──

おおお、これが原画ですね！

しおたに

最近まで原画展をやっていたので、
いま手もとにあるのがこれだけなんです。

──

近くで見るとすごい‥‥。
色はあとからですか？

しおたに

はい、色はデジタルで乗せています。

▲作者のしおたにまみこさん。

──

こんなに描けたら、
きっと気持ちいいんでしょうね。

しおたに

半分はイライラしながら描いてますけど（笑）。

──

そうなんですか？

しおたに

描いても描いても絵が終わらないんです。
「なんでこんなにかかるの？」
って思いながら毎日描いてます。

──

使うのは鉛筆ですか？

しおたに

白いハイライトを入れるときに、
たまに絵の具を使うこともあります。
基本は鉛筆だけですね。

──

すごい、鉛筆だけで‥‥。
思わず見入っちゃいますね。

しおたに

ありがとうございます。

──

この『たまごのはなし』という絵童話、
本屋さんでたまたま見かけたんです。

しおたに

そうでしたか。

──

表紙にすごく惹かれて
思わず手にとったんですが、
あっという間に引き込まれました。
１ページ目からインパクトがすごくて。

しおたに

上から目線ですからね（笑）。

──

それにしても、
なぜ「たまご」だったんでしょう？

しおたに

それは‥‥これですね。
（鞄から数枚の絵を取り出す）

──

おおぉーー！

しおたに

きょう話に出るかなと思って、
持ってきていたんです（笑）。

──

本のたまごとは、
ちょっと顔がちがうような‥‥。

しおたに

これは４、５年くらい前に、
挿画コンペ用に描いた作品なんです。
お題が「マザー・グース」だったので、
おはなしの中に出てくる
「ハンプティ・ダンプティ」を描きました。

──

あー、ハンプティ・ダンプティ。
あの偉そうなたまごですよね。

しおたに

ちょうど前の仕事を辞めたあとで、
ゆっくり絵でも描いてみようかなって。
結局、コンペは落選したんですけどね。

──

えぇ、こんなにすごいのに‥‥。

しおたに

でも、この絵はじぶんでも
けっこう好きなほうだったので、
写真を撮ってインスタにアップしたんです。
そしたら編集者の沖本さんがそれを見つけて、
「いっしょに絵本をつくりませんか」
って声をかけてくださったんです。

──

きょうは沖本さんもいらっしゃるので、
すこしお話をうかがいたいのですが‥‥。

沖本

すみません、おじゃましてます。

──

インスタの絵がきっかけなんですか？

沖本

最初はデビュー作の
『そらからきたこいし』にひとめぼれして。
その後、インスタのアカウントをのぞいたら、
このたまごの絵と目が合って、
「なんだか、すごいじゃないの！」と。

──

ビビッときたわけですね。

沖本

それですぐに連絡をとって、
「このたまごで絵本をつくりましょう！」と
お声がけしました。

──

ということは、
最初からたまごを主人公にしようと？

沖本

そうです、そうです。

──

しおたにさんにうかがいますが、
なぜ「マザー・グース」のコンペに
出してみようと思ったんですか？

しおたに

姉がしつこくいってくるんですよ。
「コンペに出してみたら」って。

──

お姉さん？

しおたに

わたし、三姉妹の末っ子で、
いちばん上は７、８歳はなれています。

──

そのお姉さんにいわれて？

しおたに

もともと絵本作家になる前、
アニメの背景美術の会社にいたんです。
そこを辞めてしばらく家で
なにもしてない時期があったんですけど、
そしたら姉が「コンペに出してみなよ」って。
あんまりしつこくいってくるから、
「わかったよ、出すよ」って感じで（笑）。

──

それは妹の絵を評価していたから‥‥。

しおたに

いや、そういう感じではなくて、
姉は心配をするタイプなんです。
わたしは仕事を辞めて、
ゆっくり絵でも描き溜めようと思ってたら、
なぜか姉のほうが焦っちゃって。

──

他のご家族はなにかおっしゃってました？

しおたに

心配はしていたかもしれませんが、
父も母もとくになにもいわなかったですね。
それなのに姉だけがぐいぐいくる。

──

で、そこまでいうなら出してみるかと。

しおたに

そんな感じでしたね。
といっても落選でしたけど。

──

とはいえ、この絵があったから
編集者の沖本さんからお声がかかり‥‥。

しおたに

そうなんですよね。
まさにこの「たまご」がきっかけですね。