いろんな方にご登壇いただいている
「ほぼ日の學校」ですが、
これほど多彩な経歴を持つ方もめずらしい。
しかもお名前が‥‥「5歳」? 
X(旧ツイッター)に約10万人のフォロワーがいて、
旅人、鍼灸師、インフルエンサー、
ライターといった、あらゆる顔を持ち、
「麻婆豆腐を毎日作っていたら、
いつの間にか麻婆豆腐職人になっていました」
という5歳さんに、
これまでの道のりをうかがいました。
軽やかにキャリアを重ねつつ、
一瞬一瞬を真剣に過ごしてきたことが伝わる、
いい時間になったんです。
聞き手は、ほぼ日の松田です。

この対談の動画は 「ほぼ日の學校」でご覧いただけます。

>5歳さんのプロフィール

5歳(ごさい)

株式会社マーボードウフ代表。
2023年より、「感動しちゃう麻婆豆腐」を目指してオリジナル羊肉麻婆豆腐のイベント出店などを中心に活動。旧・Twitterでは妻や家族について発信するうちに、フォロワー10万超に(そのアカウント名の言葉遊びから現在の「5歳」となる)。
もともとは整体師・鍼灸師兼リサーチャーやWebライターとして活動する一方で、広告代理店業を営む顔ももつ。

5歳さんのX https://twitter.com/meer_kato
5歳さんのInstagram https://www.instagram.com/gosai531/
株式会社マーボードウフ https://mabotofu.jp/

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第2回  つまんないことは、この世にない。

ーー
今日、5歳さんから、
マニアとか研究という言葉が
何回か出ているんですが、
麻婆豆腐も「研究」から始まったんですよね。
5歳
そうですね。
ーー
研究する、ということが、
5歳さんの根源なのかなという気がしています。
5歳
たしかに、何かを始めると、
それしか見えなくなる、みたいな、
何かにグッと引き込まてしまう性質かもしれません。
ある意味、生きづらいタイプの要素ですよね。
ぼく自身は、生きづらさみたいなものを
感じたことは一度もないんですが、
そのせいか、麻婆豆腐も集中して作っていて、
食べている人も気づかないレベルの工夫を重ねていて、
レシピだってできあがっているのに、
まだまだやりたくなっちゃうんです。
まぁ、そんなに経験がないなか麻婆豆腐職人を
やっているので、それくらいしないと
いけないのかなという思いもあって。

ーー
子どものころを振り返って、
何か、はまっていたものはありますか?
5歳
小学生のころは、山芋掘りですね。
山に入って、自然薯をずっと掘るんです。
自然薯、掘ったことあります?
ーー
テレビでは見たことありますが。
5歳
自然薯の葉っぱって、ハートの形なんですよ。
秋になると、
それが黄色く紅葉し始めるんですけど、
そこの下に自然薯が生えているんです。
それがおもしろくて、せっせと掘ってました。
あと、自然薯を土の中で育ててから掘るために
目印をつけておくんですよ。
黄色いハートの葉っぱを見つけたら、
その根元をたどって、
そこに麦の種を蒔いておくんです。
そうすると、木の根元で麦の葉っぱが出て、
それが印になる。
これ、農家の人が教えてくれたんです。
ぼくは農業がすごく好きだったので、
農家さんの手伝いもしていたんです。
‥‥何の話してるんでしたっけ?(笑)
ーー
(笑)
子どものころに、はまっていたものの話です。
5歳
そうでした。
好きなことは一通りやってきたんですが、
農業が本当に好きだったので、
有機農業をしている人のところでバイトして、
堆肥を作るために山に入って、
落ち葉を集め続ける、ということもしていました。
興味があることしかできないのかもしれないですね。
ーー
逆に、これは興味ないなぁって思うことはあります?
5歳
ないんです。
自転車で日本一周を終えた後に、
千葉からラジカセとデッキ、ザックだけで
東京へ出て来たんですが、
そのときはお金がなかったから
働かなくちゃと言って、
荷揚げのバイトをしていたんです。
これは、ぼくがこの世で一番つらいと思った仕事です。
ベニヤ板を6枚持って、
まだエレベーターのない高層マンションの
建築現場の20階くらいまで駆け上がるんです。
それを1日中やるんですが、
体中があざだらけになるし、握力が切れて
何も持てなくなる瞬間があるんですよね。
それを耐えた人だけが生き残れるバイトなんです。
日給はいいんですけど、
最初の3日でだいたい辞めていくんですよ、みんな。
ーー
ああ。
5歳
そのときに、これを乗り越えたら
肉体的な目覚めがあるんじゃないかと思って、
がんばって3カ月間続けたら、
体がムキムキになって、
「うちの社員になれ」と言われました。
そのときのぼく、ベニヤ板を最高で8枚くらい
持てるようになっていたんです。
荷揚げの才能があったんですよね(笑)。
そのとき荷揚げの仕事がめちゃくちゃ楽しかったです。
何が言いたいかと言うと、
「何でもおもしろい」というのがあります、実際。
ーー
何でもおもしろいってことですけど、
じゃあ、仕事で「嫌なこと」はありますか?
5歳
‥‥あ、意地悪な人と仕事をすることですね。
昔、配達の仕事をしていたんですけど、
結果的にはすごくおもしろかったんですが、
1人、指導員みたいな人がいて、
同伴という形で、横に座って
運転のチェックをしてくれるんですけど、
ずっと嫌味を言うんです。
もう、ぶん殴ってやろうかなっていうくらいの(笑)。
そのときのことを思い出すと、
いわゆるパワハラとかセクハラとか、
そういう人間関係で苦しんでる人たちはつらいだろうな、
そこからは逃げた方がいいな、って思いますね。
ぼくは運良く、こういう明るい性格してるんで、
ちょっと意地悪な人が離れていくんですよ。スッと。
それに体も声もでかいから、
あんまりそういう目にあわないんですよね。
でも、あのときは経験しましたね。
あ、これかと。つれえな、と思いました。
でも、それに耐えて、同伴がなくなったら、
仕事も楽しくなりましたけど。
ーー
へえーー。
5歳
いちいち何の話してるのか
わかんなくなっちゃうんですけど、すみません。
キャリアの話ですよね。
ーー
大丈夫です。
キャリアの話をしてると思ってます。

