テレビや映画ですてきな芝居をしてるあの人の、
舞台での姿はご存知ですか!?
‥‥と言いたくて言いたくてたまらない
演劇ライター、中川實穗です。こんにちは。
今回ご登場いただくのは、
2024年の大河ドラマ『光る君へ』の
藤原道兼役でも注目を集めた
玉置玲央さんです。
劇団「柿喰う客」の看板俳優でありながら、
外部公演にもたくさん出演されていて、
さまざまなサイズの劇場、
そしてさまざまな役柄を、
ジャンルを超えて演じる俳優さんです。
そんな玉置さんの
演劇のお話、劇団のお話を
うかがいました。
ほぼ日社屋におこしいただいたからこそ?
な、おもわぬ場所に帰着する
熱いお話をお楽しみください!
玉置玲央（たまおき・れお）
3月22日生まれ。東京都出身。
劇団「柿喰う客」所属。劇団以外でも、『朝日のような夕日をつれて2024』『リア王』『ジョン王』『パンドラの鐘』『Birdland』など数多くの舞台作品に出演。映像では、初出演映画『教誨師』で第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。2024年大河ドラマ『光る君へ』では藤原道兼役で話題を集めた。
題字 ほぼ日
- 玉置
- でもほんと、いまは劇場にね
足運んでもらうっていうのが、
ものすごくハードルが高いというか。
- ──
- いろんなものが値上がりしているので
チケット代も値上がりして。
- 玉置
- ね。だったら家でYouTube見てるよって
なっちゃいますよね。若い人は特に。
- ──
- それでも舞台を観たいと思ってもらうって、
どんな情報を伝えればいいんだろうと
ライターとしてはよく考えます。
- 玉置
- うん、僕も考えます。ずっと考えてます。
それはもう、コロナ禍とかも関係なく、
このご時世じゃなくても、
たぶん20代前半からずっと考えてますね。
- ──
- その中で「これだ」みたいなものも
あったりしますか？
- 玉置
- うーん。
僕の場合は、
ひとつはさっき言ったモデルケースの話で、
小劇場からちょっとずつ露出が増えていって、
テレビに出て、
お客さまを劇場にお呼びするということ。
これは今の時代に合ってるかわかんないですけどね。
だったらSNSを駆使したほうがいいのかもですけど。
でも僕はそういうことを考えて、
結構早いタイミングで、
しばらく劇団公演ではなく外の作品に出るよって言って
増やしていった部分があります。 - もうひとつは、
みなさんやってらっしゃるとは思うのですが、
舞台を経てすごく売れていった方々がね、
もっともっと、常々、
「劇場に足を運んだほうがいいよ」とか、
「舞台を観たほうがいいよ」とか、
「ワークショップやりますよ」とか、
「舞台ってこういうもんだよ」とか、
いいもんだとまでは言わなくてもいいけど、
「ここで自分は育ったんだ」
「こういうことやってきたんだ」
「こういう素敵な出会いがあったんだ」
「君の人生変わるかもしれないよ」
ってことを提唱し続けてくれたらいいなって
思ったりはしますね。
みなさん世話になった場所だと思うから。
- ──
- ああ～。
定期的に視界や耳に入ってくるだけで、
お客さんは舞台の存在を思い出しますからね。
- 玉置
- そう。
インタビューとかでも、
このあいだ何々っていう舞台を観に行って
おもしろかったんですとか言ってくれりゃ、
ええ、そんなんあったんだとか、
誰々さん観に行ってんだったら、
観に行ってみようかなとか、
なるじゃないですか。
- ──
- なるほど。
玉置さんがドラマの隙間を縫うようにして
ワークショップを開かれたり、
小劇場のお芝居のアフタートークに
積極的に登場されていたりして、
そのタフさに驚いていたんですけど、
そこにはそういう思いがあってのことなんですね。
- 玉置
- そうですね。
