ボールペンで絵を描く中村隆さん。
ひたすら点をうち、ひたすら線をひき、
カラフルで心地よい世界を
フリーハンドで描きだします。
どうやったらこんな絵が描けるのか、
ちょっと気になりませんか?
そこで、日々の作品づくりのようすを、
3ヶ月ほど連載してもらうことにしました。
中村さん、よろしくお願いします。

>中村隆さんプロフィール

中村隆(なかむら・たかし)

画家、イラストレーター。

1976年、新潟県生まれ。
98年日本デザイン専門学校卒業。
以後、フリーのイラストレーターとして活動しながら、
定期的に個展をひらいて作品を発表している。
作品は「Ondo online store」などで販売中。

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#25

最後の絵

 
新しい絵です。
この連載で描く最後の絵になりそうです。
何枚か下描きした絵があり、
どれを描くか迷いましたが、
これにしました。
「花や人や雪や建物もあって、
ちょっといろいろ描き方を見てもらえるかなぁ」
という気持ちが、
選ぶときにすこし左右したかもしれません。
この連載で描く最後の絵と思うと、
感慨深いです。
今回、とてもいい機会を
いただいたと思っています。
いまはわかりませんが、
あとあと自分の絵を見つめ直すことが
できる体験になったのではないかと。
ただ、描いているところを
カメラで常に撮影するのがけっこうキツく、
これは本当に肩がこるというか、
勝手がちがう感じでした。
あと、ちょっと気負って
描いていたような気もします。
‥‥と、こういう感想は
最終回のまとめで書くことかもしれません。
まずは新しい絵について描きます。
冬で寒くても窓を開けたくなるときって
けっこうありますが、
そんな冬の実家の窓からの絵です。
まず花から描いていきます。
紫の菊の花が花瓶にさしてあります。
花瓶も「花の絵」の花瓶です。
陶芸をやっている親戚が作ったものかも?
花の柔らかさ、
花瓶の硬さを出したいからか、
花は点で、花瓶は直線で描きました。
あとで描く床板や
窓の外の景色のこともなんとなく考え、
花と花瓶はこの描き方にしたのかもしれません。
あまりわかりません。
窓枠は茶色だけど、
ほとんど影で真っ黒みたいな窓枠にしたかったので、
茶色と黒の交差でかけ網にしました。
花の輪郭線が
花の点々に負けて埋もれているので、
線を重ねて最後に輪郭線を描きました。
地味中の地味ですが、
こういう作業はけっこう大事です。
花もすこし生き返ったような気がします。
ぜんぜん自分は飾らないですが、
花を飾るとか、植木鉢で育てるとか、
そういうのっていいなぁと思います。
なんかこう、花そのものというより、
そうしようとしてる人の気持ちみたいなものが、
いいなぁ、と思ったりします。

(次回につづきます)

2022-09-02-FRI

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