インディーゲームの祭典BitSummitに、
ほぼ日の見習い勤務の鳥、シジュちゃんが
取材に行きました。
どうしてシジュちゃんが呼ばれることになったのか、
根本的に謎です。大丈夫なのだろうか。
ゲーム市場は、エンターテインメント産業のなかでも
成長の割合がいちばん大きいと言われています。
そのホットスポットで、インディーゲームの「いろは」について
巨体の銀の鳥が教わってきました。
インディーゲームの第一歩、みなさんもぜひ
シジュちゃんといっしょに踏み出しましょう。

BitSummit公式サイト

見習い乗組員シジュとは

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第3回

変わっていても、いいんだよ。

BitSummitの会場で、
主催のおひとり
村上雅彦さんにお話をうかがっています。

シジュはたぶんこれまでインディーゲームを
やったことがないと思うんだジュけど、
そんなシジュに、おすすめはありますか?

村上
「いや、シジュちゃんはね、

すでにインディーゲームを
やっていると思いますよ。
たとえばアングリーバードとか」

▲アングリーバードなら、知っている! アングリーバードなら、知っている!

あ! それはスマホでハマっただジュ。
アニメも見てたし‥‥あれは、
インディーゲームだったんだジュか?

「そう、インディーゲームです。
シンプルな操作で遊べるゲームで、たしか
社員20人以下の会社で作られたんじゃないかな。
ちょうどスマホが出はじめた頃で、
スマホ操作に適した機能をうまく使ったゲームでした。

あとはね、インディーゲームの世界を
世の人びとに知ってもらえるきっかけを作った
タイトルのひとつに
UNDERTALE』があります。
それは、シジュちゃんの会社の社長さんである
糸井重里さんの『MOTHER』を
リスペクトして作られたゲームです」

▲『UNDERTALE』、『MOTHER』好きなシジュはプレイしてみたいよ! ▲『UNDERTALE』、『MOTHER』好きなシジュはプレイしてみたいよ!

「あとは『MINECRAFT』も知っているでしょう。
ひとりのスエーデン人プログラマーから
生まれたものです。
ゲームを作るのが大好きで、
趣味で作りはじめた箱庭ゲームが、
世界で爆発的に売れました」

マインクラフトという名前は知らなかったけど、
プレイしている人が多いから、
画面はもちろん見たことあるだジュ。

ひぇええ、あれもインディーゲームなのか!

「『MINECRAFT』はほんとうに、
最初はひとりの人から生まれたものが
ゲームというメディアを介してこれだけ大きくなって
影響を与えたというものの、代表格だと思います。
はじまりは小規模で個人的なものであっても、
できることは広く大きいと示してくれました。

『アングリーバード』や『MINECRAFT』のように、
知らず知らず親しんでいたものが、
もともとはインディーゲームだった、ということも
たくさんあるはずです。
Netflixでアニメ化された『カップヘッド』も
もとはインディーゲームです。
あれはアクションゲームでね、
大人でもめちゃくちゃ難しいの(笑)」

『カップヘッド』もゲーム出身?
あれは、手描きアニメーションだジュよな?

「そうそう。昔ながらの手描きで、
たいへんな工程を経て作られたゲームです。
ぼくらにとってはもう、超有名な
インディーゲームなんですが、
ほとんどの人たちはアニメとして知っています。
こうしていろんな分野から
インディーゲームの認知が
どんどん広がっている現実は、
とてもうれしいです」

▲BitSummitにはグッズ売り場もたくさん。おみやげにキャップを買っただジュよ。 ▲BitSummitにはグッズ売り場もたくさん。おみやげにキャップを買っただジュよ。

最後に、村上さんに訊きたいことがあるんだジュ。
シジュは、宇宙からやってきた鳥で。

「だから、こんな色なんですね」

なんか、シジュにアドバイスはありますか。

「えっ、どういうことでしょう、唐突ですね、
アドバイスですか(笑)、えーっと、あのですね、
‥‥なんかたぶん、なんですけど、
シジュちゃんは、宇宙から来て、
はじめて訪れる星が地球だったわけでしょう。
だから当然、地上の生物とは見た目も違うし、
むしろあの、こっちにはたぶんいないタイプの
テクスチャーをしてるじゃないですか」

はい、そうだジュな。てへへ。

「でもそれって、われわれ
インディーゲームクリエイターと同じなんですよ。
いや、むしろ反対かな。

ぼくらのようなインディーゲームクリエイターは、
見た目はみんなと同じようにしているので、
周囲から『当たり前』を求められます。
でも、頭や心の中では、
ぜんぜん違うことを考えているものなんです。
だからじつは、ちょっと怖いんですよ」

怖いって?

