2025年1月9日より15日まで開催の
「生活のたのしみ展2025」に、
作陶家であり料理人でもある土楽の姉妹、
柏木円さんと福森道歩さんが出展します。
円さんは、ご自身と、やはり作陶家であり
いっしょに工房を運営している夫の柏木一天さんのもの。
道歩さんは、ご自身のもの、
そして土楽窯のものが並びます。
「ふぞろい」だけではなく、
円さん、道歩さんともに、新作の陶磁器も。
おふたりに、どんな作品がならぶのか、
おききしましたよ。
写真 大江弘之
福森道歩です。
こんかいの「生活のたのしみ展」には
本当にいろんな種類のものを持って行きます。
もちろんふぞろい品もあれば、
わたしが最近つくっているあたらしいものもあります。
数はバラバラですけれども、種類が多いんです。
ワクワクしながら、宝探しみたいな気持ちで
来ていただけたら。そしてその中で気に入ったものを
見つけてもらえると嬉しいです。
いちばんの新作は「ごはん釜」です。
4年ほどかけてつくり、
今回やっと発表できることになりました。
中途半端なものは出したくない、
ということが絶対あったので、
4年というのは、考え抜くのに必要な時間でした。
とにかく吹きこぼれないようにということ、
蓋を落とし込むというアイデアに合う自分の形、
好きな羽釜を活かしながら、
何かないだろうかと、ようやくたどり着いた形です。
土楽でも長くごはん専用の羽釜の土鍋である
「織部釜」があり、
ご家庭や料理屋さんで使っていただいてます。
「うちの土鍋」の「ベア」シリーズでも
ごはんは炊けますが、
ごはん専用ではありませんし、
「ベア」ひとつだと、鍋ものをつくるときに、
同時にごはんを炊くことができないんですよね。
それで「うちの土鍋」シリーズの仲間として、
あたらしいかたちのごはん釜をつくろうと思ったんです。
まず内側のかたち。
羽釜は断面が「U」の字ですが、
わたしはこの内側をもっと球体に、
いわば「C」の字を90度左に倒した形に
したいと思いました。
ごはんは、沸騰させて対流をおこすことで
米粒が踊るように炊くといい、と言われています。
ですから、なるべく本体を
球体に近づけてみようと思いました。
そして、吹きこぼれ問題。
「羽釜は吹きこぼれるもの」ではあるんですが、
できれば吹きこぼれないでほしいと考えるひとも、
いまはおおぜいいらっしゃいます。
クックトップをできるだけきれいにしておきたい、
という気持ちはわたしもよくわかります。
羽釜の羽の部分は、ごはんをかまどで、
薪で炊いていた時代、
かまどの穴に引っかかるようにデザインされたもの。
わたしはその形が好きなので、意匠はいかしつつ、
羽の形状をすこし上向きにすることで、
吹きこぼれが留まるようにしました。
蓋じたいについても考えました。
まず、持ったとき、落としにくい持ち手にすること。
こういうものって、うっかり落として欠けさせることが
意外と多いんです。
そして、本体の内側に少しだけ
落とし込むようにしています。
これも、釜の内部に圧力をかけ、
多少の吹きこぼれなら内側で受け止められるように、
という意図があります。
そして、蓋の重さもだいじです。
ごはんを炊くときは、
なるべく蓋を重くして中に圧力をかけたい。
織部釜の場合は、隙間ができずに重さがあるものをと、
厚手の木で蓋をつくりましたが、
わたしがそれでごはんを炊くときは、
もっと圧力をかけたくて、
上に漬物石をのせたりしているんです。
このあたらしいごはん釜の蓋は陶器で、
それ自体も重さがあるようにつくりましたが、
さらに、その上にのせることができて、
炊き上がった後は鍋敷きの役割にもなるものをと、
ドーナツ型の陶器の重石をつくりました。
重石と鍋敷きの兼用なので
「共蓋重石」とか、
「おもしき」なんて呼んでいるんですが、
じっさいに使ってみるととても良くて、
土楽の羽釜でも、このスタイルを増やしつつあります。
釜、蓋、重石、この3点がセットになっているのが、
あたらしい「ごはん釜」なんです。
サイズは2種類、小さいほうが2合炊き、
大きいほうが3合炊きです。
お求めになったら、使う前に「目どめ」をしてください。
別鍋に水を入れ
(分量は、土鍋の容量で言うと8分目くらいで)、
生米か、家で炊いたごはんをひとつかみ入れて、
白濁した「おかゆ」状態になるまでコトコト煮ます。
(お米のとぎ汁を使ってもいいですよ。)
それを、水洗いをしてよく乾かした土鍋に入れ、
弱〜中火にかけ、
沸騰したら弱火で1時間ほどコトコト炊いて火を止め、
一晩置いておきます。
そのあとは洗ってよく乾かせば準備完了です。
炊くときは、洗って乾かしたごはん鍋に
研いで浸水させた米と適量の水を入れて弱火にかけ、
羽の部分まであたたまったら中~強火にして、
きちんと沸騰させます。
火をつけてから十数分かかると思いますが、
ちゃんと沸点に達しないと対流が起こらないので、
蒸気が出て吹きこぼれるくらいまで加熱してください。
そのあとは弱火にして10分ほど炊き、
火を止めて5分ほど蒸らせば炊き上がりです。
炊いたごはんは釜に残ったままにせず、
おひつなどに移してくださいね。
2025-01-08-WED