なにかすっごいドラマがあったという
わけでもないのです。
とはいえ、担当のほぼ日乗組員たちが
力を合わせてがんばった。
そして海外のお客さんや社内のみんなにとって
「ほぼ日ストア」の使い勝手が、
前よりちょっとよくなった。
「これ、仲間のみんながよかったんですよ」
という話を、すこしさせてください。
いわゆる「越境EC」、つまり海外販売にまつわる
ほぼ日というチームの一側面の記録。
開発リーダーの多田さんを中心に追いかけます。
レポート担当は、ほぼ日編集部の田中です。

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9.ほぼ日の海外発送の歴史を聞く。(後編)

 
「ほぼ日ストア」の海外配送プロジェクトを
長く続けてきたこのレポートも、今回で最終回。
最後はさんと一緒に聞いた、
ほぼ日物流リーダーさんの
話の続きを紹介します。

▲話が長くなったので、途中で場所を移動しました。ちょっとブラインドの光が強すぎる。 ▲話が長くなったので、途中で場所を移動しました。ちょっとブラインドの光が強すぎる。

海外は、思い通りにはすすまない。

──
「ほぼ日ストア」が新しいしくみに移行して、
いま1か月半くらいですけど、
物流的には落ち着いたんですか?
西田
いや、思った通りにはまだいってないですね。
あのね、海外はね、いかない。
けっこう頑張ってますけど、
想定通りにはいかないものなんです。
──
そういうものですか。
西田
過去に物流倉庫を引っ越したときも、
最初の1か月くらい、
海外だけは地獄のようでしたから(笑)。
もうね、まったく想像してないことが起きるんですよ。
ジャパニーズの感覚だと思いもつかない
「ええっ、こんなことが?」みたいな
落とし穴があちこちにあって。
今回も落ちてないわけじゃないですね。
まぁ、だけど前には進んでますから。

多田
そうですね、前には進んでる。
西田
「ほぼ日手帳2024」も無事に出荷できましたし。
いま、多田さんたちシステムチームが
いろんな調整をしてくれてますけど、
そこも調整で済んでますから。
通関でストップしたとか少しもないんで、
今年は超順調ですよ。
なんでもそうじゃないですか。
こんなでっかいプロジェクトをやったら、
いろいろ起きますよ。
多田
今回はけっこう大きく変えてますからね。
西田
そう。だけど、なんだかんだ
「最終どうにかなるだろう」とは
思っているんですよね。
海外出荷って、想像しにくいから
ちょっと日和(ひよ)りますけど、
別にやってることって
「人間がものを買って、人間に送ってる」
だけですから。
いわば「人間に手帳を送っている」だけ。
宇宙に送ってるわけでもないですから。
いや、仮に宇宙にものを送る時代になったとしても、
それも別に「宇宙に送ってるだけ」なんで、
きっとなんとかなると思ってます(笑)。
──
すごい、そういうふうに考えるんだ(笑)。

▲やっぱりちょっと、ブラインドの光が強すぎる。 ▲やっぱりちょっと、ブラインドの光が強すぎる。

西田
過去に、海外からのお問い合わせメールに、
ぼくがビビりながら英語で返してたこともあるんですよ。
だけど、それだって向こうも人間だし、
別に「Thank you!」って感じでしたからね。
多田
こっちが大変なのも伝わるからね。
西田
相手もこっちがジャパニーズとわかってるから。
だから今回もしくみが新しくなったからといって、
別になんだってことはないですね。
こっちも人間、向こう側にいるのも人間なので。

