みうらじゅんFES マイブームの全貌展が
所沢市民文化センターミューズで
2023年5月7日まで開催されています。
ほぼ日の見習い乗組員で、
みうらじゅんさんを師と仰ぐ
銀の鳥シジュが、記者として質問に行きました。
背景:みうらじゅん「コロナ画」より
第1回
ブームのはじまり。
- シジュ
- みうらさん、お久しぶりだジュ。
- みうら
- シジュちゃん、元気にしていましたか。
- シジュ
- 順調に、ほぼ日で
見習い乗組員をやっているだジュ。
今日も記者として、ここ所沢に
派遣されてきただジュよ。
所沢市民文化センターで開かれている
『みうらじゅんFES マイブームの全貌展』
しっかり取材しただジュ。
これは5月7日までなんだジュな。
- みうら
- ということは、
シジュちゃんは、もう展覧会を見てくれたの?
- シジュ
- さっき見おえたところだジュ。
今回は2箇所で、
シジュの写真が
展示されていただジュよ。
- みうら
- あれ、そうだっけ?
2箇所も?
- シジュ
- はい、撮影禁止の場所だったから
証拠が撮れなかったんですけど、
「あるとしたらここだろうなぁ」と思って入ったら、
やっぱりあっただジュ。
- みうら
- ああ、あの暖簾をくぐって
入るコラージュ部屋ですね。
- シジュ
- そうだジュ。
あらためて、今日シジュは、
ずっとみうらさんに訊きたかったことを
訊くだジュよ。
みうらさんには、どうして
ブームがくるんだジュか?
- みうら
- どうしてって言われても‥‥。
- シジュ
- 「いまはちょっとこれに凝ってます」
という状態は、
誰しも、あると思うんだジュ。
でも、みうらさんはそれを、
ずっと継続していくだジュよね。
- みうら
- キープオンじゃなくて、
いまやループオン状態のことね。
マイブームを意識的にはじめたのはね、
牛ブームからですよ。
- シジュ
- 牛‥‥だジュか?
- みうら
- もう、この話もループオンなんだけど、
聞いてもらっていいかな? シジュちゃん。
僕はね、大学3年生のときに
「ウシの日」という漫画で
雑誌「ガロ」からデビューしたんですよ。
そのタイトルからわかるように、
しかたなく、いや、意識的に、牛を
自分のなかで「強化」しなきゃいけないな、という
気持ちがあったんでしょうね。
- シジュ
- 強化とは?
- みうら
- そりゃ焼肉は好きだけど、
本人、いや本牛まで好きでいる理由が
見つからなくてさ。
そのきっかけを作ってくれたのが、当時、
同じアパートに住んでた
「石井くん」だったんだよ。
- シジュ
- 石井さんはみうらさんの友達であり、
糸井さんの事務所(現ほぼ日)で
はたらいていた、シジュの大先輩だジュな。
みうらさんと糸井さんを引きあわせてくれた人。
- みうら
- そうそう。石井くんが
「アパートの上が空いたよ」って
教えてくれてね。
それで、上下階で、
同じ間取りのところに住んでいたんです。
そのアパートはもちろん和式トイレでね──これは
どうでもいい話かもしんないんだけどね。
一応、しとくけど、上の階で「大」をするとね。
- シジュ
- はい、トイレで「大」を。
- みうら
- その「大」は、下の階のトイレに続く管を伝って、
トントントントンーッと、勢いよく
落ちるシステムだったんですよ。
いまのように水洗式じゃないですからね。
僕が上で「大」をしていると、
ぐうぜん下に石井くんもいることがあって、
下から「みうら、やろ?」って
声をかけてくるといった、
そんなたのしいアパート生活だったんです。
- シジュ
- その「大」の話は
これまで何度も聞いただジュよ。
- みうら
- ごめんね。あのころの思い出話をするとき、
それからはじめないと
スムーズにいかなくて。
ところで、石井くんと牧場に行ったときの話は、
しましたっけ?
