暮らしの中の小休止のように、
夢中になって没入できる編みものの時間。
ぎゅっと集中して、気がつけば
手の中にうつくしい作品のかけらが
生まれていることを発見すると、
満たされた気持ちになります。
編む理由も、編みたいものも、
編む場所も、人それぞれ。
編むことに夢中になった人たちの、
愛おしい時間とその暮らしぶりをお届けします。
- 編みものを楽しむ時間に欠かせないもの。
弟・くしまけんじさんは、
お茶は絶対手元に用意すると言います。
ときどき音楽を流して、1時間ほど編みものを。
姉・増田葉子さんは、
移動や家も景色を相手に楽しむそう。
新しいおうちの窓からは山々を望むことができ、
ふとした時に目に入ってくる景色に
癒されながら編みものを進めます。
- 「編みものをしつつ、家族とおしゃべりする時間も好きです」
と、増田さん。
面と向かって改まって話しづらいことも、
編みものをしながらだと、
そっと耳をかたむけながら時々で話すことができる。
そのほどよい距離感で会話する時間が楽しいと言います。
- 「ある年のお正月にふたりで
ドラマを見ながらずっと編んでいたのが、
とてもおもしろくて。
編みながら話すから、
真剣に聞いてなくてもお互い気にならない。
それがちょうどいいなって思うんです(増田)」
一緒に住んでいた頃は、
横並びになってよく編んでいたそうです。
- 初対面の人とも、
編みものをきっかけにつながることも。
よく覚えているのは、長野での出来事。 - 「弟が2泊3日で出張料理教室をするために、
一緒に長野まで行ったんです。
テレビがなく、電波もあまりよくないため、
編みものには格好の空間。
行き帰りのバスや、
夜の休憩時間にも編んでいました。
そうしたら、編みものに詳しい生徒さんが、
丁寧に教えてくださったんです。
その意外な時間がとても楽しくて。
- 編みもののいいところは持ち運べるところですよね。
公園や電車、どこで編んでもいいし、
編みものを理由に集まることも簡単。
小さくてどこにでも持っていける自由さが、
いろいろな人とつないでくれるのかなと思います(増田)」
- 編みものをはじめた頃、
ふたりがその時間を楽しむきっかけをくれたのも
編み会でつながった仲間たちでした。
編み会が行われていたのは、
洋服ブランド・ホームスパンでのこと。
月一でお店の定休日にスタッフが集まり、
編み会をする時間に混ぜてもらっていました。
- それぞれ好きな作品を編み、
わからないことがあれば先生や仲間に聞く。
時々は同じ作品を編み、
できあがりを見せ合ったり、
新しいテクニックを教わったりしました。
- 「朝の9時にスタートして、2時間ほどで終了。
最後にお茶とお菓子を食べて帰るっていう、
自由なスタイルの会でした。
編んでいるときは「最近何みた?」みたいな
話を延々としていて。
編みものをする時に仲間がいるのは励みになるし、
いろんな話ができてすごく楽しかったです(くしま)」
- 食堂くしまでも、
編み会を主催したことがありました。
定員は8人ほど。
お茶とお菓子を用意して、2時間ほど
編みながらずっと話していたそうです。
- 「お店に来てくださるときは、
なかなかゆっくりお話できません。
なので、編みものをしながら、
いろんな話をすることが楽しくて、
編みものは自由でいいなあと
あらためて思う時間でした(増田)」
- 大人になっても、
楽しみを共有する仲間がいることで
その時間がもっと楽しくなる。
つかず離れず、
ちょうどいい距離感で
編みものを楽しむふたりの時間は、
これからも長く続きそうです。
くしまけんじさん、増田葉子さん、
ありがとうございました。
(おわります。)
写真・川村恵理
2021-12-22-WED
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どこでも、だれでも、気軽に編みものを楽しんでほしい。
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三國さん監修の編み図と編み針、
オリジナルのアラン糸がセットになっているため、
この一冊で作品を編みはじめることができます。
no.3は葉っぱ柄のベレー帽「木の葉のタム・オシャンター」、
no.4は編み込み柄が素敵な「オーロラミトン」を編めます。