全国のドラマファンのみなさま、
たいへんおまたせしました。
1年半ぶりに3人のおしゃべりが復活です!
マスク、距離、換気など万全の対応で、
あややと森下さんと荒井先生が
今季の連ドラについてたっぷりしゃべります。
おっと、その前に、森下佳子さん脚本の
大ヒットドラマ『天国と地獄』についても
ぜひみんなで語りましょう。
ドラマの裏話なども飛び出すかも?
そして、みなさん、春なのにお別れです。
長く続いた連ドラチェックも最終回。
もちろん、明るく笑いながら進めますよー。
サユミちゃんのイラストもおたのしみください。
進行は、あまりドラマと縁がない永田です。
最後まで、どうぞよろしくお願いします!
ほぼ日刊イトイ新聞随一のテレビッ子。
どんなに忙しくても録画したドラマは必ずチェック。
毎週発表される視聴率なども無意味に把握。
幼少期から蓄積されたテレビの知識は無尽蔵。
漫画家・イラストレーター。高品質な似顔絵には定評が。
ドラマ、スポーツ、バラエティー番組などが好き。
キャラクターデザインを手がけたゲームの最新作は
『ダービースタリオン』(Nintendo Switch)
『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』
(Nintendo Switch・PS4・Steam)。
脚本家。『JIN-仁-』『白夜行』『義母と娘のブルース』
大河ドラマ『おんな城主 直虎』など、
数々の名作を生みだす。
NHK朝ドラ『ごちそうさん』で向田邦子賞を受賞。
そして『天国と地獄』は
今年ナンバーワンの視聴率を獲得。
- ──
- ほんとうにお久しぶりです。
- あやや
- お久しぶりですーー。
よろしくお願いします!
- 森下
- よろしくお願いします。
- 荒井
- お久しぶりです。
- あやや
- 4人で会えるのは、
1年半ぶりぐらいですか?
- 森下
- そのくらいになりますねー。
- 荒井
- 正確には1年3か月ぶりです。
PARCOのトークイベントが
2019年の12月でしたから。
- あやや
- あーー、そうでした!
渋谷パルコで連ドラチェックの生トーク。
- ──
- そうか、あれ以来なんですね。
いまにして思えば、あのトークイベント、
開催できてよかったですね。
- あやや
- いまはもう、なかなかできないですよね。
あのときはたくさんのかたに来ていただいて、
ほんとに感謝ですね。
- 荒井
- はい、ありがとうございました。
- 森下
- ほんとに、ほんとに、
ありがとうございました。
- ──
- ご存知のように、あのあとは、
新型コロナウイルスの影響で、
なかなか集まりづらくなりまして。
この「連ドラチェック」も
まるまる2回分、本編はおやすみしました。
- あやや
- なぜなら!
私たちは、めっちゃしゃべるから!
- 森下
- そうだねぇ、収録のときは
3時間とか当たり前で(笑)。
- ──
- いや、3時間なら短いほうです。
たいてい4、5時間かかります。
- あやや
- みんなで集まれないなら、
リモートで語り合えばいいかな、
ってことも考えたんですが、
やっぱり、リモートじゃ無理なんですよ、
私たちのこのおしゃべりって。
- 荒井
- そうですね、リモートでは、
あのわちゃわちゃした感じに絶対ならない。
- ──
- しかし、そろそろ、というので、
会社でいちばん広い会議室をつかって、
換気やアクリルボードなど、
対策を万全にしてお集まりいただきました。
- あやや
- お久しぶりですーー。
よろしくお願いします!
- 森下
- よろしくお願いします。
- 荒井
- お久しぶりです。
- あやや
- 4人で会えるのは、
1年半ぶりぐらいですか?
- ──
- いや、最初にやったから、その挨拶。
先に進みましょう。
- あやや
- 了解です!
それでは、最初にお伝えしておくと、
今回、最終回です!
- ──
- あ、あっさり言った(笑)。
- 荒井
- 言いましたね(笑)。
- 森下
- 言った(笑)。
- あやや
- じつは、1年前に
そうする予定だったんですよね。
でも、なかなか集まれずで。
- ──
- 「なんで終わるんですか?」と
訊かれると思うんですが。
- あやや
- はい! なぜならば!
もう十分にやったからです!
だってこれ、2008年からやってるんですよ!
