暮らしの中の小休止のように、
夢中になって没入できる編みものの時間。
ぎゅっと集中して、気がつけば
手の中にうつくしい作品のかけらが
生まれていることを発見すると、
満たされた気持ちになります。
編む理由も、編みたいものも、
編む場所も、人それぞれ。
編むことに夢中になった人たちの、
愛おしい時間とその暮らしぶりをお届けします。
- 東京・西荻窪で「食堂くしま」を営んでいた、
料理家のくしまけんじさんと増田葉子さん。
姉弟であるふたりは食事以外にも、
お茶や編みものといった好きなことを、
おおらかに共有してきました。 - 現在は、住む場所や生活が変わり、
それぞれの暮らしを楽しまれています。
弟・くしまさんは鎌倉で料理教室を開いたり、
Miknitsのスタイリングを手がけている
岡尾美代子さんが友人とともに運営しているお店
「ロングトラックフーズ」でお菓子づくりをしたり。
姉・増田さんは地方に移り住み、
新しい環境で暮らしています。
- 増田さんもたびたびお邪魔しているという、
鎌倉のくしまさんのご自宅へ。
デンマーク出身のイェンス・イェンセンさんが
リノベートされた民家は、
穏やかな空気と自然の光をめいっぱい
ため込むような、気持ちのいい空間。
ひとつひとつ、思いを込めて選ばれた
アンティークの家具や古道具が、
生き生きとそこにあります。
- ふたりが本格的に編みものを始めたのは、
6、7年前のこと。
フードムードで行われた三國万里子さんの
編みものワークショップに
参加したことがきっかけでした。
- 「小さな頃から手芸が好きで、
パッチワークに凝っていた時期もありました。
移動やちょっとした隙間時間にもできる、
編みものの手軽さが自分にあっているようです(増田)」
- 「僕は、いつかおじいさんになったら、
編みものをやりたいと思っていたんです。
おじいさんが編みものをしているの、
すてきだなあって。
だけど、知り合いから、
老眼になってから編むのは大変だよって言われて(笑)。
もともと三國さんの本が好きだったので、
いいタイミングでワークショップを見つけて
ふたりで申し込みました(くしま)」
- 初めて編んだ作品は、ミトン。
くしまさんの記憶に残っているのが、
編みはじめて2ヶ月ほどで参加した、
オリジナルの絵柄でミトンを作るワークショップ。
三國さんと相談しながら自分で編み図を描き、
思いを込めすぎたのか、完成したミトンは
子どもサイズの小さなものになってしまったと、
当時のことを振り返ります。
失敗を経験しながらも、ふたりは編みものに夢中になり、
靴下やセーターなど
作品がぞくぞくと生まれていきました。
- くしまさんは自分のサイズに合うように、
目数を調整することも多いそう。
なので、三國さんの編み図を参考に
アレンジを加えたり、色を変えたりするのも
怖くなくなったと話します。
増田さんは電車やバスといった
移動中に編むことが好き。
靴下やミトンといった小物を
好んで編んでいます。
- 西荻窪のお店でお茶を出すときに使われていた、
手編みのティーコージー。
棚に飾られた彼らがテーブルに届くのを、
お客さんは楽しみに待っていたそうです。
- それぞれの好みが浮かび上がってくるような、
個性的で丁寧に編まれた作品たち。
つくってきた作品を並べながら、
「変わらず好きなテイストは?」と問うと、
ふたりは口を揃えてこう答えました。
「すっきり美しく整っているものも好きですが、
その中に“ひと癖ある”ものが好きなんです。
優等生なだけじゃ、きれいなだけじゃ、
おもしろくない。
三國さんが編まれる作品のように、
個性が滲み出るものに惹かれるんだと思います。
たとえば、このフランスのアンティークのベンチ。
脚には花が彫られていて、
美術品のような存在感がとても好みなんです(くしま)」
(次回は編む道具など紹介します。)
写真・川村恵理
2021-12-20-MON
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キットのような編みものの本、
『Miknits TO GO』販売中です。おうちで、バスの中で、公園で。
どこでも、だれでも、気軽に編みものを楽しんでほしい。
そんな思いがつまったムック本「Miknits TO GO」。
三國さん監修の編み図と編み針、
オリジナルのアラン糸がセットになっているため、
この一冊で作品を編みはじめることができます。
no.3は葉っぱ柄のベレー帽「木の葉のタム・オシャンター」、
no.4は編み込み柄が素敵な「オーロラミトン」を編めます。