「たえず世の中から
普通のふるまいを求められているからです。
ほんとうはまっすぐに自分を出していきたい。
でも、社会に出て、
妙なことばかりも言っていられないし、
変なことをしていたら
やっぱり変だと言われてしまいます。
ますます普通を装わなくちゃいけなくなって、
ちょっと苦しい。
だからぼくらはときどきこういうイベントを開催して、
『変でもいいんだよ』というアピールをしようとします。

シジュちゃんは、普通にそのままいたら、
たぶん、変でしょう。
宇宙人なんだからね。
でも、こうしてお話ししてみると、
ぼくたちは、シジュちゃんには
心を開きやすくなってしまうと思います。
だからね、これからも積極的に話しかけてほしいんです。
ぼくらはシジュちゃんから、
『こんな感じの見た目だけど、元気に生きてるよ』
といういいメッセージを勝手に受け取ると思います」

ほんと? わー、うれしい。

「だって、今日もシジュちゃん、
会場でいっぱいゲームしてくれて、
たくさんの人たちに、ぜんぜんひるまずに
声をかけていたでしょう。
クリエイターの人たちは、
すごく親しみをもって勇気づけられると思う」

そうか‥‥シジュ、
宇宙鳥でよかったって、
今日はじめて思っただジュ。

「みんなを羽ばたかせてあげてください」

ようぅっし、もっと遊んで
もっといろんな人たちとお話しするぞ!

「これ、日本だけじゃなく、
海外のそれぞれの国でも、閉塞感があるんです。
ぼくらは国境をとりはらうように、互いに呼び合い、
連携しようと思っています。
ときにはクリエイターやデベロッパーを
エクスチェンジしたり情報交換したり、
プロモーションして売ったり買ったりします。

あと、大事なのは次世代のことです。
学生さんたちが、
大人の世界へいかに介入しやすくするかについて、
ぼくらは重要な任務を背負っていると思います」

ああ、だからボランティアさんが
ここBitSummitにはいっぱいいるんだジュね。
あれは学生さんたちだったんだジュか。

「そう。黄色いボランティアスタッフTシャツを
着た人たちがたくさん歩いていたでしょう。
もしボランティアの学生のなかに、
ゲーム業界をめざしている人がいたとしたら、
ラッキーでしょ?
この場所でプロの人に会えて相談できたり、
社会に出たときにはすでに
コネクションがある状態となります。
学生だとどうしてもゲーム作品が
BitSummitに出展できる品質に至らないことも多いので、
ゲームジャムという48時間でゲームを作る
ジャムイベントで、
学生であってもゲームを出せる機会が
得られるようにしています」

ゲームって、巨大ビジネスであり、
個人的なあったかいアートでもあるんだジュな。

「日本の大事な文化として、
海外からものすごくリスペクトされてる分野である
ということも、わかっておく必要があります。
ここ京都で開催していることにも、
そんな理由があります」

▲BitSummitからホテル アンテルーム 京都に移動。 ▲BitSummitからホテル アンテルーム 京都に移動。

そのあとシジュは、同時開催されていた
ホテル アンテルーム 京都
アートとゲームの展覧会「art bit展」にも
出かけていき、

ゲームのアート性をさらに
実感することになったんだジュ。

なんだか、現代アートの豊かな森のなかで、
1日じゅう遊んでいられる気分だった。

クレーンゲームをしたり、レーシングゲームをしたり。

▲手の影で画面を操作できるゲームなんだジュよ。 ▲手の影で画面を操作できるゲームなんだジュよ。

▲作品であるバイクに乗り、島を走るゲーム。いやぁ爽快だっただジュ。 ▲作品であるバイクに乗り、島を走るゲーム。いやぁ爽快だっただジュ。

アート作品にも、自分からアクションを加えられる。
そうすると「経験」になって、
自分の記憶に深く入っていくものになるんだジュよな。
たのしかっただジュ!

きっとみなさんのすぐそばに、
インディーゲームがいると思います。
チョイっと、気軽に遊んでみよう。

ではみなさん、またね。

▲「art bit展」のワークショップにも遊びにいったシジュだジュ。 ▲「art bit展」のワークショップにも遊びにいったシジュだジュ。

(おしまいです)

2022-08-31-WED

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  • BITSUMMIT X-Roads

    BitSummitは、毎年京都で開催されているインディーゲームの祭典です。
    「国内のおもしろいインディーゲームを海外に向けて発信していく」という趣旨のもとに発足。
    新型コロナウイルスによる完全オンラインだった期間を経て、2022年は、8月6日・7日の2日間、京都市勧業館「みやこめっせ」で開催されました。