- 荒井
- ええと、13年前です(笑)。
- あやや
- 13年も続ければ、いいでしょう。
「なぜ終わるんですか?」じゃなくて、
ふつう「おつかれさまでした」ですよ。
- 森下
- じぶんで言う(笑)。
- 荒井
- ははははは。
- あやや
- というわけで、最後の連ドラチェックを
いつ開催しようかと思っていたのですが、
このタイミングでぜひ! となりまして。
- ──
- それはなぜかというと‥‥?
- あやや
- それは、いま、この時期に、
森下さんとお話ししたかったからです!
森下佳子さん、『天国と地獄』、
大ヒット、おめでとうございます!!
- 荒井
- おめでとうございます!!
おもしろかったーー。
- 森下
- や、ありがとうございます。
- ──
- 日本中のドラマファンがたのしんだ
『天国と地獄』の話を、
まずはたっぷりしようじゃないかと。
- あやや
- うずうずしてましたよ。
うずうずうずうず‥‥。
- 森下
- はい、よろしくお願いします。
- あやや
- あらためて、森下さん。
『天国と地獄』おつかれさまでした!
おもしろかったですーーー!
- 荒井
- おもしろかったですねぇ。
- ──
- ニュースによれば、
平均視聴率15.5%、
最終回の平均視聴率は、20.1%、
毎分最高視聴率は、22.6%を記録。
今年放送されたドラマでは1位の数字です!
- あやや
- すごーーーい!
- 荒井
- すごいです。
- 森下
- ありがとうございます。
- あやや
- いやー、おもしろかったですー。
しかもオリジナルですからね!
おおもとの出典は、国木田独歩でしょ?
- 森下
- ‥‥んん?
- あやや
- あれ? 国木田独歩じゃない?
あ、まちがった、柳田國男か!
あれ? 奄美大島の伝説って、違う?
- 森下
- ちょっと待って、ぜんぜんわかんない。
- あやや
- 奄美大島の民話、入れ替わりの、花の。
- 森下
- 「シヤカナローの花」ですか。
- あやや
- あ、それです、それです。
- 森下
- ‥‥ん?
- あやや
- ‥‥えっ。
- 森下
- それが、どこで国木田独歩に(笑)。
- あやや
- まちがいました。
柳田國男と言いたかったんです。
なんか、柳田國男さんが編集した本に
その民話が‥‥。
- 森下
- あ、ああ‥‥そういうこと。
民話で、柳田國男さんで‥‥
それをまちがえて‥‥国木田独歩。
- あやや
- いや、なんか、すみません、
これ、私‥‥いろいろ間違ってますね?
- ──
- ‥‥あやちゃん、
いまね、全国のドラマファンは、
脚本家の森下佳子さんに
『天国と地獄』の裏側とか真実とか、
そういうことを語ってもらえると思って、
わくわくしながらこれを読んでるんだよ。
なのに、最初の質問が‥‥。
- 荒井
- 国木田独歩。クニしか合ってない(笑)。
- ──
- もっとあるだろう、訊くべきことは!
- あやや
- いや、違うんですよ、違うんですよ。
私がなにを言いたいかと言うと、
ふつう、民話とか伝説とかを耳にしても、
「へー、そうなんだ?」
ていうくらいで、終わりじゃないですか。
なのに森下さんは、あの伝説をもとに、
あの壮大な物語を紡いだんだな、と。
私、もう、感動して、森下さんって、
「ハンパないインテリだな」と思ったんです!
- 荒井
- 「ハンパないインテリ」。
- ──
- ちょっと悪口みたいだぞ、それ。
- 森下
- (笑)
- あやや
- ちがう、ちがう、
本心から「すごい!」と思ってるんです。
だって、伝説を、民話の、柳田‥‥。
- ──
- いったん、落ち着け。
- 荒井
- あの伝説は実際にある話なんですか?
- 森下
- あります。
喜界島に伝わる民話というか伝承で。
ドラマのなかの話だと、
「太陽になったほうがしあわせで、
月になったほうが不運だった」
みたいな印象だと思うんですけど、
オリジナルの物語は違っていて、
「花を盗んで太陽になって、
太陽になったのはよかったんだけど、
その光はまぶしすぎて
誰も太陽を見てくれなくなりました」
という話なんです。
一方、月はおだやかに夜空に輝いて、
みんなに愛されている、という結末なんです。
- 荒井
- へぇーーー。
- ──
- へぇーーー。
- あやや
- ほら! ほら!
訊いてよかったじゃないですか!
知られざる裏話ですよ!
それにしても、それを下敷きにして
あんなドラマをつくるなんて、
森下さん、さすがすぎます!
