瀧本幹也さんが、4人の元お弟子さんたちと、
5大陸を走破する車を追いかけ撮影しました。
そして、その成果が、
1冊の素晴らしい作品集になったのです。
仲がよくって、クリエイティブで、
何より頼れるチームが7年かけて取り組んだ、
地球が舞台の大仕事。
トヨタさんの社員教育への思いから始まった
この壮大なプロジェクトのこと、
瀧本幹也さんと、撮影をコーディネイトした
映像プロダクションの小野敬子さんに、
うかがってきました。
担当は「ほぼ日」奥野です。
瀧本幹也(たきもとみきや)
写真家
1974年愛知県生まれ。広告写真をはじめ、コマーシャルフィルムなど幅広い分野の撮影を手がける。そうした写真と映像で培った豊富な経験と表現者としての視点を見いだされ、2012年からは映画の撮影にも取り組み、初の撮影監督作品『そして父になる』(是枝裕和監督作品)ではカンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞を受賞。以後も『海街diary』『三度目の殺人』と独自の映像世界をつくり出している。自身の作品制作も精力的に行い、写真展や写真集として発表している。
2020年9月19日よりKYOTOGRAPHIE Associated programs、写真展『CHAOS 2020』(妙満寺)、『LAND SPACE 2020』(Sfera)にて個展開催。また、11月から高知県立美術館、2021年1月から長崎県立美術館、同年6月からは東京国立近代美術館にて『隈研吾展』に新作映像作品を発表する。
小野敬子(おのけいこ)
映像プロダクションSPOONのプロデューサー。
5大陸走破のすべての撮影をコーディネートし、
写真集「5大陸 Trails Into the Unknown」の
企画プロデュースも担当。
マグネットコレクターで
5大陸ロケで訪れた国や街のコレクションは数知れず。
5大陸ロケを通して堪能した
世界のワイン&ローカルリカーも数知れず。
5大陸を撮影した元お弟子さんたち
弟子その1:
樋口兼一(オーストラリア南部+北米アラスカ)
2000ー2003年まで在籍
「ひょろっと高身長カメラマン」
弟子その2:
杉田知洋江(南米アルゼンチン)
2002ー2007年まで在籍
「姉御肌な気配りカメラマン」
弟子その3:
片村文人(オーストラリア北部+南米ブラジル)
2005ー2009年まで在籍
「やんちゃな小動物みたいなカメラマン」
弟子その4:
佐藤新也(オーストラリア内陸部+北米南部)
2007ー2012年まで在籍
「ひげのイケメンカメラマン」
弟子その5:
豊田晃佳(オーストラリア内陸部)
2009ー2014年まで在籍 ※当時アシスタント
「キラーカーンに激似のカメラマン」
弟子その6:
山本宣明(オーストラリア全域+北米の一部)
2012ー2017年まで在籍 ※当時アシスタント
「呑むと熱く語るカメラマン」
弟子その7:
田口純也(北米全域+南米全域+欧州+アフリカ)
2014ー2019年まで在籍 ※当時アシスタント
「筋肉マッチョな安定感のあるカメラマン」
※各お弟子さんへの愛ある「一言コメント」は
師匠・瀧本幹也さんによるものです。
- ──
- 今日、写真を撮ってくださっている
田口純也さんが、
まだアシスタントさんだったとき、
TOBICHIという
ほぼ日のギャラリースペースに
瀧本さんの映像作品を映写する
ミニシアターをつくってくださって。
- 瀧本
- はい、えっと、何年か前に出した
『CROSSOVER』のときかな。
- 小野
- そうなんですね。
- ──
- そのとき、ぼくたちは、
瀧本さんのチームの実行力の高さに、
目をみはったんです。 - 大げさでなく、写真家の事務所の人、
というより、
「大工さんの集団みたい」と思って。
- 瀧本
- ははは(笑)。
- ──
- で、その実行力の裏側には、
すごい分量のクリエイティブがある、
というのが、かっこいいんです。 - 実現したい理想があって、
そこへ、どうしたらたどりつけるか、
知恵を絞って、
さあやるぞとなったら、
チーム一丸でワーッと食らいついて。
- 瀧本
- 軍隊みたいなもんなんで(笑)。
- ──
- 瀧本軍!
