家で過ごすことが増えたいま、
充電のために時間をつかいたいと
思っていらっしゃる方が
増えているのではないかと思います。
そんなときのオススメはもちろん、
ほぼ日の学校 オンライン・クラスですが、
それ以外にも読書や映画鑑賞の
幅を広げてみたいとお考えの方は
少なくないと思います。
本の虫である学校長が読んでいる本は
「ほぼ日の学校長だより」で
いつもご覧いただいている通りですが、
学校長の他にも、学校チームには
本好き・映画好きが集まっています。
オンライン・クラスの補助線になるような本、
まだ講座にはなっていないけれど、
一度は読みたい、読み返したい古典名作、
お子様といっしょに楽しみたい映画や絵本、
気分転換に読みたいエンターテインメントなど
さまざまな作品をご紹介していきたいと思っています。
「なんかおもしろいものないかなー」と思ったときの
参考にしていただけたら幸いです。
学校チームのメンバーが
それぞれオススメの作品を
不定期に更新していきます。
どうぞよろしくおつきあいください。
no.4
『応天の門』灰原薬
平安京をあるきまわるなど。
一応、この連載でおすすめする作品は、
「ほぼ日の学校 オンライン・クラス」の
どれかの講座に紐づけるという
しばりを設けようと
会議で言ったのは、私だったと思います。
それもそこそこ強い調子で。
よくある話ですが、
自分の発言がブーメランのように
自分に返ってきて
あとあと苦しむみたいなやつありますよね?
いま、それ。なかなかの危機的状況です。
私は学校チーム新参者でございましてね、
「オンライン・クラス」の講座が
リアルに開講されていたときに、
資料的になにかを読み漁っておもしろい本をみつけた、
みたいなことはまったくなかったのです。
一般的な日本人と同じくらいの知識は持っているけれど、
シェイクスピアにも歌舞伎にも万葉集にも
特段、詳しいわけではありません。
ほんと、うっかりしてた!
なに会議でいいかっこしちゃったんだろうな!
こうなったら、お釈迦様が地獄にたらすような
蜘蛛の糸ほどのつながりで、
本と映画を紹介していくしかナイヨネ!
というところにさきほどたどりつきました。
どうぞお許しあれ。
というわけで、謹んで最初のおすすめは、
灰原薬さんの『応天の門』なのでございます。
初手からマンガで恐縮でございます。
『応天の門 1巻 (バンチコミックス) 』
灰原薬(新潮社 465円)
こちら、菅原道真と在原業平が主人公で、
平安京に起こる怪奇を解決するというもの。
そうです、この場合の蜘蛛の糸、
細い細い「オンライン・クラス」とのつながりは、
菅原道真です。
糸の先にあるクラスは、「万葉講座」の第10回。
万葉学者の上野誠先生の回です。
「令和」の元ネタになった、
万葉集の「梅花の宴」のお話がでてきます。
これが、開催されたのが、太宰府。
さて、みなさんもうおわかりか?
太宰府といえば、菅原道真ではありませんか!
彼が左遷されたのって、太宰府ですよね!
とりあえず、これで「しばり」はクリアですよね!
たぶん、この先もずっとこの調子でいくとおもいます。
では、先に進ませていただきます。
物語は、彼が左遷されるよりもずいぶん前、
まだ、道真が学生だったころの話。
若い道真に、
イケメンおじさま歌人高級貴族の在原業平が
平安京とその周辺で次々に起こる
厄介事を持ち込みます。
それをいやいやながら、若い天才・道真が
こんがらがった糸をほどいて、解決をしていきます。
身も蓋もないことを申し上げれば、
物語の構造は、ホームズ&ワトソンですよ。
事件を解決する二人組は
だいたいホームズ&ワトソンです。
そして、怪奇現象がバリバリでてくるあたりは
『陰陽師』で、
怪奇現象に不思議はないぞと
解き明かしていくところは、京極夏彦の京極堂です。
こういうものは、
どんな舞台設定がなされていようが、
肝心の謎解きの部分がちゃんとしてないと
ちっとも楽しめないというところがありますが、
大丈夫。
軸はしっかりしていて安定感があります。
そして、敵側の悪役貴族も、
市井にいる平安朝裏社会のボスも、
きっちりとキャラが立っていて気持ちがいい!
普通に謎解きのプロセスと
キャラ設定をたのしめるのはもちろん、
時代背景、しきたり、装束、社会習慣などが
すごく楽にわかるようになっています。
さらには、事件にはちゃんと
当時の複雑な政治状況などが
練り込まれているので、歴史好きも大満足なはず。
そういう意味では、この種類のマンガって
最高の古典や歴史のテキストではないかと思います。
先に作品名を出した『陰陽師』もいいし、
『陰陽師 1 (ジェッツコミックス)』
岡野玲子 (白泉社 848円)
聖徳太子を描いた『日出処の天子』もいいし、
『日出処の天子 完全版 1』
山岸凉子 (KADOKAWA 1650円)
持統天皇を描いた『天上の虹』も、
天上の虹(1)
里中満智子 (講談社 704円)
源氏物語のマンガ化『あさきゆめみし』もいい。
『源氏物語 あさきゆめみし 完全版(1)』
大和和紀 (講談社 880円)
そして、ついつい、掘りますよね。
その時代のことを。登場人物のことを。
わたしは、この作品を読んでから、
在原業平にすごく興味をもって
その生涯や歌をネットで掘りまくりました。
結局、歌集を購入して、さらに古今和歌集に手を出すなど。
『つひに行く道とはかねて聞きしかど
昨日今日とは思はざりしを』
っていう彼の歌、なんかおかしみがあってよくないですか?
この歌を知ってますます在原業平って
魅力的だなーと思いましたよ。
自分の世界は、このマンガで確実に広がりました。
みなさんも、ぜひ、平安朝へご一緒に参りましょう。
(つづく)
2020-04-22-WED