- 森下
- あ、でもね、ありがたくも
「ハンパないインテリ」と言ってもらったあとに、
台無しにするようで申し訳ないんですけど、
もともとこの民話を知っていて、
そこからあの話をつくったんだったら
それは「ハンパないインテリ」だと思うんですけど、
そうじゃないんだよ。
- あやや
- え?
- 森下
- 「入れ替わりの話を書く」ってなって、
そこからはじめて探したんですよ。
もう、血眼になって、こうよ、こう!
(スマホをスクロールする真似)
- あやや
- あははははは!
こうですか(スクロール)!
- 森下
- もう、こうよ、こう(スクロール)。
必死に探したから!
「どっかになんか
入れ替わった伝説ないの?」って。
- 荒井
- ははははは!
- ──
- 「どっかになんか
入れ替わった伝説ないの」(笑)。
- 森下
- 必死で資料を調べて、あさって。
それは「ハンパないインテリ」じゃなくて、
「取り掛かりの遅いライター」だよ。
- あやや
- た、たいへん優秀なライターさんだと思います。
- 荒井
- ということは、
「入れ替わりの話にしよう」というのが、
まず最初にあったわけですね。
そもそも「入れ替わり」にしようと
思ったのはなぜです?
- あやや
- そう、そう、そこ聞きたい!
うわー、これ、すっごく貴重ですね。
永田さん、これ、わかった、
私たち、いまものすごく重要な役割ですよ。
だって、2021年、視聴率No.1、
あの人気ドラマ『天国と地獄』の話を、
直接、脚本家に訊けるんですよ、いま。
- ──
- だから、そうなんだよ!
なのに、どういうわけか、
国木田独歩からはじめたんだよ。
- あやや
- 永田さん、国木田独歩の話はもういい。
- ──
- ギリギリギリ‥‥。
- 森下
- ええと、じつはね、
はじめは「入れ替わり」じゃなくて、
ぜんぜん違う企画だったんです。
医療系のドラマを考えていたんです。
- あやや
- 医療系!
- 森下
- ところが、新型コロナウイルスの影響で、
世界中がたいへんなことになってしまって。
いま、病院や医療関係者が
こんなにたいへんなのに、
医療ドラマをやるのはどうだろう?
っことで、いったん企画がなくなったんです。
じゃあ何をつくろう? って考えたときに、
もう、初心に返ってというか、原点に戻って、
「おもしろいドラマがいいよね!」
っていうことになったんですよ。
- あやや
- わあ、いいなあ。
- 荒井
- 原点に。いいですねぇ。
- ──
- いいですねー。
- 森下
- で、なにがおもしろいかなぁ、
という話をみんなでしているうちに、
「入れ替わるとだいたいおもしろいよね」
っていう、たいへん雑な発想があって(笑)。
- あやや
- はははは、いいチームですね!
たしかに入れ替わるとおもしろい(笑)。
- ──
- 『転校生』しかり、『君の名は。』しかり。
- 森下
- 『パパとムスメの7日間』とかね。
- あやや
- はいはいはいはい、
舘ひろしさんと新垣結衣さん。
- 荒井
- 森下さん、NHKの単発のドラマでも、
入れ替わりものやってましたよね。
あの、リモートのドラマ。
- 森下
- はい、その名も「転・コウ・生」です。
- あやや
- 柴咲コウちゃんとムロツヨシさんと、
あと猫とかが入れ替わっちゃうやつだ。
- 荒井
- あのドラマの発想がさらに発展して、
『天国と地獄』になった感じですか?
- 森下
- ええとね、順番が逆で、
じつは『天国と地獄』が先行なんですよ。
入れ替わりのものにしようってなって、
もう、役者さんが本人役のまんま
入れ替わるドラマってどう?
って提案したとき、
その案はそこまで反応がよくなかったんですね。
連ドラでやるには無理あるよなぁって‥‥。
そしたら、まったく別件で、NHKから、
緊急事態宣言でみんな外出できないし、
役者のみなさんも予定が空いてるだろうし、
なにかいまできることをやりませんか?
という話が来て、離れてて完全リモートで
できることってなんだろうって考えてたら、
「あれ? ここなら、ご本人のまま入れ替わる
ってシチューエーションが生きるんじゃ」
って思って、ご提案させていただき‥‥。
- あやや
- へーーーー。
- 荒井
- そういう順番だったんですか。
- ──
- じゃあ、『天国と地獄』が
なかったらNHKのほうは。
- 森下
- 違う内容になってたかもしれませんねぇ。
- あやや
- うわー、おもしろーい!