- つまり、そういう人たちばっかり、
集まってくるんですか。
いいこと考える「兵隊肌」の若人、
みたいな人材が。
- 瀧本
- やるしかないですからね、みんなで。
やろうとなったら、もうそれは。
- 小野
- スチールカメラマンの世界って、
現代でも、
いちばん「徒弟制」が残ってるかも。
- ──
- ああ、そうなんですか。
- 小野
- 他の業界より、
師匠と弟子っていう垂直の関係性が、
わかりやすいと思う。 - とはいえ、にこやかなんですけどね。
瀧本軍のみなさんは(笑)。
- ──
- そう、辛そうな感じはまったくなく、
当然大変だとは思いますけど、
みなさん、楽しげにやってるんです。 - 5大陸のメイキング映像を見てても、
そのことは感じました。
- 瀧本
- 田口純也くんは、昨年から
カメラマンとして独立していますけど、
うちの事務所のアシスタントが
「セカンド」のポジションのときに、
ぼくを含め
5人の写真家の誰かにつかせて、
5大陸のどこかへ行かせるというのを、
修行みたいにしていたんです。
- ──
- わあ、そうなんですか。
- 5大陸走破の現場が「修業の場」って、
すごいことですよね。
- 瀧本
- だから、田口がアシスタント時代には、
一番弟子の樋口兼一がアラスカへ行く、
二番弟子の杉田知洋江が
南米のパタゴニアへ行く、
じゃあ、おまえ行っといでって感じで。
- ──
- おお。
- じゃ、田口さん、
アラスカにも、パタゴニアにも。
- 田口
- たいへん勉強になりました。
- 瀧本
- 田口の先輩の山本宣明くんが
アシスタント時代は、
オーストラリアを2カ月くらい経験してる。 - 余談ですが
そのときに産まれた彼の子どもの名前は
「旅人くん」(笑)。
- ──
- いいお名前!
- 瀧本
- とまあ、そうやって修行に出ることで、
ぼく以外の写真家の
撮影を体験することもできるし。
- ──
- 先輩方の現場から学ぶことができると。
- チームと言えば、
今回のアートディレクターをつとめた
佐野研二郎さんも、
瀧本さんと「盟友」って感じですよね。
- 瀧本
- もう20年くらいの付き合いです。
- ──
- これまで何度も、同じチームを組んで。
気が合うんですか、佐野さんとは。
- 瀧本
- うん。やりやすいですね。とっても。
- 細かいこと言ってこないし(笑)、
いいアイディアをたくさんくれるし。
- ──
- おお(笑)。
- 瀧本
- アートディレクターって、
いろんなタイプの人がいるんですが、
事前にラフをつくっていった場合、
現場で、
そのイメージから離れられない人も
けっこういるんです。
- ──
- そうなんですね。
- 瀧本
- そうすると「発見」できなくなる。
- 机の上でのイメージを撮るために
現場に来てますって感じになって。
- ──
- なるほど。
- 瀧本
- もちろん、事前に緻密に絵を描いて、
完璧に準備して臨んだほうが、
うまくいく種類の撮影もありますよ。 - 以前、取材していただいた
「世界卓球」の写真なんかそうだし。
- ──
- 事前に、完成度を最高までに高めて
本番に臨むタイプのお仕事ですね。 - このときの撮影のエピソードが、
ものすごくおもしろかったです。
- 瀧本
- でも、今回の場合は、
日本で、徹夜して、時間をかけて
精巧なラフをつくっても、
現場では、
絶対にラフ通りにはならないです。
- ──
- そうなんでしょうね。
- 瀧本
- 自然とか動物‥‥地球が相手なので。
だとしたら、
吹っ切っちゃうほうがいいわけです。 - そのへんの見極めかたが、
佐野さんとは似ていると思うんです。
一緒に仕事をすると、
おたがいがおたがいを刺激しあって、
いいものができるんですよね。
- ──
- それは、佐野さんも
瀧本さんに感じてることでしょうね。 - 瀧本さんの若いころの代表作である
「としまえんプール」の広告も、
たしか佐野さんとのお仕事ですよね。
