2025年1月9日より15日まで開催の
「生活のたのしみ展2025」に、
作陶家であり料理人でもある土楽の姉妹、
柏木円さんと福森道歩さんが出展します。
円さんは、ご自身と、やはり作陶家であり
いっしょに工房を運営している夫の柏木一天さんのもの。
道歩さんは、ご自身のもの、
そして土楽窯のものが並びます。
「ふぞろい」だけではなく、
円さん、道歩さんともに、新作の陶磁器も。
おふたりに、どんな作品がならぶのか、
おききしましたよ。

写真 大江弘之

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料理に合ううつわ、たくさんあります。

柏木円です。

前回は会場に行く気満々だったんですが、
諸事情で行けなくなりとても残念でした。
今回は、たくさん、つくったものを持って上京し、
基本的に毎日、店頭に立つ予定です。
どうぞよろしくお願いします。

「ほぼ日」で取り上げていただくのは、
おそらく『ほ+(ぷらす)』以来ですよね。
今回、土楽から「ごはん釜」が出ることになりまして、
合わせてわたしと、妹の福森道歩で、
ごはん茶碗を作ろうということになりました。

ごはん茶碗は、私にとって定番。
20年以上作り続けているものもあり、
今回は、なかでも、自信のある、
いちばん使いやすいと思ってるものを出します。

さらに新作としては、
小どんぶりと、蓋つきの輪花碗。
蓋、器、高台、
全て輪郭が輪花の形になっていて、
ちょっとかわいらしいんです。

△白磁蓋付輪花盌 △白磁蓋付輪花盌

蓋つき飯碗を家で? と思われるかもしれないですけど、
必ずしも蓋として使わなくてもいいんですよ。
蓋を返せばお皿になりますから、
お漬物やちょっとしたおかずを
のせるのにされたらいいと思うんですよ。
あと、かぶら蒸しなど、
蓋があることで蒸し物もできます。
そうそう、この輪花碗は、
台湾の方がたくさん買われていって、
どうなさるのかと思ったら、
お茶を飲むのに使われるんですって。
器に直接茶場を入れてお湯を注いで、
蓋をして蒸らし、ふたを少しずらして飲む。
茶器としてちょうどいいし、
形が梅花だというのもいい。

ずっとつくってきた
めし碗(白磁輪線文蓋付飯盌)や
小丼(細独楽小丼)は、
口が広く、底に行くにしたがってすぼまっているので、
大きく見えて実はちっちゃいんですよね。
特にめし碗は糸井さんが気に入ってくださって、
「これはダイエットめし碗だね」
とおっしゃってくださいました。

△細独楽小丼 △細独楽小丼

デザインとして入れた横線ですが、
これがごはんをよそう目安にもなるので、
奥さんは4本目の線、旦那さんは5本目の線など、
そんなふうに使われる方もいます。
この線は1点ずつ手で描いていますし、
手ろくろでつくっているうえ、
焼き上がりはその時の窯の状態によって変わりますから、
1点ごとのゆらぎを楽しんでいただけたらと思います。
ご家庭では、和洋中、
いろいろなおかずが並ぶと思うんですが、
洋食器に混ぜて使っても違和感がないと思いますよ。

△白磁輪線文蓋付飯盌 △白磁輪線文蓋付飯盌

2025年は、陶芸を初めて30年、
独立してから20年になる年です。
24年の11月には、初めての料理本を上梓しました。
『まどかの台所』っていうんですけれども、
家庭料理や、ふだん食べているお酒のおつまみ、
伊賀の春夏秋冬の食材を使ったものなど、
工夫して安いものでもおいしく、を心がけた材料で
レシピをつくり、載せています。
そんなに丁寧な暮らしをしているわけじゃないんですよ。
土楽で父(福森雅武さん)がつくる料理のような
豪華さはありませんが、
ちょっとでも美味しくなるようにと心がけた料理です。

▲まんなかが福森雅武さん。 ▲まんなかが福森雅武さん。

▲実家・土楽の台所に立つ。 ▲実家・土楽の台所に立つ。

撮影は伊賀の自宅で行ないました。
器は夫(作陶家の柏木一天<かずひろ>さん)のものと
私のもの、自分らで集めてきた骨董、あとは父のものなど、
いろいろです。

最近の新しい挑戦ですか。
10月にグループ展に参加したんですが、
それに向けて急須をつくりました。
急須は、20年ぐらい前かな、
伊賀にある古いものの「写し」で
一度だけつくったことがあるんですが、
それ以来なんですよ。
急須の中の茶こしのところ、
丸くて、穴がいっぱい開いているでしょう。
あれって、土楽の技術にはないんです。
それをやってみたかったというのと、
今の自分の技術で、25のときにつくった急須が、
どういうふうに変化するかなと思ってのことです。
まあまあ、かわいらしくできたんじゃないかなと
思っています。

なぜ20年も急須をつくっていなかったのかというと、
ひとえに時間と手間がかかるからです。
独立してからはとにかく数をひけるものをと、
必死にやってきたので、避けていたんですね。
でも一回基本に戻ってみたいって思って。

2025年からは土ものもつくって、
道歩と一緒に焼いてみようと思っています。
昔の信楽の古いものみたいな感じで
焼きたいなと思いました。
道歩の窯(登り窯)に入れると
きれいな緋色が出るので、
やってみると「土も楽しいな」と思います。

▲伊賀・土楽。 ▲伊賀・土楽。

今回は、久しぶりに煎茶のマグカップをつくりました。
合わせて、以前の「たのしみ展」でも好評をいただいた
猫の箸置きも、種類を増やして持って行きます。
黒、白、シャム、グレーの縞、茶色の縞、三毛、
グレーのアメショー、茶色のアメショー、
そしてブチはいろんなのがいて、両耳、ハチ割れ‥‥
好きな子を探してもらえたらと思います。
多種多様なものを並べますので、
ぜひごらんになってくださいね。

2025-01-07-TUE

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