森下さんに訊けてよかったです。
- 荒井
- 『天国と地獄』に戻りますけど、
「おもしろいドラマにしよう」
っていうコンセプトから、
どうしてああいう方向性になったんですか。
- 森下
- やっぱり、私たちが子どものころって、
おもしろいドラマがあると、
毎週、毎週、すっごく
つづきをたのしみにしてたじゃないですか。
「来週、どうなるの?」
「来週、どうなるの?」って。
そんなふうに、つぎの回の放送日が
待ち遠しくなる話がいいなと思って。
つづきが気になるといえば、
やっぱりサスペンスだなと。単純ですけど。
- あやや
- なんてドラマファン思いな‥‥!
- 森下
- で、入れ替わりがあったとき、
何が一番イヤかなぁ‥‥と考えるわけです。
で、何がイヤって、殺人犯になるのとかイヤ!
とくに、自分の体で殺人されたらイヤだね、
という話になって、
じゃあ、刑事と殺人犯が入れ替わるのが
いちばん落差が大きくておもしろいだろう、
ということになったんです。
そこが決まれば、基本、サスペンス仕立てで、
とはいえ、ラブストーリーも見たいね、
というふうに、いろんなものを入れて。
とにかく「たのしんでもらえるものをつくりたい」
ということだけを出発点に、はじめたんです。
- あやや
- うわーー、おもしろーい。
- 荒井
- はぁ‥‥作品づくりの出発点だ。
- 森下
- でも、とはいえ、
「つくる正義」って欲しいんですよ。
つくる側としては。
ドラマづくりに迷ったときに
ギュッとつかめる命綱のようなものというか。
「なぜ、いまこれをつくるんだろう?」
ってことなんですけど。
で、そのとき話し合ったのは、
「入れ替わり」って
「究極に相手の立場に立たされること」
なんじゃないか、と。
- あやや
- ああーーー、そうですね。
- 荒井
- なるほど。
- 森下
- コロナってどうしても人と会いにくくなるじゃない。
日常的に自然発生してた
「自分はこうしたい」
「でも××さんはこうしたい」みたいな
そういう「人の考えを聞いたり、
相手の立場に立つ」機会が減っちゃう。
一方で顔の見えない情報や意見はあふれ返ってる。
それにけっきょく一人で向き合って、
一人で考える、結論づけていく。
この自然補正が効きにくい状況って、
どうしても他者不在で偏りがちになるよねって。
それは我が身を振り返っても
そういう傾向があるな、と。
もちろん何もかも相手の立場を
受け入れるわけにはいかないけど、
相手を慮ったり、相手の事情を想像するのは
とても大事なことですよね。
その意味で、相手の立場に
無理やり立たされる状況に陥る
入れ替わりドラマをやるってのは、
何かしら意味があるんじゃないかなぁって。
それで、こんな話になりました。
- あやや
- いい! むちゃくちゃいいですねー。
- 荒井
- テーマ性が見えてきました。
- ──
- 構造からできたドラマなんですね。
- 森下
- そう、そう。
- あやや
- ちなみに、キャストは、
そのときすでに決まってたんですか。
- 森下
- 前の企画が立ち上がったときから、
綾瀬はるかちゃんと
高橋一生くんにはオファーをしてたんです。
どうなるかはわからなかったんですけど。
ありがたいことに、内容が変わっても
そのまま受けてくださって。
- あやや
- 私、思うんですけど、このドラマ、
いいところがたくさんあるんですけど、
そのうちのひとつが、
綾瀬はるかさんのお芝居の実力を
知らしめたことだと思うんですよね。
個人的には、悪い綾瀬はるか、
ダーティーはるかの一面を
打ち出したのがすばらしいなあ、と。
ほら、『白夜行』のときの綾瀬はるかさん、
すっごいイヤな役だったじゃないですか。
- 森下
- うん、うん。
- あやや
- あれがすっごいよかったと思うんです。
でも、ここしばらくは清純派というか、
まっとうな路線がほとんどで。
そんな中で、いままでと違う、
新しいダーティーはるかを、
『天国と地獄』が生み出したわけですよ。
これは、なかなかすごいことだと思いますし、
ドラマファンとしてはうれしいです。
- 森下
- ありがとうー。
でもね、じつは綾瀬はるかちゃんが、
ずっと「悪い女をやりたい」と言ってるよー、
とは小耳に挟んでたの。
だから、企画が一度ゼロになったときに、
「悪い女やりたい発言」も
含めて考えてみようかなと。
- あやや
- あ、そうだったんですね。
ご本人の希望でもあったんだ。
- 森下
- そうなの。
でも、おもしろかったのは、
いざ、悪い女で企画出し直したら、
そのときはまたちょっとモードが変わってて、
「私いまラブストーリーやりたいです!」
って言ってて、「どうしたの?」って訊いたら、
どうやら『愛の不時着』を見たらしくて。
- あやや
- おーーー!