- 瀧本
- あ、そうそう。
あれが佐野さんとの最初の仕事でした。
- ──
- 作品集をこういう体裁‥‥
つまりA3の作品を一枚一枚綴じずに、
という形式も、
佐野さんのアイディアなんですか。
- 小野
- そうです。他にもいろいろあったんですが、
結局、このプロジェクトの壮大さが
いちばん伝わるデザインに、決まりました。 - やっぱり写真をしっかり見せたいからって。
- 瀧本
- これ、一枚一枚がバラバラだから、
フレームに入れて飾ったりもできるんです。
- ──
- なるほど。この写真とか、
この大きさならではの成立の仕方ですよね。
- 小野
- そうですね(笑)。
「ランクルを探せ」みたいになってる。 - 地平線のあたりに2台、いるんですが。
- ──
- 瀧本さんは、あらためて、
今回のプロジェクトを振り返ったとき、
どんなことを思われますか。
- 瀧本
- ぼく‥‥5つの大陸を走りながら、
何度か、クルマが、
惑星を探査しているカプセルみたいに
感じるような経験をしたんです。
- ──
- カプセル。
- 瀧本
- 辺鄙なところへ行くほど、そう思えた。
- だから、この世界を、大陸を、
星のように見せたいと思って撮りました。
- ──
- 実際に地球は「星」ですものね。
- 瀧本
- そう。
- 写真から、そのことを感じてもらえたら、
うれしいなと思います。
- ──
- ぼくは、この作品集を見て、
「道」って、
あらためておもしろいなと思いました。
- 瀧本
- ああ、そうですね。うん。
- ──
- まさに「未知」という言葉と
同じ音を持っているのもわかるなあと。 - その先に何が待ち受けているのか、
わかんないような「道」ばっかりだし。
- 瀧本
- で、そういうところへ行こうとしたら、
クルマでしかないんですよね。
- ──
- あー、たしかに。
- 瀧本
- その先を見に行く‥‥っていうのかな。
それ、飛行機じゃ無理じゃないですか。
- ──
- 未知なる道を、クルマに乗って。
- 瀧本
- そう。
(終わります)
2020-07-19-SUN
-
この星の写真集。この物体感。
超数量限定でチャリティ版も。2014年から足かけ7年にわたって、
瀧本幹也さんと、
元お弟子さんの写真家たちが撮影した
5大陸走破の作品108点が、
A3という大判の作品集になりました。
何でもデータで便利でサブスクな昨今、
この物体感、重量感、所有する満足感。
一枚一枚は綴じられておらず、
気に入った作品を
フレームに入れて飾ることもできます。
7月15日(水)から、全国発売。
なお、50部限定で
瀧本幹也さんのオリジナルプリントがつく
チャリティ版も同時に発売されます。
チャリティ版の売上の一部は、
新型コロナウィルスの最前線ではたらく
医療関係者の方々へ寄付されるとのこと。
六本木 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店、
銀座 蔦屋書店、
ナディッフアパートにて販売中です。
表参道の青山ブックセンターでも、
17日(金)から店頭に並ぶそうです。
詳しくは特設サイトで、ご確認を。
取り扱い店舗の連絡先等は、こちらで。通常版
書名:5大陸 Trails Into the Unknown
参加写真家:
瀧本幹也、樋口兼一、杉田知洋江、
片村文人、佐藤新也
写真点数:108点
判型:A3・ケース入り
総頁:59枚(※製本はされていません)
定価:本体15,000円+税チャリティ版
通常版+オリジナルプリント1枚(全5種)
※各エディション10点限定
定価:25,000円+税
(本体¥15,000+寄付分¥10,000) -
チャリティ版オリジナルプリントの一例。
※全5種。額装はされていません -
5大陸走破プロジェクトのメイキング映像、
こちらのページよりごらんいただけます。 -
対談撮影 :田口純也(弟子その7)