暮らしの中の小休止のように、
夢中になって没入できる編みものの時間。
ぎゅっと集中して、気がつけば
手の中にうつくしい作品のかけらが
生まれていることを発見すると、
満たされた気持ちになります。
編む理由も、編みたいものも、
編む場所も、人それぞれ。
編むことに夢中になった人たちの、
愛おしい時間とその暮らしぶりをお届けします。

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後編 靴下、古着、編みもの。 スタイリスト 西川木乃美さん

 
光がよく入るご自宅にある、大きな本棚。
母と娘、共有でつかっている本棚で、
お互いの好きなものが交錯するように並びます。
じつは編みものをするときも、
隣り合って編まれているそう。

 
「家の近所に大きな手芸店があるので、
セール時期になるとふたりで繰り出して、
『まだ編み終わっていないのに』とつぶやきながら
たくさん買い占めてしまいます。
毛糸から作品を考えることも多いです」。
“挑戦”する気持ちがある、西川さん。
さまざまな作家さんのものにトライしたり、
海外の輸入糸でも作品を編み、
質感の違いを楽しんでいるそう。

 
「何を編もうか考えるときは、
これまで編んだことがないものにトライしたくなる。
技術を磨きたい気持ちがあるのかもしれません。
横に並んで編んでいる母は、わたしとは違っていて、
ヨークが好きですね。わたしは単色ばかりです」。
古着が好きなこともあって、
ヴィンテージライクな作品がそろいます。
いろんな洋服に合わせやすい、
白いニットが自然と多くなったと西川さん。

 
「失敗してしまうことももちろんあります。
このベストは、本来袖がついていたのですが、
毛糸の計算ミスで足りなくなってしまって。
手芸屋の方に相談したら、
毛糸は廃盤になってしまっているから、
『ベストにしたら?』とアドバイスをいただいたんです。
意外といいかもと思って、
今では頻繁に着ているお気に入りです」

 
ほかにも、
トートバッグやティーコージーなど小物も編みます。
「編み図を参考にしながら、
自分好みにアレンジすることも好きです。
コアラのティーコージーは、
コアラを白くして、シロクマにしてみました。
三上純さんの作品は自分にはかっこよすぎて、
グレーをベースに白色をいれて
すこしかわいさをプラスしてみました」。

 
いろいろな作品を同時並行で編むため、
管理するのは布製のプロジェクトバッグ。
仕事柄、整理整頓が身についているためか、
バッグの中身もきれいに整えられています。

 
「どれだけ同時並行しているんだって感じですが(笑)、
いろいろな布のバッグをプロジェクトバッグにして、
並べて置いています。
中身もぐちゃぐちゃにならないように、
編み図と編んだものと糸と、それぞれ仕分けして。
祖母が編んでほしいとたびたび声をかけてくれるので、
祖母のために編んでいるものがたくさんありますね。
いまは、5つを同時並行しています」。

 
これだけたくさんの量を、
どんなスケジュールで編まれているのでしょうか。
「仕事とプライベートの時間の境目があまりないので、
うっかりするとずっと編んでしまうことも。
忙しいと、一ヶ月編みものをしないこともあるのですが、
休みが続くと、編みものをしていることが多いかもしれません」。
無我夢中で編みものをする
西川さんの“編みもののおとも”は、
KLIPPANのネックピローです。

 
「編みものをしていると、
ずっと同じ体勢になってしまうので
身体を労わるものに癒やされます。
スウェーデンのブランドのもので、
電子レンジであたためると
中の小麦がじんわりあたたかくなって、
痛みをほぐしてくれる。
長さもあるので背中全体をあたためられて、
すごく便利です」。

 
厳選された編みもの道具、
こちらもMiknitsの編み針ケースに
きれいに整えられています。
「TEMBEAさんのアイテムが好きなので、
とてもお気に入りです。
母の影響を受けて竹針が好きになりました。
頭のついていないシンプルなものなので、
使うときはキャップをしています」。

 
西川さんが編みものをはじめたきっかけをくれて、
ふだんから一緒に編んでいるお母さまは、
まさに西川さんの“編み友”。
手芸屋をめぐったり、本屋で手芸本を探したり、
編みものライフを楽しむために欠かせない存在です。

 
「手芸を好きになったのも、
母の姿を見ていたという影響は大きいです。
今は一緒に編みものをしてくれますが、
結構気分屋なのでわたしのほうから、
『あれはまだ編まなくていいの?』と
おしりをたたいていますね(笑)。
編みたいものの好みはそれぞれなので、
母のものを見ているとおもしろいです。
今は、Miknitsのヨークセーターを編んでいます」。
下の写真の左2枚が西川さん、
右がお母さまが祖母のために編んだセーターです。

 
自分の手元からつくりだしたい、
という思いを持ってスタイリングを仕事にし、
編みものにも夢中になる西川さん。
暮らしにおいて、
靴下、古着、編みもの。
この3つが大事なものだと話します。

 
「わたしを構成する、
3大要素といっても過言ではないです。
靴下も古着も好きなものを集めながら、
編みものは自分で好きなものを
つくりだす感じでまた味わいが違うのですが、
わたしの好きがつまっていると思います。
これからは、好きなものから得たことを、
仕事に昇華させることができたらいいなと思います。
編みものへのチャレンジ精神も欠かさずに、
次は、柄物ニットにも挑戦したいですね」。
 


洋服と雑貨のスタイリングを手がける西川さん。
日々のお仕事をご紹介されている
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西川さんの大好きな靴下を集めた
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(西川さん、ありがとうございました!)

写真・川村恵理

2024-11-05-TUE

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