- シジュ
- それは聞いたことがないだジュ。
- みうら
- たぶん途中で
「やっぱり聞いてた」ってことに
なると思うけど、
牛ブームはここが重要だから、続けるね。
僕らはふだん、そんな
ボロくて狭いアパートにいたもんだから、
「たまには牧場みたいな広いとこで
弁当とか食べてみとないけ?」って
なったわけで。
僕は車の免許を持っていなかったので
石井くんがレンタカーを借りてきてくれてね。
それで信州の牧場に出かけたんです。
やっと牧場に着いて、ピクニックマット広げて、
買ってきた弁当を食べました。
のどかでね、広くてねぇ。
柵を乗り越えた先だったもんで、
遠くのほうに、2、3頭、牛の姿も見えました。
「ああ、牛だね」「いるんだー」
なんて言って、また食べて、してるうちにね、
そこが、黒くなってたんです。
- シジュ
- 黒。
- みうら
- 黒い牛もいっぱいいたんでしょうね、
それがかたまりになって見えたんです。
牛にしてみれば、僕らは不法侵入者でしょ。
追い出そうとしてるにちがいなかったんです。
最終的にそのかたまりは
マットのところまでやってきました。
なかにはそこで反芻する牛もいてね。
ベタベタしたものを
マットの上に落としてくるんです。
命の危険を感じました。
しかたなく僕らは
牧場のすみっこに移動したんですが、
それでも牛たちは許してくれませんでした。
そこにもやってきて、
僕らは取り囲まれたんです。
- シジュ
- 「追い出そう作戦」なんだジュな。
- みうら
- そんな習性があるなんて
知らないじゃないですか。
僕は隙をうかがって、
レンタカーに逃げ込んで
弁当の続きを食べた、そんな思い出。
- シジュ
- ひろびろとしたところで
食べたいから、出かけたのに。
- みうら
- それがきっかけで、
牛のことがやたら気になってきたんです。
- シジュ
- 「苦手だった=気になる」ということを軸に、
みうらさんは牛の漫画で、
デビューしたんだジュな。
- みうら
- その思い出をベースに
漫画を描いたということもあって、
心のどこかで「こりゃ好きになんなきゃな」という
気持ちが芽生えてきたんだと思います。
それで、本題なんですが、
たいして欲しくないのに、
牛のグッズを買いはじめたんです。
- シジュ
- あ、そこから‥‥。
- みうら
- ですね。
「たいして欲しいわけじゃないのに買う」スタイルは
そのとき芽生えました。
最初に買ったのが、
この展覧会にも並べてありますが、
「ミルクモウモウ」という子ども向けのおもちゃでした。
それなりの値段がしたんですよ、
当時の僕からしたらね。でも
「押さえておかなければ」という義務感があったんです。
- シジュ
- 結果的に、このような
展覧会を開催できるまでに‥‥。
- みうら
- ですね。
以降、むりやり好きになろうと、
天狗や、いやげ物のたぐいを買うきっかけを
牛と石井くんが作ってくれた、ってわけでね。
不思議なんですけどね、
買っていくうちに脳は
「好きにちがいない」
さらにいくと
「好きにきまってんじゃん!」
って、錯覚をするようになるんです。
さらに、大枚をはたいたりするとね、
「元を取りたい」という煩悩まで
芽生えてくるもんですよ。
(インタビュー、明日につづきます)
2023-04-27-THU
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所沢市民会館文化センターミューズ ザ・スクエア
みうらじゅんFES
マイブームの全貌展
2023年4月15日(土)– 5月7日(日)みうらじゅんさんの長年にわたる収集、
創作活動に迫り、
「マイブーム」の起源と全貌を
明らかにする展覧会。
コロナ画、いやげ物、
過去の膨大なスクラップや写真など、
増量された、迫力ある展示をたのしめます。
価値観の移りゆくこの社会で、
自らの価値観をどう築き上げていくのかが、
来場するみなさんに問いかけられます。