ほぼ日の仕事の仕方も変わってきた。

──
これは興味で聞くんですけど、
20年以上ほぼ日にいる西田さんとしては、
ほぼ日の仕事の特徴ってどのあたりだと思いますか?
西田
‥‥うーん。
ひとまず、よその会社にいる友達としゃべってる限りは、
うちって裁量がめちゃくちゃあるんですよね。
自由に働けてるかなとは思いますけど。
あと、子育て世代には優しい会社だと思います。
多田
ああ、それはそうですね。
西田
でも、最初に入ったときと比べると、
会社がもうすごい大きくなったからなあ‥‥。
だから一概に「ほぼ日ってこういう働き方」とは
言えないかもしれないです。
ずーっと変化し続けてきてるから。

──
そっか。
働いてる感覚、昔と違いますか?
西田
うちって昔からいつも遅かったわけです。
「ほぼ日ストア」のスマホ対応とかも
めちゃくちゃ遅くて、
「いくらなんでもさすがにもう、
はじめたほうがよくないか?」
となってからやるという、
そういうイメージだったんですよ。
だけど今回の海外配送のプロジェクトとか、
「海外の税金まわりのコンプライアンスを
ちゃんとする」
というのがひとつの大きな目的だったわけで。
多田
だいぶ先手を打ってますからね。
西田
そう。だからもう、新しい時代になってますよ。
いろんな得意技を持ってる新しい人たちも、
どんどん増えてるし。
人が増えると、やりかたも変わっていくし。
ただぼく自身は、いろいろと遅かった時期から
ほぼ日にいて、ずーっと
デコボコ道を走ってきた感じですから。
最近のほぼ日の行動力とかって、
ずーっとトラックで走ってたのが、
いきなり飛行機になったみたいなイメージなんですよ。
だからもう自分は本当に
「ミッション・インポッシブル」の
トム・クルーズばりに必死ですよね(笑)。
すごいスピードの飛行機に
こうやってしがみついてるイメージ。

多田
乗ってないんだ。翼にしがみついて(笑)。
西田
そう。自分もなんとかそこに
乗り遅れないように。
まぁ、自分も昔と比べると
ちょっとは大人になったなと思いますけどね。
前は本当に朝起きれなかったのが、
いまは朝も夜も早いですから。
‥‥ってそれは年のせいかもしれないけど(笑)。

みんな説明がうまいのはなんでだろう?

──
前から思ってたことですけど、
多田さんも、西田さんも、ほぼ日に長くいる人って、
人前での説明がすごくうまい気がするんですよ。
あれ、なんでかなって。
多田さんが韓国でやったプレゼンもそうだし、
西田さんが「たのしみ展」のときに
いつも社内向けにやる搬入・搬出まわりの説明も、
聞いてていつも、すごくわかりやすくて、面白くて。

▲大イベント「生活のたのしみ展」の物流リーダーでもある西田さん。開催日が近づくと社員全員のミーティングで、準備方法についてのわかりやすいプレゼンをするのが恒例。 ▲大イベント「生活のたのしみ展」の物流リーダーでもある西田さん。開催日が近づくと社員全員のミーティングで、準備方法についてのわかりやすいプレゼンをするのが恒例。

西田
‥‥いやぁ、自分の説明能力については、
「昔から糸井さんの話を聞いてきたから」
としか言いようがないですね。
もともと国語の成績悪かったし。
20年間、糸井さんの面白い話をずっと聞いてきたから?
──
つまりは「門前の小僧」的な。
西田
そうですね。あとはなんだろう。
昔からほぼ日で自分が原稿を書いたとき、
編集部の永田さんに見てもらったりすると、
いつも本当に全部バツで返ってくるんですよ(笑)。
笑っちゃうくらい、全部バツ。
うまくいったと思えば思うほど、全部バツ。
だからもう、うまくやろうとしなくなりましたね。
「ちょっと一発当ててやろう」
みたいな気持ちは、完全にゼロです。
そういうスタンスはいいのかもしれない。
多田
それは思うところあるな。
うまくやろうとしてるのはバツですよね。
西田
うん、ヤマっ気を出したらだめ。
でも「ウケよう」は、けっこうあるかな。

