに来てくれ
桜巡りに連れて行ってくれた。
花盛りの三春はお化粧されたように美しく
ツアーバスは樹齢の長い滝桜や地蔵桜などの名所を巡るが
道や川沿い、丘の斜面の若い桜たちが
町を桜雲で彩っていた。
週末は大勢の観光客で賑わったそうで
祭りあとの朝の静けさが桜の美しさをより際立てていた。
平日、出勤前の慌ただしさなどおかまいなく
長谷川さんの住まいにほど近い公園でお花見をしようと
ちえさんがおにぎりをにぎってくれた。
今春は東京でお花見が出来なかったぶん
三春で桜を堪能できた。