- 森下
- でも、
「何話まで見たの?」って言ったら、
「3話まで」って。
- 荒井
- 序盤(笑)!
- あやや
- 『愛の不時着』って、
「3話からがおもしろい!」って
言われてるくらいなのにね!
- 森下
- ははははは。
- 荒井
- いい話だなぁ(笑)。
- 森下
- まあ、そういうこともあって、
悪い綾瀬はるかもあり、
ラブストーリーもあり、という感じで。
- 荒井
- 連続殺人あり、「壁ドン」あり‥‥。
- あやや
- でも、あれですよね、
今回の『天国と地獄』って、
ラブがないと見せかけてラブ!
っていう感じですよね。
- 荒井
- そうそうそう、読めないラブ。
- あやや
- だから、急にそういう雰囲気になると、
「おおお!」ってなるけど、
実際、ドラマとしてはそんなにラブはない。
- 森下
- あ、そうですね。
- あやや
- あれはやっぱり、
あえてそこで止めた、っていう感じですか。
だって、行こうと思えばもっと行けたでしょ?
壁ドンのあとに、なんか、こうとか、
別のところで、こうとか、こっちにドンとか。
- ──
- なにを言ってるんだ。
- 荒井
- でも、あのぐらいがよかったですよ。
ほんとにイチャイチャしちゃうと
ちょっとひいちゃいます。
- あやや
- そう! そうなの。
だから、あれでばっちりなんです!
でも、もっと行け! っていうか。
- 荒井
- どっちなんだ(笑)。
- あやや
- そう! どっちなんだ、っていうのが
よかったんだけど、そのあたりは
どういうアレですか?
- ──
- なんというぐずぐずな質問だ。
- 荒井
- まあ、わかりやすく言えば、
事件がぜんぶ終わった数年後に
ふたりがくっつくような
終わり方だってできましたよね。
- 森下
- なんだろう。
あのふたりって、お互いのことを
どのくらいそういうふうに意識していたのか、
まったくわかんないと思うんですよ。
はたから見たら、
「おまえらお互いもう
『好きになっちゃってる』だろ」って
感じなんですけど、それはあくまでも
第三者、たとえば「陸の目線」とかであって。
本人どうしはちゃんと
意識してないんじゃないかなぁと思うんですよ。
そうすると、やっぱり、
ハグなんてありえないし、
キスもありえないんです。
だから、セーブしたというよりも、
そういう、ナチュラルな流れなんですよ。
- ──
- そうですよね。
だって、ドラマのなかで、
当人どうしのラブにまつわる振る舞いって、
言ってみれば「ゼロ」でしょう?
- 森下
- 「ゼロ」ですね。
- ──
- そこがすごいところですよ。
- あやや
- そうですよねー。
ふつうのドラマだと、
いがみ合ってても気持ちがつい行動にでて‥‥
みたいな感じなのに、
当人どうしの表現がゼロなのに、
見てる人にここまで感じさせるなんて!
- 荒井
- だからこそ、押さえ気味がいいんですよね。
すごくバランスがよかった。
- あやや
- そう。
ラブストーリーをあそこで留めてるって
ほんとすごいと思いましたよ。
- 森下
- ありがとうございます。
- ──
- しかも、そのラブのバランスを、
当人どうしで表現するんじゃなくて、
陸でバランス取ってるのが
もう、ほんとうにお見事というか。
- 森下
- そこは、まあ、苦労しました(笑)。
陸はそこにいるだけなのに、っていう。
- あやや
- やっぱり柄本佑さんがいいんですよね。
そこにいてぼんやりしてるだけでも、
なんか思ってそうな人じゃないですか。
- 森下
- そうそう、見た感じがね。森の賢者チックな。
- あやや
- だから、私、
陸に死亡フラグ立ってるような気がして、
気が気じゃなかった、ほんとに。
- 森下
- そういうのでいうと、
これは私の知り合いが言ってたんだけど、
制作発表で俳優さんたちが並ぶじゃない?
で、はるかちゃん、一生くん、
北村さん、佑くん、って
並んでいるのを見たときに、
「はるかちゃん以外、全員犯人に見える」って。
- あやや
- そうそうそう!
- 荒井
- はははははは。
(『天国と地獄』の話、次回につづきます!)
2021-04-28-WED