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オリンピックやワールドカップの試合後には、
快挙をたたえる新聞の「号外」が配られます。
ついさっきまでプレーしていたはずなのに、
駅前でもらった号外を見てみると、
「優勝」「金メダル」「世界新」という
華々しい見出しが踊っているじゃありませんか。
ウェブと違って紙を刷る手間があるのに、
どうしてそんなに早く配れるのか聞いてみました。
工夫や、努力や、技術や、からくりについて、
『スポーツ報知』の相沢拡さん、山本理さん、
解説をどうぞおねがいします!
- ほぼ日
- さっそくですが、
もうすぐ2020年がやってきます。
- 相沢
- やってきますねえ。
- ほぼ日
- 「ほぼ日」ではスポーツファンという立場で
オリンピックのコンテンツを
2004年から続けてきていまして、
社員の誰かがたまたま号外を手にすると、
『観たぞ、オリンピック』の担当編集者が
大会期間中にこもって仕事している部屋に
号外をペタペタ貼っていく習わしがありまして。
- 相沢
- なるほど、なるほど。
号外を喜んでいただき、
ありがたいことです。
- ほぼ日
- ときには「ほぼ日」読者の方が
号外を送ってくださることもあって、
少しずつ号外コレクションも増えてきました。
選手の活躍を伝える役割としてはもちろん、
号外が出るまでのスピード感に
憧れの気持ちを抱いているので、
社会科見学のような感覚で来てしまいました。
- 相沢
- ありがとうございます。
- ほぼ日
- 気になったきっかけとしては、
会社の近所で配られていた
マラソンの号外をもらったことなんです。
ゴールしてから間もなく配られていますが、
どんな仕組みなんだろうと思いまして。
- 相沢
- はい、それでは解説しましょう。
まず、みなさんが想像されているような
新聞の号外というものには、
大きく分けて2種類があります。
突発的に何か大きな事象が起きてから、
翌朝まで待てずに刷って配るのが、
「本来の号外」です。
- ほぼ日
- 本来の号外。
- 相沢
- もうひとつの号外は「予定された号外」。
スポーツイベントが行われることは
事前にわかっていますよね。
「勝ったら出そう」であるとか、
「終わった結果次第で出そう」という号外です。
ニュースになるとわかっている
スポーツイベントに関しては、
できるだけ早く出すことを目指しています。
- ほぼ日
- あらかじめ用意できそうな原稿だとか、
試合展開の鍵になりそうな情報は
試合中に並べておいて、
最後に写真をはめ込むかたちでしょうか。
- 相沢
- そうですね。
原稿ならある程度、骨組みに肉付けした程度なら
先に書いておくことができますから。
でも、その日に何が起きたかも重要です。
試合中にどんどん新しい話に差し替えていき、
最後に写真をはめ込みます。
昔だったら、写真の現像を待つので
時間がかかりましたけれど、
今はもう、撮った写真がすぐに来て、
すぐに紙面にはめられるようになりました。
ひと昔前なら、巨人の優勝を伝える写真で
胴上げを待っていたら遅くなってしまうので、
決勝打の写真でもよかったんです。
今はもう、野球なら胴上げまで待てますし、
マラソンもゴールシーンまで待てますね。
- ほぼ日
- いちばん出したいシーンまで
待てるようになったのは、
テクノロジーの進化なんですね。
号外を出す、出さないという方針は
どのように立てているのでしょうか。
- 相沢
- 我々は毎日、日ごとに紙面の会議をしていますが、
週ごとにも大きな編集の会議をしています。
すこし先の週に開催される
スポーツイベントで
注目の選手やチームが勝った場合は
「偉業だから、作りましょうか」
といった提案をして準備をはじめるわけです。
- ほぼ日
- 基本的には
オリンピックとかワールドカップといった、
世界規模の大会がメインですよね。
- 相沢
- あと、スポーツ報知では
巨人の優勝も。
- ほぼ日
- ああ、そうですそうです。
糸井ともどもお世話になってます。
このたびは、おめでとうございました。
野球については、
あとでくわしく伺わせていただくとして、
号外を出す基準というものは、
社内みんなで共有されていますか。
- 相沢
- そうですね。
たとえば世界大会で初めての偉業は、
ニュースになることが多いですね。
今年は、女子ゴルフで渋野日向子選手が
樋口久子さん以来、42年ぶりに
世界メジャーで優勝しましたけれど、
今後、男子ゴルフでも勝つことがあれば
日本人初の偉業達成です。
当然、号外も検討されることになります。
- ほぼ日
- ああ、そうですよね。
- 山本
- 過去に突発的に号外を出した例でいえば、
女子サッカーのなでしこジャパンが
ワールドカップで優勝した2011年ですね。
大会がはじまる前から予定されていたわけではなく、
準決勝ぐらいになってからかな、
「これはもう、勝ったら出そうよ」
みたいなやりとりをしたのを覚えてますね。
- ほぼ日
- あ。ということは、女子テニス、
大坂なおみ選手の四大大会初制覇では
号外を出していますか。
- 相沢
- 大坂なおみさんのときは‥‥、
あっ、ありました、ありました。
大坂なおみさん、こちらです。
- ほぼ日
- おおーっ!
「歴史的快挙」!
- 相沢
- この号外の裏話をすれば、
この年の全米オープンでは
錦織圭選手が優勝するんじゃないかと
大会がはじまる前から評判だったんです。
錦織選手が優勝したら号外だよね、
とずっと待機していたところに、
大坂なおみ選手の優勝ですから。
- ほぼ日
- 世界大会が行われる日って、
「号外班」みたいなチームが
会社にスタンバイしているんですか?
- 相沢
- いや、はっきり言ってしまえば、
その場で会社にいる人間で。
- ほぼ日
- えっ、その場にいる人で!?
(つづきます)
2019-12-16-MON