5歳
ぼく、仕事でも何でも、
ポジティブ野郎なんですけど、
あらゆる要素におもしろいことがあると
思っているんです。
ぼくの友達に、つまらなさすぎて
おもしろいやつがいるんですよ(笑)。
いつもブツブツ文句言ってるんですけど、
仲もいいし、麻婆豆腐の常連なんです。
彼の話したことで、ぼく今まで1回も
笑ったことないんですけど、好きなんですよ、そいつ。
だから、つまんないことってこの世にない。
人もそうだし、モノも、仕事もそうだし。
ーー
何個くらい仕事をしてきたかって覚えてますか。
5歳
えーっと、挙げていきましょうか。
高校生のときは、まず、薪割りのバイト。
陶芸家の家で薪割りをし続けるんです。
ぼくは、得意なものの中で、
薪割りが一番というくらい、得意なんですけど。
ーー
(笑)
そうなんですか。
5歳
あと、牧場で電牧(でんぼく)の
下草刈りのバイト。
電気牧柵という、牛が逃げないための
電気を流している部分があるんですけど、
草が生えてくるとショートしちゃって
起動しないから、1日かけて広大な敷地の
下草をずっと刈り続けるという仕事です。
それから鹿児島でオクラの収穫のバイト。
あの、オクラ農家に、見学行ったことあります?
ーー
ないですね。
5歳
高校生のときに園芸部というか、
野菜を育てる部活に入っていたんですけど、
そこでオクラを担当していたんです。
オクラってめちゃくちゃおもしろい野菜で、
アフリカ東北部が原産で、
高さが5メートルくらいになる木もあるんです。
そのでかいオクラを見てみたいと思っていたら、
鹿児島にオクラ農家で働ける機会があって、
行ったら、本当にそれぐらいあったんですよ。
あのバイトができたのは光栄でしたね。
あと、白なすを収穫するバイトと、
西表でカヌーのツアーガイドも
1年半くらいやりました。
ーー
おおーー。
5歳
東京に出て来てからは、
荷揚げ屋、足裏マッサージのバイト。
整体院で副院長をしていたこともあります。
配達をしていたときもあるし、
ライターもやったし。
実家に一度帰ったときがあって、
そのころは自分で整体院を開業して
マッサージをしていました。
その地域のおばあちゃんの膝、
みんな治しました(笑)。
あとは、旅してるときにも仕事していたし、
派遣社員としてレンズの棚卸しの仕事をしたのも、
すごくおもしろかったですね。
ラーメン屋でも寿司屋でも働いてたし、
書き出したら、30個超えると思います。
あと、イリオモテヤマネコのフンを調査する
仕事をしたときは、道路でフンを見つけて
回収し続けるということをしていました。
ーー
あの‥‥短い単発の仕事だと、
期間が来て辞めるのかな、という想像がつくんですが、
それ以外だと、
何がきっかけで変えていくんですか、仕事を。

5歳
まあ、引っ越さなくちゃいけないという状況があったり、
「やってみたら」とすすめられたり、という感じで、
そのときの流れで全部決めてます。
ライターの仕事もばりばりやってましたけど、
それも、求められて、という感じでした。
それまでは書くことを仕事にしようと思ったこと、
一度もなかったので。
でもよかったですよ。
あのときものすごく書いたおかげで
文章もうまくなったし。いい経験でした、すごく。

(つづきます)

2024-11-28-THU

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