多田
「ウケたい」という気持ちはぼくもありますね。
でも、うまくいくとは
あんまり思ってないんですけど。
ーー
「ウケたい」気持ちは抱きつつ、
うまくやるんじゃなく、なんとかするみたいな。
多田
あとは、聞く人の反応を見て話を変えてはいますね。
西田
なんかね。
当たり前のことですけど「人前で話す」って、
相手に伝えるためにやるわけじゃないですか。
「俺の話を聞け!」とかって絶対ダメだから、
そうじゃなくおもしろがって聞いてもらえるように、
自分なりになんとか工夫したりはします。
それとまぁ‥‥つまらなすぎる発表をしちゃうと
糸井さんがどう思うかな、という(笑)。
多田
それはありますね(笑)。
西田
いま言ってて気づきましたけど、
ぼくね、全員の前での発表とかって、
8割がた、糸井さんに向けてやってるんですよ。
──
へぇーっ。
西田
「たのしみ展」の準備の話とかも、
あくまで糸井さんの心に
火をつけられたらと思いながらやっていて。
目的は「たのしみ展」の成功で、
そのときいちばん火をつけたいのは
糸井さんなんで、糸井さんに喜んでもらう。
社内のみんなには全体メールで伝えればいいし、
本当に伝えたいことは直接言うので。
まぁもちろん、みんなにモテたい気持ちは
ありますけど、でもやっぱり、
いちばんモテたいのは糸井さんですね。
だからターゲットはいつも社長ですね、
人前で発表するときは。
‥‥じゃないですか、多田さん?

多田
いやぁ、ぼくはまだ
「糸井さんがターゲット」とまでは
言えないですけど(笑)。
ただやっぱり、聞いてる人のことは想像します。
けっこう脳内で練習するんですけど、
糸井さんやみんなが聞いてどう思うかを考えたり。
──
具体的なことでいうと、おふたりって、
たぶん絶対に
「パワーポイントの文字を頭から読み上げる」
みたいなプレゼンはしないじゃないですか。
それはどうしてですか?
多田
ああ、パワーポイントの文字とかって、
もう読まれると思ってないんですよ。
理解されてせいぜい数文字。
だからぼくは文字も雰囲気、絵として
考えちゃってますね。
できるなら、絵がずっと続いちゃった方が
ぼくはいいくらいの感じです。
西田
絶対そうですよね。
文字が多いなら、ページ増やした方がまだまし。
文字は読まないっていうか、読めないし。
テンポをよくした方がいいですよね。
多田
たくさんある文字を読み上げる系の発表は、
なんかつまんないなとか思ってね。
いやこれ、大事なのはテクニックとかじゃ
ないんですけど。
西田
うん、テクニックとかではないですよね。
そこじゃないっていうか‥‥。

 
‥‥と、結論があるわけでもないのですが、
今回の「ほぼ日ストア」海外販売プロジェクトの
レポートは、こんなところでおしまいです。
ほぼ日というチームのみんなが、
普段そんなに表に出てこない人も含めて、
それぞれにがんばって、わいわいやっていることが
なんとなく伝わっていたら、とても嬉しいです。
登場してくれたほぼ日のみんな、
Global-eのみなさん、
そしてこの記事を読んでくださったみなさん、
本当にありがとうございました。
2023年時点ではこんな感じですが、
世界はきっとこれからも変わっていきますし、
「ほぼ日ストア」もまた、それにあわせて、
少しずつ進化を遂げていくんじゃないかと思います。
ただ、基本的なムードとしては、
これからもわりとずっとこんな感じかも?
なんにせよ、これからもいろいろと
見守っていただけたら、とても励みになります。
というわけで、この続きは、またどこかで。
ではでは、ちょっと使い勝手の良くなった
「ほぼ日ストア」、そして「ほぼ日」のことを、
これからもどうぞよろしくおねがいいたします。

(おしまいです。お読みいただき、ありがとうございました)

2023-12-29-FRI

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