2023年７月現在で、YouTuber活動歴11年。
動画数2700本以上。チャンネル登録者数1050万人。
いちばん見られている動画の再生回数は1.2億回。
そんなはじめしゃちょーも、ことし30歳。
ゲーム『MOTHER2』の大ファンということもあり、
今回、糸井重里に会いに来てくれました。
そもそもはじめしゃちょーって、どんな人？
どんな子供時代を過ごし、どんな思いがきっかけで
YouTubeで活動するようになった？
昔からずっと面白さを感じていることは？
その創作の背景を教えてもらいました。
- 糸井
- だけど、「自由な環境」というのも、
完全にタガが外れきってしまうと
かえって苦しくなりますよね。 - だから、さっきの
「英語はやりました」みたいなことって
あるじゃないですか。
- はじめ
- ああ、そうですね。
何かは決めておいたほうがいいですよね。
- 糸井
- YouTubeをはじめたばかりの
「とにかくやってみよう」というときには、
自分では何がいちばんちゃんとしてましたか？
- はじめ
- 何をちゃんとしてたんだろう‥‥？
「続けること」をちゃんとしてましたね。
- 糸井
- つまり、途中でやめない。
- はじめ
- そうですね、ぼくはやっぱり「続ける」。
- なんか、本当になんにもできない
人間なんですけど、たぶん続ける力だけはある。
その自信はありましたね。
- 糸井
- そういえば、さっきの英語もそうでしたね。
バスケットも意外とやってましたね。
- はじめ
- そうですね。
どちらも意外と続けました。
- 糸井
- やっぱりみんなやめちゃうんですか、
YouTubeは。
- はじめ
- やめちゃいますし、やってるとやっぱり
大学のほかの人から
「おかしくなったんじゃないか？」
みたいに言われるんですよ。 - 当時はYouTuberという名前もないし、
YouTubeという動画サイトに
動画を上げ続けてるのって、すごい異端に見えてて。
- 糸井
- あ、そんな感じだったんだ。
- はじめ
- はい。ぼくと周りのバカな友達たちは、
「うわーっ！」ってやってたんですけど（笑）。
普通の学生さんたちからすると、
「何やってるの？」みたいな。
- 糸井
- 彼らは先、おおむね会社員になるって
決めてたんじゃないですかね。
そうすると「就職に不利じゃない？」みたいな。
- はじめ
- そうですね。
その道筋においては、意味のなかったり、
次が見えなかったりする行動だと思うので。 - やってる動画というのも
「コンビニのパンぜんぶ食べてみた」
とかでしたし（笑）。
- 糸井
- いちばん最初に盛り上がったのは、
どんな動画だったんですか？
- はじめ
- 最初は、コーラにメントス入れたときです。
●はじめしゃちょーがコーラにメントスを
入れた最初の動画。
「メントスで槍を作ってコーラにブッさす coca cola mentos」
- 糸井
- あ、有名な（笑）。
- はじめ
- はい、まずは基礎の基礎をやりまして。
- 糸井
- それでやったら面白かったわけですね。
「あそこまでとは思わなかった」という。
- はじめ
- 当時はそのレベルでも面白かったと思います。
- 糸井
- みんながちょっとやってみたいとは思うけど、
できないことをするわけだから。
- はじめ
- そうです。気になっていることをやって。
- そのときも「大学生が何やってんだ？」みたいな、
冷たい目はちょっとあったんですけど、
そこで止まったらダメだと思いまして。
- 糸井
- 思う（笑）。
- はじめ
- 数字がついてくると、ヘンなことだとしても
認めざるを得ないというか、
かっこよく見えるんじゃないかなと思って、
そこで手を止めずにがんばってみました。
- 糸井
- やってることはくだらないけど、
心はすっごく真面目だよね。
- はじめ
- たぶん、ムダにかっこつけてました（笑）。
- 糸井
- メントスはやっぱウケるし、
見た人は「自分の代わりにやってくれた！」
って拍手しますよね。
メントス以外に覚えてるので、何がありますか？
- はじめ
- 「アルバイトで稼いだお金で、
コンビニのパンを全種類買って、
ぜんぶ食べる」とか。
- 糸井