舞台と映像を行ったり来たりして。
僕は割と明確に、
「舞台をやる年」「映像をやる年」みたいに決めて
仕事の計画を立てたりするんですけど、
そうすると、二足のわらじだとか、
お前どっちなんだよって思われるかもですけど、
別にどっちでもいいじゃないですか、俳優って。
どのフォーマットでやっててもいい。
俺はどっちもやりたいからやる。 - でも自分はやっぱ舞台からスタートしていて、
その舞台がいま如実に先細りしてるのを感じますし、
苦しい闘いをしているなっていうのは日々感じてるので、
ここにもっと火焚べなきゃなって、やっぱ思うんですよ。
そこで自分ができることってなんだろうと思ったら、
舞台と映像をきちんと行ったり来たりして、
2024年は特にそうでしたけど、
「あ、玉置くん、そういう活動してるんだったら、
観に行ってみようかな、足運んでみようかな」
とか思ってもらえたらうれしい。
目立つヤツが動けば、
それなりの先導力があるとは思うので。 - だからそういうふうにしてます。
なるべく舞台のほうに。
じゃないとなくなっちゃう、断絶しちゃうから。
映像もおもしろいけど、
めちゃくちゃおもしろいぞ舞台も。
っていうのはやっぱ知ってもらいたいです。
- ──
- 玉置さんご自身が
観客として劇場に足を運ぶ理由はなんですか？
- 玉置
- やっぱ想像しない世界が
待ってるからじゃないですかね。
舞台って予告編とかないし、
前評判みたいなものも、初日の幕が開くまでない。
けっこう博打な部分あるじゃないですか。
例えば１万円払って観に行って、
うわ、この１万円でしゃぶしゃぶ食えた‥‥とか。
- ──
- そうですねえ。
- 玉置
- あったりもするわけですよ。
でも、たまに、ほんとにたまに、
チケット代１万円が、
ウン十倍の経験、感動、に化ける公演があったりする。
あのときの
うわー、すげえ作品に出会っちゃった！
なにがおもしろかったんだろう！
脚本か？ 演出か？ 俳優が良かったのか？
でも美術も良かったような、
照明めちゃくちゃよかったな、
きっかけすげえ巧みだったな、
音響照明、素晴らしかった！
あの人、歌うまかったな、
舞台をそういう使い方すんの！？
ほかのお客さまも目キラキラしてる！
みたいな。
演劇の素敵さがバチバチに詰まった作品に
バコーンって出会えちゃったりするとき、
あるじゃないですか。
- ──
- はい、あります。
- 玉置
- それがやっぱたまんないんですよ。
それに出会いたくて自分は劇場に足運ぶし、
となるとやっぱり、
そういう作品をつくんなきゃだし、
提供しなきゃなと思って
活動していくことになるんですよね。
- ──
- ちなみに最近そういう出会いは
ありましたか？
- 玉置
- 2023年に上演された『ジャズ大名』です。
たぶん賛否両論あった作品だと思うんですけど、
俺はラストのあの十何分の演奏シーンが終わって、
‥‥そのとき、KAAT神奈川芸術劇場のホールの
２階のほぼ最後列で、つまりそうとう遠いんですよ。
すげー遠かった！
- ──
- 大きい劇場ですからね。
- 玉置
- そう。でもそこでグッと気持ちが前のめりになって、
「もうやめなよ！ もう死ぬよ！ 千葉くん！」
（音楽好きの藩主・大久保教義を千葉雄大さんが演じた）
って思ってたし、
「まわりも死んじゃうよ！ みんな大丈夫か！」って、
こう、ぐうー！ ってなっていって。
その最後にパっと、千葉くんが止めるんですけど、
自然と「フウ！」って言っちゃったんですよ。 - あれは「超越」なんだと思う。
自分の中で抑えなきゃいけないものを
超しちゃうなにか。
自然と立っちゃう、とかもそうだと思う。
その瞬間が『ジャズ大名』にありました。 - またそうなりたいって思うし、
あれを生みたいって思う。 - 震えましたね。
（つづきます）
2025-03-24-MON