- それ、きっと今にしてみれば、
そんな数でもないんじゃないですか？
- はじめ
- いまにするとそうですけど、
当時は「パンに４万円出す」という行為が、
もうぼくの限界だったんです。
それで最初のアルバイト代が全部なくなって（笑）。 - ただそれでも
「面白いことやるしかない」
って精神が。
- 糸井
- 何年ぐらいのことですか。
- はじめ
- 今11年目なので、23引く11、
2011か、2012ぐらいですね。
- 糸井
- そういえばぼくらが「ほぼ日刊イトイ新聞」を
はじめたばかりのときも、
やっぱり面白いことはないかなと思って、
「やりたかったけどやってなかったこと」
を探したんです。 - そのひとつが、宝くじで。
というのも、知り合いで大金が当たった人の
話を聞いたことがあって、
教習所の教官の人だったんですけど、
「目から血が出た」って言われたんですよ。
- はじめ
- 目から血が出た？
- 糸井
- 当選がわかったとき、
あまりに真剣に番号をチェックしすぎて、
眼圧があがって、目から血が出たって（笑）。
- はじめ
- ははは、もはや事故に遭ったみたいに
なっちゃってますけど。
- 糸井
- それを聞いただけでインパクトがあって、
「宝くじ買おうよ」って言ったんです。
- はじめ
- はははは。
え、会社で買ったんですか？
- 糸井
- それは個人でした。
あと、出したい人は自分でも買って。
みんなでそれなりにけっこう買ったんです。 - しかも抽選会が九州でやってるんですよ。
だからみんなで九州まで、
矢が、くるくるくるくる‥‥‥‥パーン！
ってやつを見に行って。
- はじめ
- ああ（笑）。
- 糸井
- 普通に会場に入れるんですよ。
抽選の前に演歌の人が歌ったりなんかして、
「いよいよ抽選会です」って言って、
すっごくあっけなく、パーン！パーン！ってなる。 - ‥‥でも、当然ハズレるんですよ。
「そっかー、距離あったなぁ」みたいな。 - その後も、けっこういろんな人が
「宝くじいっぱい買う」ってやってますよね。
このあいだも、ヒカキンさんとか。
- はじめ
- あ、そうですね。
- 糸井
- いっぱい買えば当たるんじゃないかと
思うんですけど、
たしか、70万分の１かなんかなんですよね。
- はじめ
- そうですね。
ぼくもたしか今年、700万くらい買いましたけど
まったくダメでした。
●2023年1月に公開された、
はじめしゃちょーの宝くじの動画。
「【10億円】年末ジャンボを710万円分買った結果！！！」
- 糸井
- 700万くらいだとやっぱり、大きい額は
数字ひとつふたつ当たるのが
せいぜいぐらいの感じですよね。
- はじめ
- きっとたくさん買うものじゃないんでしょうね。
- 糸井
- でも、当たりを感じたいわけでしょう？
- 考えようによっては、
誰かが当たったのを自分がよろこべれば、
毎回当たってるんですよね。
だからその「宝くじを買う会」が
ものすごい人数になった方が、
よろこべるかもしれないなとは思いますね。
- はじめ
- ああー、なるほど。
当たりを感じる範囲は広がりますね。
- 糸井
- だけど「当たり６億」ってなったときに、
学生時代のはじめしゃちょーだったら、
「何しようか」と思うけど、
今だと６億って、できることが見えちゃうじゃないですか。
- はじめ
- ああ、そうですね。
たぶん、うまい棒６億円分とか買いたいですね。
- 糸井
- あぁー！（笑）
- だけどそれも、当然もう分かってるから、
置き場所がどうだとか、どっから仕入れてとか、
１日の生産量からすると何日かかるぞとか。 - そうやって、だんだん考えてるうちに、
「あんまりやりたくなくなっちゃった」
ってなりやすいというか。 - ‥‥ああでも、６億円を普通に使うとそうだけど、
うまい棒だと、ちょっとわからないか（笑）。
- はじめ
- はい（笑）。
- 糸井
- とりあえず、
「結果がイメージもできないとき」というのが
いちばん面白い気はしますね。
- はじめ
- うん、そうですね。
その実体のない感覚が面白いというか。
そこの感覚ですよね。
- 糸井
- うん、その感覚だよね。
（つづきます）
2023-08-04-FRI
